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恥ずかしい部分の治療のこと
がんの部位が右肩の後ろということもあり、放射線治療の位置は、上半身が対象でした。放射線治療は毎日数分、1.5か月強続きましたが、毎回のその準備が精神的に少しつらかったのを覚えています。
放射線治療の準備は、「つらくならないような体の傾きと、その固定の仕方」から、「その位置に正確に照射するために、体に線を引くこと」など様々です。わたしは、背中にがんの部位があったのですが、仰向けの方が体勢が楽だろうということで、上半身裸での照射がきまり、右胸に、照射の位置を示す赤い線が、いくつも筆で描かれていきました。ヨード液という赤茶色の液体を染み込ませた小筆で描かれるのは、少しくすぐったく、また冷たく、ものすごく恥ずかしかったのを覚えています。
まわりの看護師さんや技師さんは、上半身裸のわたしにものすごく気を使って、タオルを関係ない部分に終始かけてくれましたが、露出しているのはいつも上半身。ベットはとても冷たかったので、乳首がいつも震えており、そんなことを毎日みられるのも気持ちがよい状況ではなかったです。
当時お付き合いしていたパートナーには、自分の体におきていることを説明しようと、何度も線が大量に描かれてフランケンシュタインのようになった体を見てもらおうとしましたが・・・わたしの体験話にすっかりビビってしまい、一度も見ることがありませんでした(笑)
患者さんの中には、体験の記録として写真を撮る方もいるようですが、わたしは1枚もありません。そんな気持ちにはなれなかったから。治療中は、恥ずかしい気持ちを考えないようにしようと、「照射のあとのランチはどこに食べにいこうか」など、別のことを考えるようにしていました。何よりも、裸体を人に毎日見られることへの一時の恥ずかしさより、「これをやることで私は治る」ということを強く思って乗り切りました。この時の心の葛藤は、これまで考えたことのない感覚。治療を受けるうえでの覚悟は、ある意味この体験で固まりました。