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15.認知症ケア

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以下に示すのは利用者と家族に対する自分自身の日頃の看護活動を振り返るチェック項目です。各項目について普段行っている看護活動内容に照らし合わせて次の4つのうち1つを選んで回答してください。(必ずできている:4, おおむねできている:3, あまりできていない:2,全くできていない:1)

認知症ケア質指標

アセスメント(情報の収集、分析・判断)

1 訪問看護開始時には全ての利用者に対して認知症の可能性についてアセスメントし、可能性がある場合には、状況に応じMMSE、長谷川式スケールなどを使って認知機能を把握し記録する。
2 日常生活状況について定期的にアセスメントして記録する。
  • コミュニケーションの様子(理解力・表現力)
  • ADL(食事・排泄・活動・睡眠・清潔・衣生活)やIADL(電話・金銭管理・運転・家事など)
  • 生活環境における危険(転倒・火事・溺水のリスクなど)
  • 社会的交流の状況
  • 「その人らしい」生活がどの程度実現できているか(生活歴・以前の生活習慣をもとにアセスメント)
  • 訪問時の観察だけでなく日頃の状況をよく知る人に尋ねるなど総合的な情報収集を
  
3 認知症の症状について定期的にアセスメントして記録する。
  • 中核症状(記憶・見当識・実行機能など)・BPSD(徘徊、攻撃的行動、不潔行為など)
  • 内服管理状況(服薬状況・薬の購入・作用状況・副作用など)
  • 中核症状やBPSDに影響しうる身体・情緒状態(便秘・脱水・発熱・抑うつなど)
  
4 本人・家族の希望する生活やケアの方向性、解決したい問題点などを、可能な限り把握し記録する。
5 認知症の有無・種類・程度と今後の治療方針について、可能な限り医師(できれば専門医)から情報収集し記録する。

認知症の理解

6 認知症やその対処方法について家族(状況に応じ本人)にわかりやすく情報提供する。

コミュニケ-ション

7 本人の認知機能や視力・聴力に応じたコミュニケーション方法を探索し活用する。
  • 言葉にならない・できない訴えを表情や姿勢などから可能な限り把握する
  • 本人に理解できる言葉・方法や、安心できる表情・姿勢等を活用する
  

認知症症状の管理

8 認知症の初期症状(同じ物を買ってくる、水道水を止め忘れる、二つのことを同時にできないなど)が出現した時は、早期に専門医の診断・治療が受けられるよう勧め、手配する 。
  • 治療可能な認知機能障害を見逃さず治療に結びつける
  
9 認知症に関し適切な医療機関への受診と受診継続ができるよう援助する。
10 認知症の初期から、症状への対処方法を介護者に教え介護困難の予防に努める。
  • 家族のほかヘルパー等関係職種にも、状況に合わせて情報提供を心がける
  
11 BPSDの原因として身体の不快や体調不良がないか、訪問の都度確認し、体調を整えるためのケアを提供したり受診を勧めたりする (便秘・発熱・脱水その他)。
12 服薬中の場合は、適切に服薬できているか確認し、作用・副作用の有無と程度をモニタリングして、必要に応じて服薬変更等を医師と相談する。

日常生活への適応

13 認知症があっても最大限に機能発揮できるよう支援する/家族・関係職種に情報提供する。
  • 自分でできることは自分で行えるように見守り、できたことを認め自信・意欲を引き出す
  • 趣味や関心事を大切にし、役割を見つけて継続的に実施できるようにする
  • 本人の意思を可能な限り尊重し、納得するまで見守る、否定せず行動を共にするなどの対応を心がける
  • 障害された認知機能を補う工夫を試す(2つのことを同時にしない、トイレや自室に目印をつける、手順を決めるなど)
  
14 社会資源を最大限活用できるよう本人・家族・関係職種に働きかける。
  • 訪問介護、デイサ-ビス、デイケア、訪問入浴、福祉用具の購入・貸与、緊急通報装置、徘徊感知器、住宅改修、介護用品、福祉タクシ-、ボランティア、後見人の紹介など
  
15 認知機能障害等に応じ、ADL・IADL支援を多様に工夫する/家族・関係職種に情報提供する。常識にとらわれずうまくゆく方法を探索する。
  • 食事:手でつまめる食べ物にする、土の代わりにコーヒー殻で植物を植える、など
  • 排泄:便秘を予防する。適切に排泄できる方法を工夫する
  • 活動:散歩・外出もできるようにする。転倒してもけがをしないベッド・床材等を考える
  • 睡眠:日中の活動性を高め、夜間良眠を可能な限り維持する
  • 清潔・衣生活:入浴・歯磨き・着替えを工夫する
  • 家事:手順を決めて混乱しないで実施できるように声をかける。火の元に注意する。など
  • 金銭管理:多額の金銭を身近に置かない。など
  

安全・安楽の確保

16 快適な環境(室温、湿度、清潔など)が保たれるように配慮し、危険を排除する(カーペット、夜間の照明、鏡やガラス、火の元など)。
17 認知機能障害による事故の可能性(攻撃的行動、火事、誤嚥、感染、褥瘡、転倒、転落、骨折、虐待、火傷など)を常に念頭に置き、予防的に関わる。
18 医療器具を使用することによる事故の予防に努める。
  • 尿道カテーテル・点滴・PEG等の使用を最小限にするよう医師と相談する
  • 内服は回数を減らす、不要な薬剤が継続されていないか定期的に確認するなどして管理しやすくする
  

社会との交流の確保・地域ケアの体制作り

19 社会的なつながりを保ち、近所づきあい、仲間作り、認知症の会、趣味の会、デイケア、デイサ-ビスなどへ参加できるように援助する。
20 必要に応じ、地域住民が認知症を受け入れ、声かけや見守りなどが必要時にできるように働きかける。
21 ケアマネジャーを中心として、関係機関・職種とチームで取り組める体制づくりができるように働きかけ、協力する。

フォローアップ

22 実施したケアについて、期限を決めて、目標の達成度を評価し、状況に応じてケア計画を変更する。

関連書籍

高齢者訪問看護の質指標

―ベストプラクティスを目指して―

日本看護協会出版社

ISBN-10: 4818013404

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