□様々な痛み

│術後痛 Postoperative pain│

　←→術後痛モデル/Pre-emptive analgesia

⇒◎術後痛の修飾因子 ⇒◎術後痛 ⇒◎術後痛の影響 ⇒◎術後痛の対策

┏体性痛 ┳切開創の痛み/断端痛 ┃ ┗深部痛（特に筋肉痛） ┗内臓痛 →麻酔により増強される術後の痛み

┏安静時痛 ┗体動時痛



• 術後には様々な痛みが出現する。
• 「痛くなく、副作用もなく、円滑に離床できる」ような鎮痛は理想かもしれない。
  　しかし、術後に生じる安静時痛と体動痛の両方をおさえるには、多量の鎮痛薬が必要とされる。
  　またそのような場合には、痛みはないが、副作用のために離床が遅れる可能性も考えられる。
  
  
• 腹部の手術後は、腹部に力が加わる動作で痛みが増強するが、いったん立ち上がると、歩いてもそれほど痛みは生じない。
  　運動すると、腸管の運動も促進されるので、早期離床は重要である。
  　仰臥位→側臥位→ベッドから足を降ろす→坐位→立位→歩行の段階を追って、体動時痛の軽減策などを指導する。
  

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◎術後痛の修飾因子

• 患者因子
  　患者の性格、社会性、痛みの経験の有無、術前の不安、恐怖など。術前から心理面での援助や投薬による不安除去が重要である。
  
  
• 麻酔管理
  　全身麻酔の実か伝達麻酔併用か、麻酔使用の有無、pre-emptive analgesiaの有無
  
  
• 手術部位、手術時間、侵襲の程度
  　手術創の大きさ、内臓器官に及ぶ侵襲の程度、手術時間の長さに大きく左右される。
  　一般に開腹術・開胸術は、深呼吸・咳など呼吸運動に関与すること、体動に際して緊張がかかることなどによって痛みは強い。
  • 開胸術---上腹部は下腹部に比べて痛みが強いが、肋骨下縁に沿った横切開は縦切開に比べて痛みは弱い。
  • 体表面の手術（乳腺、甲状腺など）では、痛みは軽い。
  • 人工関節置換術痛---股関節手術より、膝関節手術の方が痛い。
  • 手術時間が長いと術中の低体温などによる術後のふるえが痛みの増強因子となり、患者を苦しめる。

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◎術後痛
　[体性痛ー切開創の痛み]

• 切開創から起こる痛み：主として表面痛
  
  

  安静時に起こる痛み	定常な鈍い痛み：発痛物質、発痛増強物質による C線維によって伝えられる。
  切開創が引っ張られた時に 起こる痛み	鈍い痛みの上に鋭い痛みが加わる。：痛みが走る。 切開創が横隔膜に近いほど、呼吸運動に影響されやすいので、痛みが出やすい。 鋭い痛み：機械刺激によるもので、主としてAδ侵害受容線維によって伝えられる。

　[体性痛ー深部痛]（特に筋肉痛）

• 長時間の手術中に、体位が変わらなければ、術後筋肉痛が生じる。
  
  
• 股関節の置換術あるいは再建術の後、大腿四頭筋その他が脊髄反射による痙攣性収縮（spasm）を起こし、痛みが生じる。
• 脊柱、他の大きな関節、直腸、肛門などの手術の後に現れる。
  
  

  屈筋の収縮	一般に痛みがあると、関節を曲げる屈筋反射が生じる。
  伸筋の収縮	股関節手術の後で痙攣性に収縮する大腿四頭筋は、伸筋である。

　[内臓痛]　←→内臓痛

• 術中に内臓器官が引っ張られたり、引き裂かれたりしたことに対する生体反応によって起こる痛み
  
  
• 胃や腸の運動が反射性に抑制されたために起こる痛み
  内臓からの痛覚線維は側枝を出して、腹腔神経節や脊髄側角ニューロンを興奮させる。
  　　　　　　　↓
  

  脊髄側角ニューロン---交感神経節前ニューロン 　腹腔神経節ニューロン---交感神経節後ニューロン

  　　　　　　　↓
  　交感神経節後ニューロンは、胃や腸に向かい、平滑筋を弛緩させる。
  　　　　　　　↓
  　胃や腸の緊張が下がり、運動が抑制される。
  　　　　　　　↓
  　食物をとってなくても、ガスや消化液が溜まり、胃や腸が膨らんで、痛みが現れる。

　[麻酔により増強される術後痛]　←→麻酔薬　参考1

揮発性麻酔薬の中には、気道過敏性があるものがある。刺激性の有害性全身麻酔薬は呼吸器を刺激するため、その用量が制限される。
• 静脈麻酔薬の中には、灼熱感を誘発するもがある。（かつてのプロポフォールは血管痛を誘発した。）
  

  有害性 全身麻酔薬	揮発性麻酔薬	イソフルラン desflurane	TRPA1チャネルを活性化する。 TRPV1やTRPM8チャネルは活性化しない。
  	静脈麻酔薬	プロポフォール etomidate
  非刺激性の 全身麻酔薬	揮発性麻酔薬	ハロタン セボフルラン	TRPA1チャネルを活性化しない。

• TRPA1を活性化しない全身麻酔薬を選択することで、術後痛と炎症を軽減できると考えられる。

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◎術後痛の影響

1. 呼吸器
   • 主に胸部、上腹部手術では、肺活量、機能的残気量、一回換気量などが減少し、痛みによる反射的な腹筋の緊張亢進や横隔膜機能低下が引き起こされる。さらに、痛みに対する恐怖感から深呼吸や咳が抑制され、分泌物貯留や無気肺の原因となる。
   
   
2. 循環器
   • 交感神経の緊張によって、頻脈、血圧上昇を来たし、心筋虚血、心筋梗塞が引き起こされる。また、痛みによる長期臥床は、深部静脈血栓腔の形成因子となる。
   
   
3. 消化器
   • 腸管の動きが抑制され、術後イレウスの原因となる。また排尿障害を起こす。
   
   
4. 内分泌
   • 交感神経の緊張は、カテコラミンや異化ホルモンの遊離を促し、代謝亢進、酸素消費量の増加をもたらす。
   
   
5. 精神面
   • 痛みによる不安・恐怖は、薬を過度に必要としたり、医療側に対する不信感の引き金となる。
   
   

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◎術後痛の対策

• Multimodal pain therapy
  　局所麻酔薬による神経ブロック、オピオイド、NSAIDsなどは、それぞれ異なった部位、機序で痛みを鎮める。それぞれの長所を引き出し、相乗効果が得られるように、副作用が最小となるように、併用する。
  
  
• pre-emptive analgesia
  
  
• PCA、持続硬膜外注入
  
  
• 時間薬

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