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8.転倒予防

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以下に示すのは利用者と家族に対する自分自身の日頃の看護活動を振り返るチェック項目です。各項目について普段行っている看護活動内容に照らし合わせて次の4つのうち1つを選んで回答してください。(必ずできている:4, おおむねできている:3, あまりできていない:2,全くできていない:1)

転倒予防質指標

転倒リスクアセスメント

1 転倒リスクアセスメント:訪問看護を開始する際には、利用者・家族員及び介護支援専門員等からの情報収集により、転倒リスクをアセスメントし、結果を記録する。(アセスメント項目は別紙参照)
2 転倒リスク再アセスメント:利用者にADLや身体機能の変化、疾患の悪化、転倒を起した場合には転倒リスクの再アセスメントを行う。

生活環境の整備

3 生活環境の状況に合わせて環境整備、住宅改修等の転倒予防に関する援助を行う。
  • 自室およびベッド周囲の環境整備、必要ならば手すりの装着、ベッド柵の装着等身体動作が安定するよう生活環境に対する支援を行う
  • 本人の足元が安定するよう動線上から障害物を解消するように整理整頓を行う
  • スリッパや滑りやすい靴下を使用している場合は、裸足での歩行やルームシューズなどの使用の検討を行う
  • 段差や階段には視覚的にわかりやすいように目印や間接照明器具を置くなどを工夫する
  • 住宅改修が必要な段差(玄関、敷居、浴槽、食堂、床面の段差)、滑りやすさ(玄関、浴室、台所、脱衣室、台所、マットカーペット)、障害物(電気コード)、照明(夜間のトイレ、廊下の照明)に関して、家族の住居に対する考え方等も含めて介護支援専門員と検討する
  • 在宅酸素療法、膀胱留置カテーテルなどによる転倒を予防するためにチューブ類の固定などのを行う
  • 介護保険の居宅介護(予防)住宅改修費給付および住宅設備改修給付事業等の社会資源の活用を検討する
  

セルフケアと家族指導

4 転倒予防の必要性を理解し、転倒リスクに対して本人・家族が自分たちで実施できるように指導する。
  • 日常生活動作に転倒につながる動作の確認、より安全な歩行移動などの動作について指導を行う
  • 健康維持のためのセルフケアの援助、体調不良時には休憩したり、無理をしないなどの対処に関する指導を行う
  • 可能な範囲で生活環境を整えて安全に過ごすことができるように本人家族とともに生活環境の確認、安全な生活の必要性を自分たちで整備できるように指導を行う
  

歩行・移動障害(歩行補助具の使用も含む)

5 移動障害・歩行補助具使用に関連した予防するための援助を行う。
  • ベッドから車椅子へ(車椅子からトイレ)の移乗動作に関する指導を家族およびヘルパーに行う。特に家族が高齢であったり、利用者対して介護者の体格が劣る場合などは、転倒を予防するための移動支援バーや福祉器具の使用、ヘルパーの介助を勧める
  • 関節可動域訓練、起居移動動作訓練(座位訓練、立ち上がり訓練、歩行訓練)に関する指導を家族およびヘルパーに行う
  • 日常生活動作の困難な部分を補うために柵、手すりの設置、段差滑りの解消を検討する
  • 歩行補助具の使用を検討し、適切な使用方法を指導する
  • リハビリテーションのために訪問リハビリテーション、通所リハビリテーション、移乗動作の介助のために通所介護等の介護サービス導入を検討する
  • 理学療法士作業療法士と連携して歩行移動障害に関する指導援助を行う
  

生活リズムの調整・運動習慣の維持

6 生活リズムの調整・運動習慣の維持(日常生活の運動機能改善):日常生活での運動機能が改善するようデイケア、ホームヘルパーなどの介護サービスの利用を検討する。
7 生活リズムの調整・運動習慣の維持(生活リズム):昼夜生活リズムを整えるために午前中に外出したり、散歩、体操などを取り入れる。
8 生活リズムの調整・運動習慣の維持(リハビリテーションなど):筋力、バランス機能、歩行機能、移乗動作の低下等による転倒を予防するためのリハビリテーション、適切な運動、転倒予防体操を指導する。
  • 本人の身体状況に合わせたADL訓練(座位訓練、立位訓練、立ち上がり動作、歩行動作訓練)を行う
  • 本人の身体状況に合わせた転倒予防体操(椅子を使用した大腿四頭筋、下腿三頭筋の運動、バランス訓練として片足立ち、立位のバランス訓練)、足指の運動等の指導を行う
  • 理学療法士作業療法士と連携して歩行移動障害に関する指導援助を行う
  

排泄障害

9 排泄障害に関連した転倒を予防するための援助を行う・ 本人家族に排泄に関連した転倒が多いことを説明し、排泄方法は、介護者の援助見守りのもとで行うか、本人が自力で実施するか介助の方法を検討する。
  • 体調不良時にはいつもより排泄援助が必要かもしれないと家族に説明する
  • 排泄場所や排泄動作に転倒の危険性がないかを確認する
  • 転倒の可能性のある場合には、手すりの位置、すべり止めのマットの使用を検討する
  • 尿器の適切な使用方法と保管の位置などを本人のADLなどに合わた排泄方法を検討する
  • 排尿機能が低下傾向で尿失禁に関連した転倒の場合には、早期に治療や失禁に関する援助を行う
  • 排尿パターンを把握し、定期的な排泄やトイレ誘導を行うよう本人・ 家族と相談し、排泄のスケジュールを検討する
  • 切迫性尿失禁の場合には骨盤底筋訓練なども検討する
  

認知症

10 認知症の症状に関連した転倒を予防するための援助を行う。
  • 自宅および活動範囲における生活環境における段差、障害物、転倒の原因となる履物(スリッパなど)などの危険物をできるだけ除去し、安全に生活できる環境整備
  • 興奮、不穏徘徊など転倒の原因となる認知症の症状を引き起こす身体的苦痛、疼痛の除去
  • 興奮不穏徘徊などの原因となる日常生活のストレスをできるだけ緩和したり、安心感を得られるような検討
  • 夜間の睡眠時間が睡眠の質が改善させるように日中は利用者に合わせた活動や午前中に日光浴をそするなど日常生活リズムの調整
  

パーキンソン病およびパーキンソニズム

11 パーキンソン病およびパーキンソニズムに関連した転倒を予防するためのリハビリテーション、歩行訓練、バランス訓練、状況に合わせた日常生活の支援を行う。
  • 歩行訓練:リズムに合わせて歩行するとすくみ足、小股歩行がスムーズになる。歩行時に1,2と声を掛ける。つま先が上がるように意識して歩行するように訓練を行う
  • 寝返り、起き上がり訓練、膝立ち、立位における立ち直り訓練等、関節可動域(ROM)訓練、日常生活動作(ADL)訓練等のリハビリテーションを行う
  • 不随意運動、wearing-off現象、on-off現象の合わせた日常生活の援助の検討する
  

起立性低血圧、高血圧

12 起立性低血圧、高血圧などの血圧の変動に関連した転倒を予防するための定期的な血圧測定、セルフケアに関する指導を行う。
  • 定期的な血圧測定
  • 降圧剤内服に関するふらつきなどの副作用の観察確認
  • 薬剤(抗うつ薬、降圧剤、排尿障害調節薬)の服用として起立性低血圧を起している可能性のある場合には主治医と相談
  • 起立性低血圧の予防として、夜間および早朝に就寝中、起床から立ち上がる際には下肢の屈曲運動をしてから起き上がるよう移動動作の指導
  

骨粗鬆症

13 転倒時の骨折を予防するために骨粗鬆症のための栄養指導、運動指導、セルフケアに関する指導を行う。必要があれば家族に指導を行う。
  • 栄養指導:カルシウムを含んだ食品と献立、調理方法に関する指導
  • 運動指導:利用者の体力に合せて運動指導(歩行訓練、階段の昇降運動、大腿四頭筋強化訓練、散歩)
  • 日光浴:ビタミンDの活性化の必要性と外出の頻度に関する指導
  • 腰背部痛を軽減するように姿勢、動作に関する指導、腰痛体操(背筋、腹筋の強化)の指導、コルセットの着用
  

白内障および視力低下

14 白内障および視力低下による転倒を予防する。
  • 夜間の照明、特にトイレまでの移動範囲の照明の検討
  • 必要な場合には眼科受診、眼鏡等の医療器具の使用の検討
  • 本人の健康状態に合わせた生活環境の改善、住宅改造など
  

内服薬の副作用

15 内服薬の副作用に関連する転倒を予防する。
  • めまい、ふらつき、起立性低血圧など転倒の原因となる症状を確認する
  • 新しい内服薬を開始時や転倒の可能性の高い内服薬を服用していてめまいふらつき、起立性低血圧のある場合は主治医に相談する
  • 睡眠薬など内服する場合は、内服の時間や副作用の確認、内服薬の使用を軽減させるような睡眠に関する援助、生活リズムに関する支援、活動や午前中の日光浴など
  

フットケア

16 足および爪の障害に関連する転倒を予防するためのフットケアを行う。
  • 下肢の創傷や潰瘍に関する処置を行う
  • 爪切り、足浴等の清潔に関する援助を行う
  • 白癬、潰瘍など爪や皮膚の障害に専門治療が必要な場合は主治医と相談して皮膚科、形成外科の受診を検討する
  

転倒に対する不安・恐怖感

17 転倒に対する恐怖や不安の原因や理由を明らかに、それによる活動制限や閉じこもりを改善のための援助を行う。
  • 転倒に関する心理的な恐怖不安に関するカウンセリング、家族に日常生活で避けている動作や閉じこもり状況にあるかアセスメント
  • 転倒の恐怖不安を感じる動作について、身体が安定するように動作を改善する方法やリハビリテーションの検討
  • 骨折などの不安に対してはヒッププロテクター、歩行動作が安定しない場合には歩行補助具の使用
  • 足の清潔の保持、適切な靴の使用など足の外傷予防など日常生活に関する本人と家族の指導を行う
  

家族の介護負担の放任・介護負担

18 家族の介護負担・介護の放任のために転倒の可能性のある利用者に対する援助を行う。
  • 家族に対して介護方法、健康問題などの相談する
  • 介護支援専門員、保健師、介護職、医師等関係職種と他の在宅サービス利用を検討(ホームヘルプサービス、通所サービス、ショートスティ、施設入所等など)する
  • 家族に対する移乗動作の指導および移動に関する福祉機器などに関する指導を行う
  • 家族が高齢であったり、独居など必要な場合にはホームヘルパー導入を検討する
  

多職種連携によるアプローチ

19 転倒予防のケアに関して、本人や介護家族をはじめ関係する介護支援専門員、介護職、保健師、理学療法士、作業療法士、医師等の他職種とチームで取り組める体制づくりを行う。

転倒時のケア

20 転倒時のケア(連絡システム):転倒時の連絡システムを家族と共に確認する。
  • 転倒時は訪問看護ステーションに連絡するように依頼、転倒などの連絡があった場合にできるだけ早く訪問する
  • 大腿骨頸部骨折、上腕骨骨折等骨折の可能性のある場合には、適切な医療機関の受診するように検討する
  • 意識消失を伴う脳卒中発作、心臓発作等重篤な場合には、ただちに救急車の要請を行い、早急に適切な医療に関する支援を行う
  
21 転倒時のケア(ケアプランの修正):利用者が転倒に至った状況を分析するとともに、転倒リスクを再アセスメントし、再転倒予防のためのケアプランを修正する。(アセスメント項目は別紙参照)

フォローアップ

22 修正したケアプランに関して期限を決めて、別紙の転倒リスクアセスメントシートによる評価を行う。

関連書籍

高齢者訪問看護の質指標

―ベストプラクティスを目指して―

日本看護協会出版社

ISBN-10: 4818013404

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