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別品の祈り

別品の祈り−法隆寺金堂壁画

                                  (室月 淳 2014年5月11日)

上野公園内をずっと歩くと東京芸大美術館があります.東日本大震災復興祈念,新潟県中越地震復興10年として「法隆寺−祈りとかたち」展が開催中です.先々月に仙台でもやってたやつですね.一部展示替えがあるということでまた見にきました.出品作品変更がありましたが,展示会としてのコンセプトはまったくおなじです.あらためて見ての印象もだいたいおなじだったのですが,法隆寺金堂壁画のすばらしさにあらためてこころうたれました.

美術館のとなりの陳列館というところで「別品の祈り−法隆寺金堂壁画−」展が併催されていて,これが予想外によかったのです.1949年に焼損した法隆寺旧金堂壁画を全面原寸大に復元した立体的展示は,さながら金堂のなかにいるような錯覚をあたえました.また最先端技術のスーパーハイビジョンプロジェクターによる法隆寺金堂をテーマとした超高精細映像も一見の価値がありました.これらはもちろん仙台ではなかった企画です.

法隆寺金堂壁画の損焼は,日本のみならず人類的にもおおきな文化的損失だったと思います.もしその時代にわたしが生きていたとしたら,自分のことでないのに呆然となったにちがいありません.しかしその後,金堂壁画の復元が国内のおおくの日本画家の共同作業としてなされてきました.さらに今日では最新技術によって焼失前の復元をこえた原画像の再現までなされるようになり,その美しさには驚嘆するほかありません.

人生は苦と仏教ではいいます.だからこそただ一心に坐禅をくみ,瞑想し,念仏や題目をとなえ,そして仏に祈ります.金堂壁画はまさに「祈りとかたち」なのです.鈴木空如の模写画のまえに立つと,たんなる模写をこえてその「祈り」が聴こえてくるようでした.ひとは金堂壁画の損焼という苦すらも仏教のさとりへの契機とすることができるのでしょうか.

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カウンタ 1852 (2014年5月11日より)