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ひとりで5人分の拝観料をはらった件

ひとりで5人分の拝観料をはらった件

                                     (2013年2月10日)

「仏像巡礼事典」(山川出版社)というほぼ新書サイズの本があります.日本で2500余件ある国宝・重要文化財の仏像のリストがのっていて,わたしの座右の書です.

30代のはじめころ,これらの仏像をすべてみようとおもいたって,拝観するたびにリストにチェックをいれるようになりました.いまためしに数えたみたところ,これまでに拝観できた仏像は484件ありました.国内の重文の仏像の2割ちかくになります.

死ぬまでにはすべて制覇したいものですが,実はどんなにがんばってもそれはかなわないことがわかっています.いわゆる「秘仏」の存在があるからです.これがほんとうに多いのですね.何年かに一度しかみせない,あるいは永久にみせない,それがその仏像の管理人の一存できまっています.別にそういった教義があるわけではないんです.

山形県寒河江にある慈恩寺は有名な古刹であり,平安から鎌倉にかけてのすぐれた仏像が多くあります.閑静な山ぞいに境内がひろがり,本堂をはじめとする諸堂や山門,三重塔などみるべき建物にもこと欠きません.観光客があまりこないためか,拝観料500円をはらうと案内と解説までしてくれます.仙台から遠くないこともあって,わたしが愛してやまないお寺のひとつです.

「事典」によると,その古刹には仏像30数体あって,そのうち重文が5件とあります.しかし実際にはほとんどが秘仏となっていて,通常では重文の仏像は1体しか拝観できません.明治の廃仏毀釈のときに諸仏を本堂の須弥壇のなかにかくして,それいらい秘仏となってしまったそうです.この百数十年で数回しか開帳していないと聞きましたが,こまってしまうのは次にいつ開帳するかがわからないことです.いちばん最近では山形県で国体(「べにばな国体」)がおこなわれた記念(笑)に開帳されたそうです.

いつぞや関東のある古寺にいったところ,ガイドブックにはいつでも拝観可とあって拝観料まで記載されていたのに,お寺からは5人以上の団体でなければだめだと門前払いをくわせられそうになりました.丸一日かけて山のなかまでやってきて,ここで短気をおこせばこちらの丸損になります.いろいろと交渉した結果,わたしひとりで5人分の拝観料をはらうことでみせてもらいました(笑).

結局のところ「秘仏」というのは「信仰」からくるものではまったくないんですね.生まれかわったらこんどは文化庁の仏像の調査官になりたいとねがっています.

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カウンタ 1065 (2013年2月10日より)