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ハンドブック−はじめに

1.はじめに

 骨系統疾患skeletal dysplasiaは,全身の骨や軟骨の形成不全によって特徴づけられる一群の疾患である.産科領域に超音波診断が導入される以前は胎児にこれらの疾患が見つかることはなく,出生後に初めて四肢短縮を認め,レントゲン写真によって診断されることがほとんどであった.超音波診断が広く行われるようになると,放射線診断学の分野で蓄積された知見がいろいろな形で胎児診断に応用されるようになっている.

実際に胎児期にみつかる骨系統疾患は細かく数えると100種類以上といわれている.ひとつひとつの疾患の頻度は高くないが,すべてをあわせると決してまれではなく,超音波診断に当たっては注意な胎児異常が必要といえる.骨系統疾患の一部では遺伝子診断が可能となったが,われわれが胎児期に遭遇する骨系統疾患は散発的に発症する例が多いため診断に苦慮することが多い.先天性骨系統疾患の国際登録の統計(1)によると,出生前に超音波所見により正確な診断がついたのは40%弱に過ぎない.20%の症例では診断名を誤っており,残りの40%が出生前診断不能あるいは出生時まで気がつかれなかったという.

胎児期に発症する骨系統疾患の中には周産期死亡を来たす生命予後不良のものが含まれているため,正確な出生前診断を行うことが適切な周産期管理や両親へのカウンセリングの面から必要となる.多くの種類が存在する骨系統疾患を出生前に鑑別診断するためには,診断のためのアルゴリズムを考えそれに沿って系統的にみていく方法と,発症頻度が高い順にひとつひとつの疾患の特徴をチェックして当てはめていく方法のふたつが考えられる.実際の胎児診断ではこのふたつの方法を併用していく必要がある.

本ハンドブックでは,最初に胎児骨系統疾患総論と超音波による胎児骨の観察法について述べたあと,前者の「胎児骨系統疾患の超音波診断アルゴリズム」と,後者の方法すなわち個別の胎児骨系統疾患について取り上げる.また胎児CTについても簡単に触れたのちに,周産期管理とカウンセリングについて解説する.

 

略語表

AC: Abdominal circumference(腹囲長)
ACG: Achondrogenesis(軟骨無発生症)
ACH: Achondroplasia(軟骨無形成症)
ATD: Asphyxiating thoracic dysplasia(窒息性胸郭異形成症)
BPD: Biparietal diameter(児頭大横径)
CD: Campomelic dysplasia(彎曲肢異形成症)
CDP: Chondrodysplasia punctata(点状軟骨異形成症)
EvCD: Ellis-van Creveld dysplasia(Ellis-van Creveld症候群)
FL: Femur length(大腿骨長)
HCH: Hypochondroplasia(軟骨低形成症)
HP: Hypophosphatasia(低フォスファターゼ症)
OI: Osteogenesis imperfecta(骨形成不全症)
RCDP: Rhizomelic chondrodysplasia punctata(近位肢節型点状軟骨異形成症)
SEDC: Spondyloepiphyseal dysplasia congenita(先天性脊椎骨端異形成症)
SRPS: Short rib polydactyly syndrome(短肋骨多指症候群)
TC: Thoracic circumference(胸郭周囲長)
TD: Thanatophoric dysplasia(致死性骨異形成症)

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2.骨系統疾患の概念と分類 へ

10. 文献 へ

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カウンタ 4296 (2011年7月30日より)