アッコ
妊孕性の温存 ~妊娠・出産へのあこがれ~
39歳。独身、付き合っている人もいない。しかし『自分もはやく結婚して子ども生みたいな』とずっと思っていた。乳がんが見つかり、治療方針を聞くと、ホルモン受容体が陽性の場合はホルモン療法を5~10年するらしい。『私は子どもを産める時期を乳がんの治療で失ってしまうのか』とがんになった事よりも妊娠・出産できないショックの方が大きかった。
そんな話の中で化学療法をするかどうかも決まっていなかったが、主治医から「妊孕性の温存を考えてもいいですね」と言われた。
『妊孕性の温存って、未婚のキャリアウーマンが将来に備えて、卵子が老化する前の良い状態のものを残すっていうアレのこと??』とすぐに想像でき、その費用が全額自己負担であることも知っていた。インターネットで懸命に「がん患者 妊孕性の温存」と検索するも、『どのタイミングで妊孕性の温存はするの?』『その凍結保存していた卵子を使って妊娠できる確率は?』という疑問に対し十分な情報は得られなかった。今では、がん患者の妊孕性の温存にかかる費用は政府から助成が受けられることになり、情報も得やすくなっているが、4年前の私は情報が十分でない中、『結婚できるかどうかもわからないのに大金を出して卵子を残す意味はあるだろうか』と悶々と考えていた。相談するパートナーもおらず、孤独な気持ちで大きな決断をしなければならない重圧に押しつぶされそうだった。
入院中に産婦人科の医師や不妊カウンセラーの資格を持つ看護師に話を聞くことができ、ようやく具体的な情報が得られた。採卵は退院し、病理の結果が出て化学療法を始める前の1か月ほどの間しかない。1回で何個の卵子が得られるかもわからないが、妊孕性の温存をしなければ、ホルモン療法を中断して妊娠にトライするのは40歳を過ぎており、さらに老化した卵子での妊娠は非常に難しいだろう。いろんな感情と考えがぐるぐる巡り、一人泣きながら考えた末、『いつかは子供を生みたい』と妊娠・出産へあこがれる気持ちを捨てきれなかった。退院後、不妊治療クリニックに通い13個の卵子を保存することができた。未だ機会がなく凍結されている。