マッキー
がんと妊孕性~はざまでの選択をふり返って~
私は病理の結果が出るまでに、妊孕性温存にチャレンジしたいなと思っていました。ところがその決断の前に結果が出てしまい、温存しなければ、すぐに治療を始められるという状況になりました。
予後不良因子もあるから早くがんの治療を始めた方がいいだろう。でも妊娠を目指したくなったら、温存しなかったことを後悔するだろうか。再発や転移したら、温存したことを後悔するだろうか。いろんな人にいろんなことを言われる中で「~たら…、~れば…」ばかりの自問で消耗し、決断すること自体が怖くて逃げ出したくなることもありました。最終的には誰も自分の人生を代わってはくれない、未来のことはわからない、自分の思いを大事にしようと思い、先に受精卵凍結し、落ち着いて抗がん剤治療を始められました。
当時、どうしても次の妊娠を目指したいと強く思っていたわけではなく、がんにならなければできていたかもしれないことに対する執着、可能性の喪失に対する恐れの気持ちの方が大きかったように記憶しています。後付けですが、温存することで、がんに奪われつつある自己コントロール感を取り戻し、未来の選択肢を手にしたかったということだと思います。
決断した日の手帳には「この選択は私を強くしてくれる希望だ。悔いが残っても、何があっても、全て受け入れる。振り返らない。それでよかった、それがよかったと思って前に進んでいく、それだけ。もしうまくいかなくても、今度はしなやかに自分を切りかえよう。チャレンジできたことに感謝して。この決意を忘れない」と書かれています。これまでの後悔ばかりの自分と決別しようとしていたようです。私だけのものではない「いのち」と「未来」に関わる決断は『覚悟を決める』ことだったかと思います。
がんになると大きな決断を迫られることもあり、私も今後、自分がどうなるのかはわかりませんが、決断した後は、何を選んだかということよりも、その後をどう生きていくのかが大事だと思っています。