メッシー
職場で「がんを経験したのに」と言われなくなった日
29歳で甲状腺がん(ステージⅠ)を経験しました。がんに関する情報がほとんどなく、周囲に相談できる友人もいなかったため、不安を忘れるためにがんの経験を自分の中でなかったことにして、職場復帰と同時にわき目も振らずに仕事をすることを選択しました。
そのかいもあって、退院から1ヶ月も経つと自分でがんのことを思い出すことはなくなっていました。その一方で周囲から「がん患者」として扱われることに対する反発心をいつも感じていました。仕事でどれだけ頑張っても「がんを経験したのに、本当によく頑張ってくれた。君がいてくれてよかった」と言われ、素直に言葉を受け止めることができませんでした(相手にとっては最高の褒め言葉だったんだと思います)。
健常者と同じ、もしくはそれ以上の仕事をすることで「がんを経験したのに」の接頭語が取れると信じて、それから数年間はがむしゃらに仕事をしました。
35歳で肺がんを経験して、無理に隠そうとするのではなく、がんの体験から学んだことを仕事に活かすよう意識を変えたことにより、自分にしかできない仕事があることに気づきました。自分の成果を人と比べることが無くなり、仕事に対するストレスは軽減し、気が付いたらずっと気にしていた「がんを経験したのに」という接頭語はつかなくなっていました。
2018年執筆