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変化した恋愛観
私はがんになるまで、恋愛対象は婚姻歴のない男性でした。理由はシンプルで、相手の過去を全て受け入れられるほどの人間ではなかったからです。
ところががんになり、初めてお付き合いした男性は婚姻歴あり、子どもありの方でした。お付き合いに至った一番の理由は、がんになった私でも必要としてくれることが嬉しかったからです。それともう一つは、がんになったことで背負いこんでいた大きな問題を「回避できるかもしれない」という淡い期待がありました。
私は34才でがんになり、妊孕性に影響があるプラチナ製剤を投与しています。当時はまだ妊孕性という言葉が一般的でなく、私自身知識を持ち合わせていなかったのですが、数年後妊孕性について学ぶ機会があり、子どもを授かれない可能性があることを知ります。
がんになって恋愛や結婚に消極的になったのは、子どもを授かれない私と結婚する相手に対しての申し訳ない気持ちが消えなかったから。もし結婚できたとしても、完治が見込めない人間が子どもを授かるのは身勝手なのではないかと、心の中で思い続けていました。
しかし子どもを既に授かっている独身男性なら、子どもの問題に直面せずにすむかもしれない。そう考えた私には、子ありの未婚男性はありがたい存在へと変わりました。
結果的には、他の理由で別々の道を歩むことになりましたが、私にとっては大きな挑戦でした。40才を過ぎていろいろ諦めるようになりましたが、いくつになっても恋愛はしたいと思います。がん患者でも必要としてくれる人が再びあらわれますように。
2021年執筆