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「連携大学院講座」とは

「連携大学院講座」とはなにか −大学院生を募集中!!

                                          (2014年8月6日)

 「連携講座」とは?

宮城県立こども病院産科で胎児診断胎児治療,臨床遺伝学などを学びながら,同時に東北大学大学院で研究して学位取得をめざしませんか?

宮城県立こども病院産科には「連携大学院講座」が併設されていて,大学院生を全国からひろく募集しています.当科の産科医師として働きながら,社会人大学院生として研究をおこない,学位を取得することが可能です.

当科における連携講座の正式名称は,「東北大学大学院医学系研究科医科学専攻先進成育医学講座胎児医学分野」といい,東北大学の正式な医学講座です.これは2009年12月に,東北大学と宮城県立こども病院のあいだに連携協定が締結されて正式に発足した講座です.当院産科部長の室月淳が,先進成育医学講座胎児医学分野教授を兼任しています.

東北大学は,宮城県立こども病院を臨床研究拠点として位置づけ,連携して大学院教育を推進し,産科や小児科などの成育医療分野の人材を育成するとされています.宮城県立こども病院の医師らが,周産期診療に携わりながら博士号を取得できる仕組が整えられ,周産期医療のエキスパート養成をめざします.

2014年3月には,当科の「先進成育医学講座胎児医学分野」からはじめてふたりの医師の卒業生が誕生しました.ふたりとも医学博士号を取得し,4月からはそれぞれが高いポジションを得て新たな職場に異動していきました.このように当科の連携大学院講座では,全国から意欲のある医師を募集し,4年間働きながら大学院で研究して学位を取得し,そして新たなポジションにステップアップしていくという専門医師としてのロールモデルの確立をめざしています.

  

 日本周産期・新生児医学会シンポジウム

第50回日本周産期・新生児医学会学術集会が2014年7月13-15日に舞浜(千葉県)で開催されました.そのなかで「若手産科新生児科医が望むこれからの周産期医療とは」というシンポジウムが企画され,当科の医師でかつ連携大学院生である室本仁がシンポジストとして,「「連携大学院」という新たな取組」というタイトルで発表いたしました.

われわれの「連携大学院講座」の紹介として,シンポジウムの抄録とその発表スライドを以下に掲載させていただきます.

 

二次抄録

はじめに

初期研修をおえた医師の40%以上がいわゆる大学医局をはなれて市中の研修病院でキャリアアップを目指すといわれる。すなわち今日の若手医師が周産期医療を志すときでも、単なる多忙な職務の中での日常臨床だけでは満足せず、そこにはさまざまな希望があると考えられる。今後は若手医師のキャリアパスやライフバランスがますます多様化し、それに見合った市中病院を選んでいくことになるだろう。宮城県立こども病院では若手医師に魅力を感じてもらおうとさまざまな取り組みを行っている。すなわち東北大学と協定を結んで「連携大学院」を開設し、臨床研究の拠点として独自の取り組みを行っていることがそのひとつである。高度専門病院としての豊富な臨床症例をもとに臨床研究を行い、働きながら学位の取得をめざすという若手医師のニーズに対応することにより、あわせて人材育成・人材確保を目指している。

連携大学院とは何か

(1) 連携大学院の歩み

2009年12月に東北大学と宮城県立こども病院は胎児期から思春期までを総合的に診療・研究していくため連携協定を締結した。小児血液内科、神経外科、産科の3分野で連携大学院の発足が決まった。2010年4月、東北大学大学院医学系研究科先進成育医学講座胎児医学分野(以下、連携大学院)が開講し、連携大学院教授が宮城県立こども病院産科部長を兼任し日々の臨床と並行し研究指導を行うことになった。同年、第1期生として2名の産科医師が大学院へ入学し、2012年4月にはさらに1名が入学した。大学院生は宮城県立こども病院産科の職員として採用され、そこを研究拠点とする。

主な研究テーマとして位相差トラッキング法を応用した胎児循環動態の評価を上げており、臨床データのみでなく、東北大学大学院医工学研究科・工学研究科とも協力し工学実験を行っている。研究成果は各学会で積極的に発表し、日本超音波医学会、東北地方会「奨励賞」2010年・2012年・2013年受賞、総会胎児心臓病学会「里見賞」2013年・2014年受賞、ISUOG「oral presentation awards」2014年受賞など評価いただいている。2014年、3月には第1期生2名が学位を修めた。

(2) 研究内容の実際

位相差トラッキング法は計測点を高精度(速度 0.1 mm/s、積分距離 0.2 μm)に計測が可能な計測法である。我々はこれを応用し新たな胎児循環動態評価方法の開発を目指している。現在取り組んでいるのは胎児の下行大動脈における脈圧(拡張期血圧と収縮期血圧の差)の推定である。これまで胎児のWell-being評価方法として血圧情報に着目されたことはなく、簡便に計測が可能となれば新たな知見となることが予想される。ここではわたしが現在とりくんでいる研究を簡単に紹介する。

胎児脈圧を推定するためには一般にWater-hammer formulaという運動方程式を用いられる。これはニュートン力学を応用した運動方程式で血液を押し出す圧力(脈圧)と血液がそれにより加速され得る速度および血管壁に伝わる脈波伝播速度の関係を式に表すことができる。Water hammer formulaから胎児脈圧=血液比重×平均血流速度×脈波伝播速度と仮定すると従来の手法では脈波伝播速度が計測できないためこれを位相差トラッキング法で計測することを目指している。

位相差トラッキング法は従来のMモード法と類似した計測画面構造で1本の走査線における計測点の速度、移動距離が高精度に計測が可能である。これを胎児の下行大動脈で計測を行うと胎児の血管壁運動速度を得ることができる。この血管壁運動計測を走査線2本に増やして行えば2か所で同時に得ることが可能となる。2か所から得られる血管壁運動速度にはわずかな時間のずれが生じる。血管壁運動速度は心収縮期にpeakを迎えるため、仮にその2か所をA点、B点とし、A点がB点より心臓に近い場合はA点にpeakが到達したのちにB点にpeakが到達することとなる。その時間のずれ(time delay)は脈波が2点間を伝播するのに要した時間ということになる。2点間の距離をtime delayで除すと脈波伝播速度が求まる。

正常胎児98例(16-40週)を対象に測定したところ、脈波伝播速度は妊娠週数に応じて有意に増加した。この脈派伝搬速度を理論式にあてはめて推定した胎児脈圧も妊娠週数に応じて有意に増加した。胎児の脈波伝播速度および脈圧は週数に相関して上昇するものと思われる。現在は工学実験等で理論式の整合性を検証しており、今後発表していく予定である。

(3) 臨床の実際

連携大学院生は社会人大学院生という特性を生かし、宮城県立こども病院で臨床技術を伸ばしながら研究に携わることが可能である。当院での臨床は特に胎児診断胎児治療・遺伝診療に注力しており、胎児治療としては双胎間輸血症候群(TTTS)に対する胎児鏡下胎盤吻合血管レーザー凝固術(FLP)、胎児貧血に対する胎児輸血、無心体双胎に対するラジオ波焼灼術などを行っている。FLPはこれまで49件の治療を行っている。胎児診断・遺伝診療の一環として遺伝カウンセリング・NIPT(無侵襲的出生前遺伝学的検査)・羊水検査・絨毛採取・コンバインド検査など行っている。東北地方において胎児治療と出生前診断を行っている施設が他になく、県内外からくる症例を日々経験することができる。連携大学院は東北大学の正式な医学講座であるため東北大学の博士号が取得可能である。また、日本産婦人科学会専門医、日本周産期・新生児医学会周産期専門医、日本超音波医学会超音波専門医、臨床遺伝専門医などの資格が取得可能である。

(4) 社会貢献

さまざまな講習会やセミナー開催に積極的に取り組んでいる。これまで新生児蘇生法Neonatal Cardiopulmonary Resuscitation(NCPR)については、東北地方のトレーニングサイトとして講習会を40回以上開催した。また母体蘇生法Advanced Life Support in Obstetrics (ALSO)講習会を8回、母体急変対応セミナーを1回、そのほか各種講演会、エコー実技セミナーなどを開催して地域周産期医療への貢献としている。また先の大震災のあとには沿岸部の被害の大きかった複数の病院などへ継続的な支援を行った。

まとめ

連携大学院という新しいシステムは医局に所属することなく入学可能であり、かつ卒後年数も問わないため選択肢として多様性がある。臨床と研究の両面で充実した内容を持ち、選択肢として多様性のある連携大学院は新たな方法でキャリアアップを望む若手医師にとって魅力的な存在となると思われる。また、連携を結ぶ大学側としても人材育成・人材確保の新たなロールモデルとして魅力あるものと期待している。

 

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