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「性染色体スクリーニング」という誤解

「性染色体スクリーニング」という誤解

                                   (室月 淳 2014年2月16日)

今年の4月からNIPTコンソーシアムが,NIPTの適応を拡大して性染色体のスクリーニングをはじめる予定というあやまったうわさが広まっているようです.わたしも複数の人間より問合せ(詰問?)をうけました.また知人の記者のかたからも,「クラインフェルターやターナーを日本でも始めるんじゃないか,という誤解は,確かに広がっています.複数のルートで聞きました」というメールをいただきました.この点はあきらかな誤解があるようなので説明をします.

性染色体異常(ターナー症候群やクラインフェルター症候群など)は選択的中絶の対象とはならないというのは,国内における臨床遺伝専門医のコンセンサスだろうと思います.ですからNIPTで性染色体をスクリーニングすることはあり得ません.

参考 出生前診断におけるご夫婦の「明らかに好ましくない選択」について考える

性染色体をNIPTでチェックすることを検討しているのは,厳密に以下のふたつの場合に限った場合です.

  • (1) 21水酸化酵素欠損症の児出生の既往がある妊婦

この先天異常は出生後に治療可能な疾患ですが,もし胎児が女児の場合,胎内で性器が男性化してしまいます.しかし母体にステロイドを投与することにより,その男性化を予防することができます(胎児治療).もちろん男児ではこの母体ステロイド投与は不要ですので,胎児治療のために妊娠早期に男女を判定することが必要になります.いままではCVSを行っていましたが,NIPTによってCVSの合併症のリスクがなくなることになります.

  • (2) デュシャンヌ型筋ジスなど伴性劣性遺伝病の出生前診断

伴性劣性遺伝病は女児には発症しないので,CVSによる遺伝子診断では,最初に判別を判定し,もし女児とわかればそこで検査を終了します.もし男児であれば原因遺伝子の検索に進むことになります.NIPTで性別判定ができれば,CVSの施行数を半分にすることができることになります.

こういった場合にNIPTを行うことにより,不必要なCVSをなくし,流産などの合併症を減らすことが可能と考えられるということです.ただしかなり特殊なケースですので,全国でもこの適応によって行われるNIPTはせいぜい年間10数件ということになるでしょう.こういったことをNIPTコンソーシアムとしてきちんと説明しているはずなのですが,それがうまく理解されず,中途半端な形で伝わっているようです.

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カウンタ 3416(2014年2月16日より)