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検査開始半年後の雑感

検査開始半年後の雑感

                                  (室月 淳 2013年10月3日)

 

母体保護法との関連

母体保護法には人工妊娠中絶の要件として「胎児異常」という直接の文言がないため,経済条項を拡大解釈して対処しているのは周知のとおりです.この解釈には異論も存在し,刑法の堕胎罪に抵触する可能性も指摘されているため,長年にわたって公に議論されることがほとんどなく,対応は主治医の判断にゆだねられてきた側面があります.医療者同士が議論する機会すら多くありませんでした.社会的にも公的議論を回避してきたため,いまなお国民の議論形成もなされないままです.これまでどおり医療現場の裁量にまかせたままであれば,障害者福祉の拡充,充実もないまま,新型出生前診断が導入されて検査件数が増えていくだけです.今こそ国民的なコンセンサスをつくり,その成果を法律またはこれにかわるガイドラインに結びつける必要があります.

 

検査への実質的障壁

出生前検査を個人の自己決定にゆだねる一方で検査を助成対象とする北米,出生前検査を市場原理から切りはなし社会的,医療経済的な視点から導入しようとしているヨーロッパに比べ,日本では出生前診断,選択的中絶といった基本的な問題に関する公的な議論を避けたうえで,施行施設を認定という形で検査施行をコントロールしようとしています.その結果,検査施行医療機関の少なさ(予約がとりにくい),検査料金の高額さ(高所得者のみが検査を受けられる)の2点が検査希望にたいする実質的な障壁となり,検査施行数の急増を防いでいます.これは検査のマススクリーニング化を防ぐためと解釈されますが,このやりかたは社会的公正さからみて許されるものなのでしょうか.

 

妊娠中期人工妊娠中絶の現実

欧米でも日本でも共通して見逃されている問題があります(あるいはみなが意図的に目をつぶっている問題なのかもしれません).それは妊娠中期中絶,人工死産の悲惨さ,非人間性です.日本においてももちろんですが,自己決定を重視し尊重する欧米ですら,検査を受けるときに結果が異常であることはだいたいだれも想定していません。ですから結果が異常であったときのショックは非常に大きいといえます.出生前診断を専門にする医師のなかでpro-lifeの立場の人間がいないことは日本でも欧米でも共通していますが,それでも好んでおこなう医師はいないでしょう.医療スタッフにおいてはなおさらです.「中絶」そのものに関する体験談やレポートなどはときどきありますが,「選択的中絶」に関するものは国内外を問わずほとんどみることはありません(最近はネットで散見するようになってきましたが).

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カウンタ 1602(2013年10月3日より)