A.H
「出席できなかった結婚式」
がんを発症したのは大学を卒業して数年の頃だったため、療養中の時期に同窓会や友人の結婚式に招待されることが何度かありました。療養中であることの事情を話して欠席させてもらっていましたが、同世代の友人たちが当たり前に参加できているイベントに一緒に参加できないもどかしさや社会から隔離されたような孤独感、誘ってくれた友人への申し訳なさを感じていました。
移植から5ヵ月経過した頃、入退院を繰り返しており遠方への外出が難しいため大阪のアパートも借りたままで帰ることができずにいましたが、友人から大阪よりも更に遠方の結婚式に招待されたことがありました。「元気になって来てほしい」「席をとっておくから式を楽しみにゆっくり過ごしてね」と言われたことに対して、友人の厚意はありがたかったのですが、こちらの状況や心情を汲んでもらうことの難しさにモヤモヤした気持ちも抱えていました。友人には式の日までに回復している自信がなく出席を確約できないことや、折角のお祝いの場に私の名前で空席をつくるのは避けたいことを説明し、お祝いの品を送らせてもらって欠席させてもらいました。
そのような経験もあり、移植から2年後に姉の結婚式に出席できた時はとても嬉しかったです。体調が安定しない時期は一週間後の予定も立てられないような生活でしたが、今は気軽に友人と会う約束をしたり、旅行の計画を立てたりできており、当たり前のことができる幸せを日々感じています。
2023年執筆