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電子カルテ批判

電子カルテ批判

                                   (室月 淳 2015年8月15日)

電子カルテほど,行政や病院上層部が漠と抱いている期待と,現場で実際に使用しているひとによる評価が乖離しているものは存在しないでしょう.「うちの病院の電カルひどい,なんとかしてくれ」「このメーカーは最低!」といった話はしょっちゅう聞かされますが,逆に,現場で実際に使用している人間がほめたり,評価する声を聞くことはまずありません.

一流のメーカーが開発した何億円もするシステムにたいするユーザーの評価がこれほどまでに低いのは,電子カルテそのものになにか根本的に問題があるからではないでしょうか.こんなことをつぶやいていると,先輩諸氏からそもそも電カルになにかを期待しているからいけないのだと怒られるのですが,それならば全国でこんなムダ遣いを続けるのをやめて,どこに問題があるかをそろそろ考えなおすべきではないでしょうか.

カルテの英語はmedical recordですが,これは単なる記録文書とはちがいます.おそらく既存の電子カルテは,すでに診療が完結した過去の患者カルテを横にみながら,そこに記載されている文章や数字をいかに見やすくパソコン上で表示するかに意識がいっているようにみえます.過去のことをまとめる患者サマリーのようなものならばそれでもなんとかなるかもしれません.

しかし実際のカルテは,未来のまだみえないそのときどきにおける書きこみであり,その時点におけるアセスメントをおこなって行動を決定するということの不断の繰りかえしです.患者についての記述であると同時に,医療者の思考と行動の過程でもあります.主治医は主訴と客観データをカルテにまとめ,思考と推理をはたらかせ,また治療行為のフィードバックを確認しなら診療をすすめていきます.

カルテはその思考と行動のリアルタイムの記録なのですが,その思考行動様式は外科系と内科系ではおおきく異なり,また各診療科でもちがってくるでしょう.だから電子カルテは各診療科によって必要な機能がかわりますし,個人の医師によっても記述のスタイルが異なります.そしておそらく最大の問題は、電子カルテいおいてどこにも明確に記述された機能定義モデルが存在しないことだと思います.

わたしからみれば,診療行為を補助するせっかくのシステムですから,医師のアセスメントを助けるような機能を組みこめばいいような気がします.医師の思考推理過程をサポートするアナログな方法論としては,すでにKJ法やPOS方式といったものがあるわけですから,電子カルテにもそういった支援システムを組みこんでもいいでしょう.

とにかく現状の電子カルテの使い勝手,あたかもファイルメーカーの各項目を埋めていくだけのような使い心地の悪さはなんとかしてもらいたいと心から思います.いまは病院の業務自体を電カルパッケージにあわせて変更しなければならないことが多く,こんな本末転倒が続けば「医療の質と安全性の向上」のまったく逆の事態を招きかねないでしょう.

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カウンタ 2734(2015年9月10日より)