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若いゆえの苦悩
「いーい?優先席はね、おじいちゃん、おばあちゃんや身体の不自由な人に譲るのよ。あんな思い遣りのない大人になっちゃ、ダメよ。分かったぁ?」
そう言って電車の中で若いママがコチラを見ながら、時折、私を指さして、自分の幼子に話している。あからさまに分かる態度と声の大きさで。
こういうことが、度々ある。
「仕方ない、見た目にはわからないもの…。」そう思う反面、本当に悲しくなる。
私は、治療の後遺症で出産機能を失って、左の腹直筋に一部穴が開いて欠損している。排尿障害と排泄障害も抱えているし、医療麻薬を飲んで痛みをごまかし、薬の副作用に悩みながらなんとか生活している。同世代の友達のように元気に動き回れないし、長時間立っている事もできないから、泣く泣く優先席や多目的トイレを使わせていただく。
今に至るまで、これでも、がんリハビリに3年半も通ったのだ。
最初は杖をついていたから周りも席を譲ってくれたが、今はどこからどうみたって元気そうな女性にしか見えない。心身ともに動けないくらいしんどい日も、一生懸命オシャレをする。抗がん剤治療中も、通院にさえウィッグを被り、オシャレの工夫してモチベーションをあげていた。「見た目、全然わからないねぇ、似合ってるよ!」と主治医や看護師さんから褒められるととても嬉しかった。がん患者だと思われたくない。わたしだって一人の若い女性として、オシャレもお化粧も楽しみたいから。
がんになっても病人だとわからないくらい工夫することで、気持ちは随分晴れたりする。
辛いことの方が多いけれど、同じように病気と闘っている仲間と、お金をかけずにいかに自然に健康的にオシャレができるかを話す時は、みんな目がキラキラしていたりする。
その反面、病気を理解してもらいにくい環境も多く、90歳の祖父には孫の顔を見せてくれよと言われてしまうこともあって号泣した。ヘルプマークがもっと普及する方法ないかなぁ?