11.慢性疼痛へのケア
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以下に示すのは利用者と家族に対する自分自身の日頃の看護活動を振り返るチェック項目です。各項目について普段行っている看護活動内容に照らし合わせて次の4つのうち1つを選んで回答してください。(必ずできている:4, おおむねできている:3, あまりできていない:2,全くできていない:1)
慢性疼痛へのケア質指標
アセスメント
    
    
    | 1 | 
    利用者の生活状況を把握する際には、慢性的な痛みが生じている可能性を常に考慮する。 | 
    
    
    | 2 | 
    利用者が痛みの体験を表現できるよう支援しながら、痛みに関する訴え(痛みの有無や強さ、性状、頻度など)を収集する。その際、高齢者は、様々な理由で痛みを自ら訴えてこない可能性があることを考慮する。 | 
    
    
    | 3 | 
    痛みの訴えを聴取すると同時に、以下のような客観的な情報の収集を行う。
     
     - 動くときにしかめ面をする、体をかばう、顔面紅潮、発汗など
 
     - ケアを拒否する、ケア時に大声をだす、怒る
 
     - 痛みと関係した(関係の疑われる)抑うつ傾向やひきこもり、ADLの低下、拒食、不眠について など
 
      
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    | 4 | 
    失語症や認知機能の低下などにより、痛みの訴えが困難な利用者には、①今現在、痛みがあるかどうか尋ねてみる、②家族や介護者に尋ねる、③痛みによる行動の観察尺度(日本語版アビー痛みスケール、Doloplusなど)の測定結果などによりアセスメントを行う。 | 
    
    
    | 5 | 
    〈痛みがある、又は痛みが生じている可能性がある場合〉痛みの原因とタイプを明らかにするために、以下の項目を検討する。
     
     - 痛みの部位、性質(ずきずき、びりびりなど)、変動・増減させる要因など
 
     - 神経障害性疼痛のスクリーニングのための尺度の結果
 
     - 痛みがある部位の状態(腫脹、発赤、冷感など)
 
     - 痛みの原因として考えられる疾患や状況(関節炎、関節拘縮、転倒、圧迫など)
 
     - 痛みへの治療、針灸、マッサージなどや自己対処の方法
 
     - 生活パターン、環境など	
 
      
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    | 6 | 
    痛みによる影響とその変化を検討する。
     
     - 食事、睡眠、活動性の低下
 
     - 抑うつ傾向、不安など精神状態の変化
 
     - 社会生活への影響
 
     - ドクターショッピング
 
     - 霊的な影響、スピリチュアルペイン(例えば、自己の存在意義へ影響:「死んだ方がましだ」などの訴え)など
 
      
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    | 7 | 
    利用者やその家族が、生活の中で痛みの状況や治療などについてどのように考えているか(痛みの経験の意味、要望など)を把握する。 | 
    
    
    | 8 | 
    痛みの訴えに変化があった場合には、骨折等急性病変や慢性的な疾患の急性増悪の可能性を考慮して、受診や医師への報告の必要性を判断する。 | 
    
    
    | 9 | 
    身体要因以外に痛みに影響する以下の心理・社会的・霊的要因も考慮する。
     
     - 家族関係上の問題と痛みとの関係
 
     - 生活上の楽しみ
 
     - 社会生活との関連など
 
      
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    | 10 | 
    痛みに対して利用者および介護者が独自に行っている対処方法(服薬・湿布剤、OTC:市販薬、罨法、マッサージ、漢方薬など)とその効果を把握する。 | 
    
    
    | 11 | 
    痛みの原因やタイプ、治療による痛みの緩和の程度・可能性、機能向上や疼痛管理の方向性などについて、医師や理学療法士など関係する他職種からも情報を得る。 | 
    
    
    | 12 | 
    痛みに対する介入は、痛みの原因やタイプ、頻度、ADL、利用者の期待などを包括的に考慮して計画する。その場合、看護職だけではなく、利用者、その家族、多職種者を交えて計画することが望ましい。	 | 
    
    
利用者・家族のセルフケア能力の育成
    
    
    | 13 | 
    利用者・家族、関係職種と話し合い、痛みのコントロールの目標を具体的な日常生活上の行動の形で設定する。(部屋の中をひとりで動けるようになる、マンションの下まで郵便を取りにいけるなど) | 
    
    
    | 14 | 
    痛みの状況や治療や対処方法について、利用者・家族の理解力に応じた説明を行う。その際、その内容をどのように理解したか確認する。 | 
    
    
    | 15 | 
    痛みを完全に取り去ることが難しい状況では、痛みの強さのみに焦点を当てるのではなく、ADLや社会生活の向上に目を向けることができるように支援する。 | 
    
    
    | 16 | 
    痛みへのセルフケア能力の獲得については、利用者や家族の希望を考慮するとともに、利用者・家族にとって実施可能な方法を選択し、長期的に支援する。 | 
    
    
    | 17 | 
    利用者・家族と共に痛みを増強させる生活様式を検討し、利用可能な範囲で変更したり工夫したりするよう働きかける。
     
     - 正座、畳での生活
 
     - 重い荷物を手で運ぶ
 
     - 自助具(手すりや杖等)を利用することへの抵抗
 
     - 運動習慣など
 
      
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    | 18 | 
    痛みを引き起こす動作に対しては、利用者・家族とともに痛みを引き起こさない身体の動かし方、移動方法を検討し、実施または指導する。そのために、補助具や家具の利用、PTやOTによる支援、サービス機関の利用等を検討する。
     
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    | 19 | 
    痛みに対し、身体を動かしたりストレッチをすることなどによる利点があることを説明し、可能な範囲で実施できるよう指導する。生活の中で身体を動かす習慣をつけたり、軽い運動を継続的に実施したりするよう働きかける。慢性的な痛みのある利用者は、抑うつ傾向となり活動性が低下することにより、痛みが悪化・慢性化する可能性があることに考慮する。 | 
    
    
    | 20 | 
    運動を勧める場合には、運動の効果が最大限に、弊害が最小限になる方法を工夫し、指導する。
     
     - 痛みの原因を悪化させない内容を工夫する
 
     - 運動前に温める、運動後に冷やすまたは湿布をする など
 
      
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    | 21 | 
    痛みに関し、医師や関係職種との効果的なコミュニケーションが可能となるよう助言・支援する。 | 
    
    
薬剤による痛みのコントロール
    
    
    | 22 | 
    痛みに対して処方されている薬剤について、以下の内容を利用者・家族から把握し、痛みの強さと服用との関連を検討する。必要であれば、薬を適切に服用し最大の鎮痛効果を得るために、服薬確認、服薬方法の工夫などを相談する。
     
     - 処方されている薬剤をどのように服用しているか
 
     - 服用時間、量
 
     - 期待される鎮痛効果が得られているか
 
     - 薬剤の服用に関して困っていること(副作用など) など
 
      
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    | 23 | 
    薬剤の服用状況と痛みのコントロール状況を踏まえ、必要に応じて主治医と相談する、または相談を勧める。
     
     - 痛みのコントロールが十分でない場合
 
     - 薬剤の服用が難しい場合(薬剤の形状・服薬時間・服薬回数など) など
 
      
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    | 24 | 
    薬剤による副作用を注意深く観察し、発見した場合はすみやかに処方医に報告し対処法を相談する。
     
     - アセトアミノフェンでは、肝機能障害(だるさ、血液検査データなど)に注意する
 
     - NSAIDsでは、消化管潰瘍、血小板減少、高血圧、腎機能障害などの既往を考慮し、定期的に新たな症状の有無を確認する
 
     - 鎮痛補助剤では、抗うつ薬の口渇、めまい、振戦など、抗けいれん薬の眠気、ふらつき、体重増加などに注意する
 
     - 麻薬性鎮痛薬では、呼吸機能障害(呼吸数の減少、ただし過剰投与にならない限り頻度は少ない)、便秘の既往を考慮し、眠気(眠気が強すぎる時には不適切な投与量とされている)、嘔気・嘔吐の出現または持続などと合わせ、定期的に新たな症状の有無を確認する
 
     - 鎮痛薬と他の治療薬との相互作用に注意する  など
 
      
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精神的ケアによる痛みのコントロール
    
    
    | 25 | 
    利用者に痛みがあること、苦痛があることを受け止め、共感的な態度を示す。 | 
    
    
    | 26 | 
    痛みの今後の状況や対処方法について不安が強い場合は、本人・家族が理解できるような説明を工夫し、不安の軽減に努める。 | 
    
    
    | 27 | 
    痛みによる心理的ストレスが強い場合は、ストレスの原因を探りそれを緩和する方法を本人・家族とともに検討する。 | 
    
    
    | 28 | 
    痛みの軽減・消失のみに意識を集中させるのではなく、対人関係の維持、楽しみをみつける、可能な役割の継続など、利用者が社会生活を維持しいきがいとなるようなことが行えるように働きかける。 | 
    
    
多職種間の連携促進
    
    
    | 29 | 
    利用者・家族の了承を得て在宅ケアチーム間で情報交換し、効果的なケア提供体制を整える。
     
     - 医師や薬剤師など、より効果的な薬物療法や治療の可能性について検討する
 
     - OT、PT、介護職者と痛みの少ない動き方や移動などのADL動作の指導や筋力の維持・向上に向けた運動療法などについて検討する
 
     - 介護支援専門員と、住宅改修や機器のレンタル、各種サービスの利用、介護職への痛みケア方法の周知などについて相談する
 
     - 栄養士やSTと食事内容や方法について検討する  など
 
      
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    | 30 | 
    多職種間での情報共有や介入への評価のため、利用者の認知機能・身体機能などを考慮して選択した痛みの強さを測定するためのスケール(尺度)を共有し、毎回同じものを用いるようにする。 | 
    
    
評価・フォローアップ
    
    
    | 31 | 
    痛みのある利用者に対しては、実施したケアの効果としての痛みの強さやADLや社会生活の変化を訪問ごとに確認する。 | 
    
    
    | 32 | 
    期限を決め、実施したケアの効果を下記の観点から評価し、状況により介入計画を修正する。
     
     - 利用者の痛みの強さ、持続時間、発生回数
 
     - ADL動作
 
     - 社会的活動
 
     - 精神的安寧 など
 
      
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