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胎児鏡下レーザー手術を経験して(手記)

胎児鏡下レーザー手術を経験して(手記)

                                (2013年2月16日)

5年前に双胎間輸血症候群にたいする胎児鏡下レーザー手術をうけられたAさんのご主人から,ひさしぶりにご連絡をいただきました.Aさんご夫妻はF県にお住まいですが,妊娠21週のとき地元の大学病院で双胎間輸血症候群の診断を受け,手術目的でご紹介いただき仙台までいらっしゃったかたです.

お元気なお子さんたちの写真とともに,手術前後の当時の思いをつづったご夫妻それぞれの手記をおくっていただきました.これから新たに双胎間輸血症候群のために紹介され,手術をうけるかどうかなやまれ,逡巡されるだろう多くのごカップルのために,特にご許可をいただいて手記と写真をここにアップさせていただきます.Aさんご夫妻にはあつくお礼をもうしあげます(室).

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胎児鏡下レーザー手術を経験して  【手術をうけられたAさんご本人から】

ホームページ拝見させていただきました.日々,育児に家事に仕事にと忙しい毎日を送っており,久しぶりに当時の思いや出来事を振り返る機会となりました.

双子の妊娠が発覚した時,初めての妊娠ということもあり,喜びよりも驚きと不安が先にたったことを覚えています.その際に一卵性ということで双胎間輸血症候群のリスクについて説明をされましたが,低い確率で発症するという言葉を信じ,自分の身に起こるなど思いもよらぬ思いで聞いていたのは事実です.

しかし,実際に双胎間輸血症候群と診断された時には焦りました.私の妊娠生活に問題があったのでは?と自分を責めたこともありました.つわりが酷くて寝てばかりいたせいか,一方ばかりを見て横向きに寝ていたせいか・・・などなど自分の中で原因を探っては後悔が後を絶ちませんでした。

その思いを泣きながら訴え、F大学病院のO先生を困惑させてたこともありました.でも、それは違いますよ.と,優しく教えてくださり,今後のことで親身に相談に乗っていただきました.そして,室月先生をご紹介してくださったのです.

妊娠21週とはいえ,周りの人から臨月と思われるくらいに大きいお腹でしたので,仙台までの移動は大変でした.急な入院で個室しか空きがなくて初めての入院で一人きり,不安と寂しさから落ち着かなかったのを覚えています.

手術前の説明は殆ど覚えていません.主人が一生懸命聞いてくれたり,勉強してくれてたことに感謝です.説明内容より,長引くつわりと不安で室月先生が説明してくださっている途中に嘔吐してしまったことはハッキリ覚えています.(すみませんでした.)

また.朝晩に看護師さんが心音を確認しに来てくれるのですが,ドクンドクンという元気な心音を聞いて安心する一方,今こんなにも元気に心音を聞かせてくれている2人の息子達を私は元気に産むことが出来るのだろうか,出来なかったらどうしよう,出産までにどちらかが消えてしまうかもしれないという妊娠初期の説明も思い出して,どちらかだけでも産むことができたらよいのか,今となってはそんなことはとても悲しすぎる,2人とも元気に産みたい・・・色んな思いが交錯して辛い気持ちになり,手術直前に折角4人部屋に移ってもカーテンを常に仕切って塞ぎこみ,涙を流しました.堪え切れなくて声を出して泣き,看護師さんに心配をお掛けしたこともありました.

手術当日は,自然と不安は消え,静かな気持ちで迎えることが出来ました。先生方、看護士の皆さんの親身な対応があったからこそだと思います.改めて感謝いたします.

手術直前,家族の不安をよそに手術室の様子を見回す余裕がありました.妊娠も初めてでしたが手術自体も初めての経験で少しドキドキしていました.そして,目を覚ました時には病室だったというわけです.

術後は,羊水を多量に抜いてもらったせいか今までの苦しさがなくなり,楽になりました.4人部屋で一緒に入院していた方達とも仲良くなり,おしゃべりが楽しかったし,食事やおやつも美味しくいただけました.何より,お腹の中で元気に成長している二人の息子達との妊娠生活が嬉しかったです.

その後,F大学病院にもどってからの管理入院では,名前を決めたりして妊娠生活を満喫しようと考えてましたが,お腹が大きくて苦しくて眠れなくて,それどころではありませんでした.そして,お腹周りの限界だったのでしょう,破水してしまいました.入院しているのに受け入れ先を探している?という焦る思いもありましたが,無事に近くの病院で産むことが出来て本当に良かったです.

入院中,張り止めの点滴やら安静やらですっかり筋肉もなくなっていた体,出産後トイレに行くことさえ間々ならず,ましてNICUに面会に行くことも困難でした.急な出産だったため,母乳を出すのも一苦労,2時間おきに搾乳するのが辛かったです.睡眠不足と搾乳の痛みの中で,名づけのタイムリミットにも迫られ,その時には既に双胎間輸血症候群が発症した頃をゆっくり思い出す余裕がなかったです.

退院後から現在に至るまで目まぐるしい毎日です.家でも外でも騒がしく,元気で健やかに成長しています.二人が仲良く遊んでる姿,元気に駆け回る姿,保育園へ通う姿,手をつないだり,上手に歯磨きしたり,夢中に話したり・・・

日常生活のあらゆる場面で幸せを感じずにはいられません.二人元気に生まれてきてくれて,本当に良かった.あの時,手術を受けるという選択は間違いではなかった,そう確信しています.手術を決断させてくれた家族,そして沢山の先生方,看護師の皆様のお陰です.本当に有難うございました.

 

 

【Aさんのご主人から】

F県の街の産科で,「双胎間輸血症候群の疑いがあるが,確定診断はここにある機械ではできないので,F大学病院を紹介する」と言われました.街の医院で治療できないのはともかく,確定できない病気があることをそれまで私は知りませんでした.

受診して双胎間輸血症候群と確定できました.このとき治療法として,連続的羊水除去と胎児鏡下胎盤吻合血管レーザー凝固術を教えていただきました.ただし胎児鏡下胎盤吻合血管レーザー凝固術は限られた病院でしかできないとのことでした.

夫婦の間では,21週は中絶するには大きくなっており,私たち自身が30台半ばで次の妊娠が望みにくいので,中絶はできるだけ避けたいとの思いで一致しました.

診察を受けたときはステージ1でしたが,出産までの期間も長いため,羊水除去では双胎間輸血症候群が進行して障害が残る可能性が高くなると考えました.胎児鏡下胎盤吻合血管レーザー凝固術は,手術そのもののリスクが羊水除去より高いものの,子どもに障害が残る可能性が低いことを教えていただきました.

夫婦での話し合いに加えてそれぞれの親の意見を聞いて,室月先生に胎児鏡下胎盤吻合血管レーザー凝固術をお願いすることに決めました.

4時間の手術後,まず手術そのものは成功したとの連絡をいただきました.可能性として最悪の結果も想定していたのでとても安堵したことを覚えています.

しかし翌日に,供血児の胎盤面積が小さく,また血流が正常になったことで血液量が増えて,逆に心臓に負担がかかっているとの診断を受けました.これは3日後ごろには改善しました.

順調に(だと思っていますが)回復して入院後3週間で退院しました.つわりがひどかった妊娠初期,双胎間輸血症候群といろいろな目に合いましたが,妊娠30週目まで安定期を満喫できました.

妊娠31週で,F大学病院に管理入院をしたところ,3日目に破水しました.同病院には1つしか保育器に空きがありませんでしたが,市内の綜合病院に2つの空きがあるとのことで,そちらに救急転送され,帝王切開で1762gと1474gのふたごが誕生しました.

ただ,新生児黄疸のため保育器の中で光線療法の青い光を浴びている2人を見ていると,正直生きているかどうか,障害が残らないかが心配事でした.

2ヶ月後に退院してから,特に最初の1ヶ月間ほどは昼夜関係なく,ステレオで1時間半ごとに泣く状態に疲労困憊でしたが,一方でこれまでの経緯を思えば幸せと感じていました.

今では4歳,あと2ヶ月で5歳になります.何の障害もなく,今の心配といえば交通事故をはじめとするケガでしょうか.2人でかけっこをして,平気で道路へ飛び出していきます.

またけんかが絶えません.身長は1mを超えて差は3mm,体重は17kgを超えて差は300gです.2人の体力がほとんど一緒のため,特に2日に1回はするけんかは最近激しさを増してきました.

それでも似た顔(親から見れば全く違うのですが…)で仲良く遊んでいると,見ず知らずの人までも「双子だ.かわいい!」と笑顔になってくれます.あの時の決断は間違っていなかったと感じています.

これからも楽しく育児していきます.

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カウンタ 5802(2013年2月17日より)