子どもの居場所等での食スキルの支援環境
基本的な調理スキルや献立の考え方の習得は、
食支援の活用や食事の質を高めるのに有用
困窮世帯は、欠食が多い、野菜が少ない、炭水化物エネルギー比率が高いなどの傾向があります。これらを改善するために、基本的な調理スキルや献立の考え方の習得は、より多様な食の支援の活用につながり、食事の質を高めることに有用であると言えます。当教材の活用は、簡単に食事を作るスキルと、献立を考える力を習得することを目的としています。掲載したレシピや調理動画は、段階的な調理スキルの習得と向上につながると考えています。
第2章は、市民社会の中で普及している子どもの居場所での食生活支援を行うためのガイドです。
調理スキル向上のためのツール
上記を踏まえ、子どもや保護者の自主的な調理スキル等の向上を目的として当教材を制作しました。当教材は、いくつかの場面で、行政栄養士等が活用することを想定しています。教材の一部または全体を活用することで、段階的に調理スキルの習得につなげることができます。
小学校高学年、中学生以上であれば、自宅で料理に取り組む際に、当教材を利用することができます。ただし、始めのうちは、大人の見守りがあることが望ましいです。
栄養価と価格を総合して、よりよい食品を選択する
できるだけ安価で栄養価の高い食材を知ることで、食費を抑えることができます。長く保存できるものや、使い切れる場合は、まとめ買いしたり、丸ごと買うと節約になります。
また、同様の栄養価を含む、より安価な食品に置き換えることで食費を抑えることができます。代わりになる食材を活用することがポイントです。
例えば、肉類の価格は、一般的に鶏肉、豚肉、牛肉の順に値段が高くなる傾向にあります。牛肉を使う料理を豚肉で代用できれば費用を抑えることができます。
食品の保存や作り置きの方法
食品の保存方法を知ると、無駄を少なくすることができます。作り置きにも応用できるので、適切な保存方法を知っておきましょう。 食事をまとめて作る(作り置きをする)ことで、時間と食費の節約ができます。作ったものを冷凍しておくと、品数を増やせて、栄養バランスを整えやすくなります。
簡単に調理するスキルを身につける
レベル1 小学校低学年を想定
レベル1のねらいは、大人と子どもが一緒に調理を行って、子どもが調理に親しむことです。
そのために、子どもが安全に調理しやすい環境を整えるのが大切です。
食材をちぎる、つぶす・たたく、調理用ハサミや包丁で切るなどは、子どもにとっては楽しい作業です。
できるところだけ、子どもに担当させる(手伝ってもらう)だけでも十分です。
Step1かんたんな料理に挑戦しよう
1 ちぎる
ちぎる:レタス
ちぎる:キャベツ
2 つぶす・たたく
たたく:きゅうり
つぶす:じゃがいも
3 卵をわる
卵の割り方
Step2ピーラーを使ってみよう
使い方を間違えると危険であることを子どもに説明しましょう。最初は大人が一緒に行い、子どもが怪我をしないように見守りましょう。
Step3調理バサミを使ってみよう
調理ハサミは先端が丸く、あまり大きくない、子どもがにぎりやすいものがよいです。100円ショップでも子ども用の調理用ハサミが売られています。
Step4包丁を使ってみよう
使い方を間違えると、怪我をしたり危険であることを伝えましょう。最初は子どもが怪我をしないように見守り、大人と一緒に行うようにします。
安全な置き方、持ち方、食材の抑え方などの包丁の扱い方を教えたうえで、柔らかい食材を切ってみましょう。
Step5Step1~4でつかった食材で、簡単な料理を作ってみよう
レベル2 小学校中学年~高学年を想定
電子レンジや炊飯器を使った料理
レベル2のねらいは、調味料の計量ができるようになること、電子レンジを使った簡単な料理を作れるようになること、炊飯器でご飯を炊けるようになることです。
はじめのうちは、めんどうでも計量して作るのが、早く上達するコツです。「計量」することは、量の「感覚」を養うだけでなく、料理の失敗を防ぐことにもつながります。
Step1食材や調味料を計量してみよう
計量スプーンと計量カップは、100円ショップで売られています。デジタルスケールは、1000円くらいで購入できます。なくても問題ありません。
- 計量スプーン(体積を量る)
主に調味料を計量するときに使います。 - 計量カップ(体積を量る)
計量スプーンでは、計量しきれない量を計量するときに使います(水200mlなどの場合)。 - 1g単位で量れるデジタルスケール(重さを量る)
野菜や肉などの重量を量るときに使います。
Step2電子レンジ調理のポイントを確認しよう
電子レンジのW(ワット)数を確認しましょう。このガイドでは、600Wの電子レンジを使っています。
加熱するときは、重ならないように食材を広げると、均一に熱が通りやすくなります。食材の大きさや厚みを均等にすると加熱ムラを防げます。コンロで作るときよりも食材は薄め、小さめに切るとよいです。
Step3レンジで簡単にできるおかずを作ろう(副菜)
このガイドでは、4人分を想定しています。2人分で作る場合は、材料は半分にして、加熱時間は2/3を目安にしてください。例えば、4人分の加熱時間が3分の場合、加熱時間2分が目安になります。加熱時間が足りない場合は、30秒ずつ加熱をしてください。
Step4ご飯を炊いてみよう
まず大きめのボウルにザルを重ねて米、水を入れます。
次に指先で全体をざっくりと手早くかき混ぜ、すぐに水を捨てます。とぎ汁が半透明になるまで同じ動作を繰り返します。
米を炊飯器の釜に移し、目盛りまで水を加えて炊飯しましょう。
Step5炊き込みご飯を作ってみよう
食べるものが、いつも同じだと飽きてしまいます。そんなときは、料理のレパートリーを増やすために、一工夫してみるのがおすすめです。
コーンご飯
油揚げときのこの炊き込みご飯
ケチャップライス
レベル3 小学校高学年を想定
電子レンジやコンロを使った料理
レベル3のねらいは、電子レンジで簡単な主菜を作れるようになること、簡単な炒め物を作れるようになること、汁物を作れるようになることです。
調理をスタートする前に、食材や調味料を計量しておくと、手際よくスムーズにできて美味しく仕上がります。
Step1レンジで簡単にできるおかずをつくろう(主菜になるおかず)
Step2簡単な炒め物を作ろう1(主菜になるおかず)
Step3かんたんなみそ汁を作ってみよう
みそ汁に野菜を加えて具だくさんにすれば、野菜がたくさん摂れます。みそ汁で、野菜がたくさん摂れると、一食の食事バランスが整いやすくなります。
Step4ごうかなスープを作ってみよう
レベル4 中学生を想定
コンロをつかった料理
レベル4のねらいは、生の肉や魚を使って、炒め物や煮物を作れるようになることです。炒め物や煮物に、肉や魚の他に野菜類を多く入れると、ボリュームが増えて満足感が増します。
調理をスタートする前に、食材や調味料を計量しておくと、手際よくスムーズにできて美味しく仕上がります。
レベル2やレベル3にある料理と組み合わせると、主食、主菜、副菜がそろってバランスの取れた食事になります。
Step1簡単な炒め物を作ろう2(主菜になるおかず)
Step2簡単な煮物を作ろう(主菜になるおかず)
1食分(または1日分)の献立を考える
時間のゆとり、負担感等に応じて、できる範囲で食事のバランスを整えましょう。理想を追求するよりも、簡単にできる料理を一つ追加してみましょう。 頑張りすぎないことが大切です。まずは、ごはんとみそ汁、ごはんとおかず、パンとスープ、これだけでも立派です。
Step1理想は主食、主菜、副菜をそろえること
主食(ごはん、パン、麺類などの料理)、主菜(魚介類、肉類、卵類、大豆・大豆製品を主材料にした料理)、副菜(野菜類、海藻類、きのこ類を主材料にした料理)をそろえると栄養バランスが良くなります。
主食 : エネルギーを得るための基本となるご飯やパン、麺類など。
主菜 : レベル3やレベル4に載っているものは、主菜になるおかずです。
副菜 : レベル2に載っている野菜を中心としたおかずが副菜になります。
Step2忙しい時や料理する気分が乗らない時は、できる範囲で準備をする
忙しい時などは、ごはんとみそ汁、ごはんとおかず、パンとスープ、これだけでも立派です。できる範囲で、頑張りすぎないことが大切です。
みそ汁やスープに肉や卵などのタンパク質を多く含む食品を加えたり、野菜をたっぷりいれて具沢山にしたりすると栄養バランスがよくなります。
Step3手際よく食事を準備するコツ
食事を準備する工程は、献立決め、下準備、調理、後片付けです。
電子レンジや、コンロで加熱している間に、少しでも器具を洗っておくと、片付けが楽になります。複数の料理を同時に作るときは、加熱している時間に、同時進行で他の料理を作ると手際よく進められます。
汁物は煮込み時間が長いことが多いため、最初に火にかけて加熱し、その間に他の料理の準備を進めるとよいです。