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DOHaDをめぐる動物実験

DOHaDをめぐる動物実験

                                      (室月淳 2009年)

これは総説として求められ,2008年に書いた文章です.アーカイブとしてアップさせていただきます.

 1. はじめに

高血圧や糖尿病などの成人病の発症には従来より遺伝的素因が重視されてきたが,近年,成人病の起源を胎児期の低酸素,低栄養状態に求めるいわゆるDevelopmental Origin of Health and Disease(DOHaD)理論が注目を浴びている.David Barkerが子宮内胎児発育遅延(IUGR)と将来の心血管系疾患の発症との間に疫学的に密接な関係があることを見い出して以来,イギリスや北欧で大規模なコホート研究が繰り返され,現在では胎児発育遅延あるいは低出生体重が成人期の動脈硬化性病変のリスクのみならず,高血圧や糖尿病の発症にも深く関係することが明らかにされている.

DOHaD理論はこのように疫学的データにより導き出されたものであるが,病態生理学的にみたその発症メカニズムについてはいまだ不明な点が多い.一般に,胎内での発育分化における重要な時期に低酸素や栄養障害に曝された胎児は,環境に適応するために臓器や組織の構造や機能に何らかの変化を起こすと考えられている.子宮内環境の悪化に対する適応反応は胎児期の生存には有利に働くが,臓器や組織に起こった変化は永続的に続くため,出生後にさまざまな影響を及ぼす.成人後の高血圧,糖尿病,心疾患の発症リスクの増大もおそらくこういったことが関係するだろうと予想される.この考え方を胎児プログラミングfetal programmingと呼ぶ.

本稿ではDOHaD理論の検証を目的として作成されるさまざまな動物実験モデルについて概説する.いずれも胎仔に種々のストレスを加えることにより発育に影響を及ぼし,そこで生じる胎児プログラミングの病態メカニズムを追及するために考案されたものである.

 

 2. 動物実験モデルの特徴

胎児生理学における妊娠動物実験モデルは,マウス,ラットといったげっ歯類などの小型獣を使う場合と,ヒツジ,サルなどの大型哺乳類を使う場合の2つに分けられる.

妊娠マウスなどをモデルに使う場合,胎仔へのストレスを加えるのは栄養制限や外科的操作が中心となる.実験モデルの利点としては,小型獣で飼育や操作しやすいこと,購入や分与など入手が容易,遺伝的均一性,生殖周期が短く世代交代が早いことが上げられる.また多くの先行研究による知見の積み重ねがあり,マウス関連データベースが整っている.たとえば免疫抗体が多く揃っており組織免疫染色やイムノアッセイなどが容易であることや,ゲノムや遺伝子情報の多くが明らかにされており,PCRやin situ hybiridizationといった解析や遺伝子操作などが可能であることが上げられる.欠点としては,胎仔新生仔からの採血や血圧や心電図といった生理的情報の計測が難しいこと,妊娠継続中のサンプリングやモニタリングが難しいこと,多胎であり胎仔の個別化ができないことなどがある.また細かな解剖に基づいた操作,たとえば胎盤操作とか定位脳手術などは胎仔では不可能である.

ヒツジで代表される大型獣を使用する場合では,よりヒトに近い実験モデルを構築することができる.単胎(かせいぜい双胎)が多く,胎仔の大きさはヒトと近似しているため,子宮内手術により胎仔にカテーテルや電極,プローブの装着が可能である.妊娠中もストレスを付加しながら,胎仔から血液をサンプリングしたり生体情報をモニターすることも可能である.母獣腹壁上から超音波断層装置で観察したり,分娩監視装置をつけたりなどヒトと同じような観察もできる.脳皮質波や眼球電位図,筋電図モニターなどから神経学的状態の評価を行ったり,心拍出量や各組織への血流配分などより細かい生理学的研究も可能である.

大型獣の実験モデルの欠点はマウスなどの場合と反対である.飼育が面倒であり,手術や実験などの操作がおおがかりになること.国内でヒツジやサルなどの大型獣を扱える動物実験施設は今のところ多くない.手術もヒトと同じような設備のある部屋と手術器具や薬品が必要となる.入手が面倒でかつ高価である.妊娠期間がヒツジやマーモセットでは145-148日,アカゲザルでは165日と長く実験の手間がかかることも大きな欠点である.またヒツジやサルの特異抗体や特異的DNAプローブなども少なく研究が制限されるという面もある.

 

 3. さまざまな実験モデル

A. 栄養制限

血管病変による子宮胎盤循環障害は胎児への酸素や栄養供給の低下を来し,胎児に発育制限を引き起こす.妊娠動物の食餌の量やカロリーの制限はこの子宮胎盤循環障害を直接に模したものである.母獣への食餌制限の方法はIUGR作製のモデルとしてすでに確立している(1).食餌制限,低タンパク食,鉄制限,過カロリー投与といった方法を,妊娠中のさまざまな時期に負荷することがかんがえられる.こういった妊娠中の低栄養による胎児発育低下は,発展途上国の妊婦が現実に直面している問題といえるかも知れない.

1) 食餌制限モデル

食餌制限,すなわち総カロリー摂取の制限が,いろいろな動物において試みられてきた.妊娠中のどの時期に食餌制限を行うかや,重度のカロリー制限(70%),中等度のカロリー制限(50%),軽度のカロリー制限(30%)などどの程度の食餌制限が実験モデルとして適切かなどが検討されている.もっとも一般的なのは50%のカロリー制限である.

げっ歯類においては,日齢15〜21あるいは日齢7〜21での食餌制限では妊娠期間の長さや胎仔の死亡率には影響を与えなかったが,出生体重を有意に減少させた(2-4).対照的に日齢7〜14での食餌制限は出生体重に影響を与えなかった(5).生後の体重や体構成,食餌摂取量の変化は出生前の栄養状態と関係しており,子宮内での軽度ないし中等度の栄養制限のときのみ出生後の成長のキャッチアップが可能であった.肥満と高レプチン血症は栄養過多と生後の高脂肪食と関係していた.妊娠中の食餌制限は,仔が出生後に高血圧,血管内皮の拡張性の変化,β細胞の数,グルコース負荷試験に対するインスリン反応性の低下などを引き起こすことが明らかになった(1).

ヒツジなどの大型獣における妊娠中の低栄養負荷の実験の報告に比べマウスに比べて相対的に少ないが,胎仔,出生仔に生じる病態についてはより詳しい検討がなされている.胎仔期の低栄養の影響は,そのストレスがかかった時期によって決まってくるようである.妊娠初期から中期にかけてのヒツジ母獣の食餌制限では,胎仔発育遅延や心筋肥大(6, 7),出生後の仔の高血圧(8, 9),血管内皮の拡張の低下(10)などが認められている.同様にモルモットでは,母獣の軽度あるいは中等度の食餌制限により胎仔発育制限が生じ,出生仔に高インスリン血症が生じた(11).

2) タンパク質制限食

最初に報告したSnoeck ら(12)の方法によると,妊娠初期から出産まで妊娠ラットを通常の食餌(タンパク質20%)を与える群とタンパク質制限食(タンパク質8%)を与える群に分けて比較実験をした.タンパク質制限はマウスの早期の受精卵の発達と分化に影響を与え(13),モルモットにおいて胎盤のアミノ酸の移送を変化させた(14).妊娠中期でもタンパク質制限母獣は,コントロールに比べてグルコース,インスリン,プロラクチン,プロゲステロンが有意に低い値を示した(15).タンパク質制限の長所はさまざまな動物に対して行えることである.タンパク質制限は出生仔に高血圧(16)や膵の発達異常による耐糖能異常,血管内膜機能異常(17)を引き起こすことが報告されている.

タンパク質制限による動物モデルで興味深いのは,食餌成分の違いにより異なる胎児プログラム効果が引き出されることである.一般にSouthampton dietとHope farm dietと呼ばれるふたつの異なる種類のタンパク制限食が知られている.Southampton dietは出生仔に高血圧を引き起こす(16)一方で,Hope farm dietは仔にインスリン抵抗性をプログラムすることが報告されている(18).Southampton diet(16)とHope farm diet(18, 19)は使っているオイルの種類(大豆油とコーン油)やメチオニンと炭水化物の含有量などに違いがあり,アミノ酸,脂肪,炭水化物のバランスが異なる.メチオニンやグリシンといったアミノ酸は核酸,コラーゲン,ヘム合成といった発達期の代謝の必須化合物である.Southampton dietには他のアミノ酸に比べメチオニンが多く含まれており,メチオニンの過剰による高ホモシスチン血症は血管内皮の機能異常を引き起こして虚血性心疾患罹患のリスクを高めると考えられる.すなわちこのモデルにみられる胎児プログラミングの少なくとも一部はメチオニンによると考えられる.

一方, Hope farm dietはGlycemic Index (血糖インデックス)が高く,食餌摂取後に血糖値が急速に上昇するので,これがインスリン抵抗性のプログラムに関係することが考えられる.またHope farm dietには心保護作用のあるω-3多価不飽和αリノール酸をSouthampton dietの3倍も含んでおり,対照的な胎児プログラミング作用を引き起こしているのかも知れない.

3) 鉄制限食

ヒトにおける妊娠貧血と出生体重の低下との関係は臨床的によく知られているため,動物実験において母獣の鉄代謝と胎仔発育,出生後の罹患リスクを研究しているグループがある.母獣を2群に分けて鉄制限食とコントロール食を与えたところ,鉄制限食は母獣の体重に影響を与えなかったが,鉄制限の程度によって出生体重が低下したという(20).血中ヘモグロビンの低下により胎仔への酸素供給が低下する病態が予想される.

B. 外科的介入モデル

妊娠動物に外科的操作を加えることにより胎仔を慢性的に低酸素,低栄養の状態にするモデルがつくられてきた.このようなモデルは先進国におけるヒトIUGRにみられる病態を模したものと考えられる.母獣に対する栄養制限や薬剤投与などに比べ,外科的ないし物理的に低酸素を負荷する以下のモデルにはいくつかの特徴がある.もっとも大きな利点は,妊娠中の母体の代謝状態や体環境に変化を起こさないことである.胎仔に対する影響が負荷による直接的なものか,母体状態の悪化による間接的なものかが明らかにできる.別な利点として,特にヒツジなどの大型獣では胎仔から連続的にモニタリングしたり,血液サンプルをとることが可能なことである.

1) 両側子宮動脈結紮

胎齢19の妊娠ラット(満期21.5日)の両側子宮動脈を結紮することにより発育遅延モデルをつくることができる(21).開腹により両側子宮動脈を結紮すると,胎仔の30%,特に子宮角に近い方では死亡することが多かったが,生存胎仔はコントロールに比べ20%の体重減少を示した.日齢21でも体重は著明に低下したままであった.このラット胎仔は低血糖,低酸素血症,アシドーシスを示し,ヒトと同様に子宮内環境の変化による長期的影響を示した(22).出生仔は出生早期に軽度のインスリン抵抗性とβ細胞の分泌不全を示した(23)が,これは将来の糖尿病の発症を示唆する.

2) 胎仔胎盤塞栓fetal placental embolization

妊娠ヒツジは胎児胎盤系の実験モデルとして適しており,胎盤塞栓法によって胎仔IUGRが作成されている(24, 25).胎仔側胎盤を微小塞栓子(マイクロスフェア)によって人工的に塞栓を起こし,胎仔胎盤還流を低下させることにより,慢性的な低酸素,低栄養状態にするものである.胎盤血管抵抗の上昇により胎仔臍帯動脈のドプラ血流速度波形にみる拡張期血流は著明に低下し,resistance index(RI)値も有意に増加することが観察され(図1),ヒトIUGRと同じような病態が再現されていることが推測される.ここではその実験モデルの作製についてやや詳しく解説する.

  • 図1.(上)ヒツジ胎仔IUGR群とコントロール群における臍帯動脈ドプラ血流速度波形の例.IUGR群においては胎仔側胎盤塞栓により拡張期血流波形速度が低下し,ときに拡張期途絶を認めた.(下)21日間の胎盤塞栓前後における臍帯動脈血流速度波形RI値の推移.IUGR群においては21日間にわたって有意に高値を示した(p<0.05)

妊娠期間の確定している単胎妊娠羊を対象とし,全身麻酔下で開腹,子宮を露出し,子宮切開部より胎仔の下肢を引出し大腿動静脈にカテーテルを挿入する.動脈カテーテルの先端が胎仔腹部大動脈の腎動脈分枝部の下,総臍帯動脈より1〜2cm上の部分にくるように留置する(図2左).手術ストレスの影響から脱する4日目以降より,生理食塩水中に撹拌した50μの塞栓子(マイクロスフェア)を動脈カテーテルから少量ずつ注入することにより,胎仔低酸素を作成する(図2左).投与されたマイクロスフェアは胎仔側の胎盤塞栓を起こし(図2右),胎盤血管抵抗の上昇,臍帯血流の減少により胎仔低酸素血症の状態となる.マイクロスフェアの注入量は,胎仔動脈血酸素含量(CaO2)が実験開始前コントロール値の50%まで低下するように調整する.

  • 図2.(左)ヒツジ胎仔の腹部大動脈〜総臍帯動脈の正常解剖.ヒトと異なり臍帯動脈は腹部大動脈末端の分岐部から1本で出る.動脈カテーテルの先端は腎動脈分岐部の下,総臍帯動脈の上に来るように留置した.(右)ヒツジ胎盤組織,x200.胎仔側血管(F)にマイクロスフェア(m)が認められる.Mは母体側血管

21日間にわたって同様の操作を繰り返すと,進行性の胎仔低酸素血症となる(図3上).実験9日目くらいまではCaO2に部分的な回復を認めるが,その後はコントロールより有意に低い値を示すようになる.pHは塞栓後に有意な低下を示すことがあるが,いずれも7.30以上の範囲内にあり,翌日にはコントロールまで回復する(図3下).21日目の塞栓により胎仔体重は約30%の減少を示す.IUGRの指標であるponderal index,脳肝重量比とも有意な差を示し,21日間の胎仔低酸素によりasymmetrical IUGRとなることがわかる.すなわち胎仔側胎盤塞栓,長期低酸素による羊胎仔IUGRの作成は,ヒト妊娠の胎盤機能低下による胎児発育遅延の病態に近い動物モデルであるといえる.

ヒツジ胎仔の低酸素負荷モデルとして,一側の子宮動脈を結紮する方法(26)も知られているが,急激な子宮胎盤血流低下のため陣痛発来を来すことが多く,慢性モデルとしては不適と考えられる.

  • 図3.21日間の胎盤塞栓前後におけるIUGR群(●)とコントロール群(○)の胎仔動脈血酸素含量(CaO2)とpHの推移(mean±SEM)
3) Carunclectomy

妊娠ヒツジの胎盤は30-40個の胎盤小葉cotyledonと呼ばれる小さな胎盤に分かれて存在する(胎盤葉胎盤).子宮腔内で胎盤小葉が付着する場所は決まっており,非妊時には子宮内腔に黒っぽくみえる部分(caruncle)である.妊娠前にcaruncleを一定の割合で切除することをcarunclectomyといい,その後に妊娠させるとつくられる胎盤小葉の数が減少する(27).その結果胎仔の発育は低下するだけでなく,慢性の低酸素血症や低血糖などを起こすことが知られている.

4) 低酸素環境での飼育

それ以外の低酸素負荷モデルとしては,低酸素環境下で妊娠母獣を飼育する方法がある.妊娠ラットを密閉した箱内に低酸素下で飼育(酸素濃度13-14%,胎齢14-21日)すると,出生仔体重はコントロールに比べ24%ほど減少することが知られている(28).ただし妊娠ヒツジでは母獣を特殊な部屋で飼育し長期低酸素下においても(29),気圧の低い高地で飼育しても(30),胎仔発育遅延を来さないことが報告されている.

C. グルココルチコイド投与法

母体にグルココルチコイドを投与すると,ヒトでも動物でも出生体重が減少し,さらに成長後の成人病発症と関係していることがわかっている(31-33).臨床的に胎児の肺成熟を目的としたグルココルチコイドを複数回投与すると出生体重が減少するという報告はいくつかなされている.NIHは2000年の声明で,出生前のグルココルチコイドの単回投与の安全性と有用性を宣言する一方で,複数回投与についての安全性,有用性のデータがいまだないことを強調している(34).動物ではグルココルチコイド投与の回数が増えるほど,時期が妊娠後期になるほど,出生体重に対する影響が大きくなることが報告されている.

実際,胎児のグルココルチコイドへの曝露は時期が大きなポイントなっている.ヒツジ胎仔で妊娠早期にグルココルチコイドを投与すると,出生後の高血圧の発症に関係するようである(35).反対に妊娠後期のグルココルチコイドへの曝露は,高血圧ではなくインスリン抵抗性を来す(36).興味深いことに胎仔期のコルチゾールの上昇は,慢性低酸素ストレスの結果としても認められ,成人病発症の有力なメカニズムのひとつとして提唱されている(37).

D. その他

母獣にさまざまなストレスを負荷すると胎児発育に影響を及ぼすことが知られている.妊娠ヒツジを高温環境下で飼育することにより発育遅延新生仔が出生した(38).また妊娠マウスを1日3回45分ずつ拘束するストレスを与えることにより発育に影響を与えた(39).母獣にアルコールを投与したりタバコの煙を吸引させて胎仔発育をみる研究も多い.また妊娠マウスにサイトメガロウイルスを注入し胎盤感染を起こさせるモデルは興味深い(40).

近年の新しい発育遅延モデルはノックアウトマウスによるものである.成長発達に不可欠と考えられる遺伝子,たとえばpleomorhic adenoma gene 1 proto-oncogene (41),insulin-like growth factor-2 (IGF-2) (42),scaffold attachment factor B1 (43),IGF-2 mRNA-binding protein 1 (44),IGF-1 receptor (45)などである.逆にIGFBP-1過剰発現マウスモデルも報告されている(46).

 

 4. おわりに

胎児の発育と成人病の発症の関係を調べるためには動物によるIUGRモデルが非常に有用といえる.胎仔成育の機序とともに将来の成人病発症に関する知見を得ることが最終的目標である.ヒト胎児に対してストレスを加える実験を行うことは当然できないため,なおさら動物モデルが必要となる.多くの動物モデルでは,ヒトにおけるほとんどの疾患を再現できているがすべてではない.これは胎児プログラミングの臨界期というものは動物によって異なるためとも考えられる.さらに母体のホルモン状態,胎盤機能,ストレスに対する胎児の反応などが,IUGRを作成するための手技によって変化するのかも知れない.

Thrifty phenotype(倹約的表現型)仮説は,低栄養の子宮内環境に胎児が生理的適応を起こし,それが出生後に影響するという考え方である.さらにthrifty phenotypeはthrifty genotype(倹約遺伝子型)によって生じるとの主張がある.進化の過程で飢餓に適応してきた遺伝子型が,栄養過多の現代には糖尿病,肥満,高血圧の遺伝的素因となるというものである.DOHaDの研究分野は大きく拡張するにつれ,倹約的表現型と倹約遺伝子型のバランスの問題,あるいは遺伝子の後成的就職の問題などをテーマとするようになってきた. IUGRの病態を引き起こす因子が錯綜しているため,現在のところどのモデルも完全に満足がいかない状況であるが,それにもかかわらずDOHaD理論の病態生理学的メカニズムについては着実に明らかになってきているといえる.

 

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