ACP体験記
濱田 治 MD
愛仁会高槻病院 総合内科 医長
京都大学大学院医学研究科 医療経済学分野 大学院研究員
Osamu Hamada, MD
Department of General Internal Medicine, Takatsuki General Hospital, Osaka, Japan
Department of Healthcare Economics and Quality Management, Graduate School of Medicine and Faculty of Medicine Kyoto University, Kyoto, Japan
この度ACPの本部の年次総会で当院から応募したポスターがアクセプトされ、発表する機会をえました。ACP本部で一般応募からの日本人の発表は貴重というお言葉をいただき、この度学会参加に関して記事を書かせていただくこととなりました。
私はEarly Career Physiciansのポスター発表の枠に応募しました。“Impact of the hospitalist system in Japan on quality of care and healthcare economics”という当院で行なった臨床研究について発表を行いました。ホスピタリストは幅広い内科の問題に対応できる、入院対応のスペシャリストとして米国で発展してきました。米国ではその有用性が多数報告されてきました。本邦においても患者を総合的に診療できる医師の必要性が強調され、専門医制度にも変革が生まれていますが、ホスピタリストの有用性を検証した研究はありませんでした。当院では2017年度に米国でホスピタリストのトレーニングを積んだ指導医の元で総合内科が診療を開始しました。本研究は当院に入院した誤嚥性肺炎の患者を対象とし、ホスピタリスト群(当科)とコントロール群(その他専門科)による治療が医療経済(入院期間、医療費)、医療の質(抗菌薬投与期間、経口抗菌薬への変更率、採血や胸部レントゲン撮影回数)、死亡率・再入院率へどのような影響を及ぼすかを調べた後ろ向きコホート研究です。プロペンシティスコアマッチングを用いて解析を行いました。結果として、死亡率や再入院率を上げることなく、医療経済および質をホスピタリスト群が有意に改善させました。
発表の際には3人の評価者のファカルティーがプレゼンターの元に巡回して来て、4分間の発表、6分間の質疑応答が行われます。出発前に病院で上司や同僚と何度か発表の予演を行ない、十分に準備して望んだため、スムーズに発表を行うことができました。超高齢化社会日本における医療体制の問題点や、統計学的な手法などに関して議論しました。評価者の先生方は評価表に記入しながら私の発表を聞いていましたが、挨拶してから質疑応答までの間で記入していたタイミングから判断すると、ポスターの構成、内容の科学的妥当性、発表におけるコミュニケーションスキルなどいくつかのカテゴリーにわけ点数化し、その他のコメントを自由記載欄に記載しているように見えました。
発表の前後に周囲のポスター発表者と話をしました。隣のポスターは医学生が臨床研究の結果を発表しており、向かいのインド人の医師は積極性とエネルギーに満ちており私の発表に関しても沢山の質問をしてくれました。全体のポスターを見に行きましたが、学生が臨床研究をしているのが散見され、医学生の意識の高さを感じ、負けていられないなと思いました。
ポスター発表以外の時間はできる限りセッションに参加しました。同じ時間帯にいくつも魅力的なセッションが行われていました。携帯のアプリで発表の会場、時間、資料の確認を行うことができ、非常に効率が良いと感じました。参加したセッションはいずれも質が非常に高く大変勉強になりました。積極的な参加を求められるセッションもあり、ピッツバーグの先生が発表したヘルスリテラシーを上げるための取り組みに関するセッションでは、他の参加者と議論を行う場面がありました。ACP日本支部のEarly Career Physicians Committeeで「国際学会で地蔵にならないための英語セミナー」と言うセッションを開催していましたが、もっと国際学会で積極的に参加し、発言する姿勢や能力を磨きたいと感じました。
また、女性医師の割合が高く、子供づれで参加している方が複数いたのも印象的でした。いくつかのセッションで話した女性の先生はホスピタリストをしており、働き方を自分で決めることができる点がよく、女性の割合が高いと言っていました。日本でも昨今の働き方改革や女性医師が活躍し働きやすい現場に関して注目されるようになってきていますが、病院や社会全体で考える必要があると感じました。
今回のACPに参加して感じたことをまとめたいと思います。
―学会の規模、質が非常に優れている
―学生も臨床研究をしている。日本からも発信したい
―働き方改革を病院、社会全体で考える必要性がある
長文を読んでいただきありがとうございました。