トップ 差分 一覧 ソース 検索 ヘルプ PDF RSS ログイン

清涼寺式釈迦像の北限

清涼寺式釈迦像の北限

                               (2018年10月23日 室月 淳)

わが家のちかくに真言宗御室派別格本山・龍宝寺があり,そこには重要文化財に指定されている釈迦如来像があります.1月のどんと祭と4月の花まつりの年2回に収蔵庫が開扉されるときに,この釈迦像を拝観するのがわたしの楽しみのひとつです.これは「清涼寺式釈迦像」といわれる等身大の釈迦立像であることが知られています.

10世紀に譱海箸いα里,宋からもたらし京都嵯峨の清涼寺に安置した釈迦如来像をオリジナルとするものです.縄目状の頭髪や同心円の衣文線をもつ通肩衣などそれまでの中国や日本の仏像にはない特色をもち,古代のガンダーラ仏に通じるものがあるその仏像に,当時の日本人は強烈な印象をうけたものと思われます.釈迦の生前のお姿をそのまま生き写しにしたと伝承されるその像は,鎌倉時代になるとひろく信仰をあつめるようになり,全国に多くの模刻像がつくられました.

この清涼寺式釈迦像は,有名な奈良・西大寺本尊像をはじめ,全国各地に百体ちかくあることが知られていて,龍宝寺のものもそのひとつになります.西日本におおく分布していますが,東国ではややすくなく,北海道に一体(伊達市善光寺),東北では龍宝寺のほかに二体(山形市法来寺,喜多方市太用寺)あることがわかっています.龍宝寺の仏像が清涼寺式釈迦如来像の北限と記載されている解説書がありますが,実際には伊達市善光寺のものが北限のものとなります.

わたし自身は龍宝寺の釈迦像をのぞけば法来寺のものをみたことがあるだけですが,北海道東北の仏像のなかではこの龍宝寺のものがとくに傑出したできを示しています.百ある清涼寺式釈迦像のなかで国宝・重要文化財に指定されているものは20あまりですが,周知のとおり龍宝寺の像はそのなかのひとつです.

清涼寺式釈迦像においては清涼寺の原像をいかに正確に模刻できるかが当時重要とされていました.しかし全国の清涼寺式釈迦像を実際に調べてみると,時代とともにすこしずつおだやかなすがたかたち,すなわち和様にかわっていったことがわかります.しかし龍宝寺の釈迦像は,オリジナルのサイズや全体のバランスが維持されていて,さらに像全体からうける印象もほぼ酷似しています.その水際だった技量と仏像としての完成度から,中央の仏師がオリジナルを実際に手本としながら制作したものと想像できます.

譱海もたらした異国的な釈迦像をはじめてみた日本人の驚きが,いまのわたしたちにもよく伝わってくるすぐれた像です.制作時期も一連の模刻像のなかでも早い時期にさかのぼるのではないでしょうか.

--------------------------------------------------------------------

仏像のはなし にもどる

室月淳(MUROTSUKI Jun) にもどる

フロントページ にもどる   

カウンタ 572 (2018年10月23日より)