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再発への不安と15年後の涙
2003年に35歳で乳がん(ステージ2b)と診断されました。不安でしたが、手術・抗がん剤・放射線・ホルモン治療(5年間)と間断なく治療が続き、先のことは正直、考える暇がありませんでした。
再発への不安が湧いてきたのは、その後。6年目から通院が年1回に減り、逆にささいなことが気になり始めました。腕にかさぶたができただけで「皮膚がん?」。頭が痛いと「脳転移?」…。傍から見れば「気にし過ぎ」ですが、悪い方にしか考えられず、主治医に呆れられても「検査して」と懇願し続けました。復職後は「がん患者」として扱われたくなくて、できるだけ明るく「普通」に過ごしていたのに、罹患前に好きだったお菓子さえ「再発につながるかも」とちゅうちょする日々。でも、自分よりもっと病状が重い人がいるのに…と、家族や友人にも相談できず一人で抱え込んでいました。
楽になれたきっかけは、乳がんの完治のめどである10年を迎え、患者仲間と話したこと。「実は、こんなつまらないことがしんどくて…」と打ち明けると「私も同じ」「みんな考えるよ」と、さらりと受け止めてもらえました。話せたことで「病気にかかったことも、再発するかどうかも、誰のせいでもないし、なぜかは分からない」という当たり前のことに、やっと気づいたのでした。
そして、15年が過ぎたある日。ふと、治療中に倒れたことや悩んだ日々を思い出し、何げなく「あのころ私、つらかったな」とつぶやきました。そうしたら突然、驚くほど涙があふれて来て、初めて声を上げてわんわん泣きました。長年我慢し、押し殺してきた心の痛みを全部吐き出せて、自分自身を「よく頑張った」と認められた瞬間だったのだと思います。
がんにかかる前の自分には戻れません。15年たっても、消えない痛みと不安はあります。それでも今は「不安は誰にもある。向き合いながら、人に頼りながら、一日一日を生きていこう」と思えるようになりました。