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12.終末期ケア

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以下に示すのは利用者と家族に対する自分自身の日頃の看護活動を振り返るチェック項目です。各項目について普段行っている看護活動内容に照らし合わせて次の4つのうち1つを選んで回答してください。(必ずできている:4, おおむねできている:3, あまりできていない:2,全くできていない:1)

終末期ケア質指標

アセスメント 終末期であることの理解

1 身体症状や意識状態の変化から、ADLの低下、食事摂取量の低下、活気の低下、検査データ等より、終末期の始まりを捉える。
2 自宅での看取りを進められるか以下の点を確認する。また、意向の変更の可能性もあるので、状況に応じて適宜確認する。
  • 利用者本人の意思
  • 家族内での合意
  • 受ける医療の希望
  • 療養の場の選択
  • 医療体制(在宅医・訪問看護・ケアマネ等の受け入れ)
  

アセスメント 終末期の苦痛に関するアセスメント

3 トータルペインからみたアセスメント
  • 身体的な痛み:身体感覚的な痛みであり、身体的な原因による。痛み以外の症状、治療の副作用、不眠、慢性疲労等
  • 精神的な痛み:発病に関連した不安や恐れ、真実を知らされないために起こる疑念、進行する病状についてのいらだち、コミュニケーションの不足、家族や経済面についての悩み等
  • 社会的な痛み:収入の減少、社会的な地位や役割喪失、家族の問題などに関する苦悩
  • スピリチュアルな痛み:後悔の念、また自責の念や罪の感情のため深い苦悶に陥る状態、人間の魂の悩み等
  

アセスメント 看取りの体制

4 自宅での看取りに関する利用者本人の希望、家族の希望があるか確認する。
5 緊急時や死亡確認等の対応ができる医師および病院があるか確認する。
6 看取りまでに必要な人的、物的、経済的基盤を確認する。

[介入] 看取り体制の調整 (看取りまでに必要となる援助の予測的・計画的導入)

7 身体的苦痛緩和のための医療提供
  • 呼吸機能:酸素吸入器、吸引器
  • 疼痛等 :鎮痛剤、鎮静剤
  • 循環機能:補液、浮腫軽減のための利尿剤等
  • 排泄機能:緩下剤、浣腸
  • 主治医による往診の確保
  
8 身体的苦痛緩和のための看護提供
  • 訪問看護の確保
  • 安楽な体位 :介護用ベッド、褥瘡予防器具、寝具の選択
  • 循環体温管理:罨法用品
  • 清潔ケア  :清拭用清浄剤、清拭用物品
  • 排泄ケア  :ポータブルトイレ、パット、おむつ
  
9 介護負担軽減のためのサービス提供
  • 訪問介護
  • 訪問入浴
  • 地域のサービス(自治体独自のもの)
  • インフォーマルサポート(家族、親戚、近隣住民、友人等)
  
10 療養の場の変更への対応
  • 身体状況の変化により家族の意思も変わり得ることを念頭に置き、家族の療養の場選択の意思を確認する
  • 家族には療養の場の変更をすることが可能であることを説明
  

[介入] 末期特有の症状へのケア

11 疼痛
  • 疼痛部位・程度と薬剤の効果等から、疼痛緩和のケアの必要をアセスメントする
  • 緩和できていない場合、主治医との連携により、オピオイド等を用いた積極的疼痛緩和をはかる
  • 麻薬性鎮痛剤の投与に関する事項を確認し、適切に投与する
  
末期の疼痛コントロール方法の見直し(資料1)
  • 投与経路の変更
  • 投与量の換算
  • 他の症状との関連等を検討する
  
12 倦怠感
  • 浮腫、冷感、発熱等の症状、循環状態等から、投薬等の必要をアセスメントする
  • 体位変換、マッサージ、温罨法等を試み、軽減を図る
  • 緩和が図れない場合、主治医との連携により投薬等の医療処置を検討する
  
13 呼吸困難
  • 困難感、呼吸状態や酸素飽和度等から、酸素療法等の必要をアセスメントする
  • 安楽な体位の確保・スクイージング・痰の除去等を試み、軽減を図る
  • 緩和が図れない場合、主治医との連携により、酸素療法、痰の吸引、オピオイド等鎮静剤投与等の医療処置を検討する
  
14 食思不振
  • 口腔ケア
  • 好物を手の届くところに置いておく
  • 口当たりの良いゼリーやプリン、アイスクリームやシャーベットを勧める
  • 無理に食べなくても、味わい楽しみ程度でよいと本人や家族に伝える
  
15 排泄障害(便秘)
  • 腹部観察、オピオイド製剤、摂取量等から、排便処置等の必要をアセスメントする
  • オピオイド製剤使用には予防的に下剤を投与する
  • 緩和が図れない場合、主治医との連携により、浣腸や摘便等の処置を検討する
  
16 せん妄
  • 意識状態、鎮痛剤、呼吸困難等から、薬物療法等の必要をアセスメントする
  • 転倒転落予防のためのベッド周囲の安全、照明調節等の環境調整をし、声掛けや傾聴を試み、軽減を図る
  • 緩和が図れず、安全が得にくい場合、主治医との連携により、薬物療法等を検討する
  

[介入] 家族へのケア

17 死にゆく身体の変化の理解
  • 身体症状が変わっていくことが理解できるように説明する(資料2)
  • 主治医の診察判断による見通しを家族に説明する
  • 身体症状の緩和に家族がかかわることの効果、具体的接し方を説明する
    ・疼痛や倦怠感緩和のためのマッサージ
    ・心地よさを得るための罨法(温罨法・冷罨法)や清潔ケア(手浴・足浴)
    ・家族に対するせん妄理解のための促しと、せん妄予防のための声掛け・傾聴
    ・食事の工夫
  • 臨死期の身体症状への対応について説明する。
    ・喘鳴:痰の吸引で取れなくても、頭の位置を変えたりして対応し、苦痛症状がなければ無理に吸引を続けない
    ・意識低下:返答がなくなっても、声掛けやスキンシップで安心感を与える
    ・ 口唇乾燥:粘膜損傷にならないように、湿潤させる。濡れたガーゼや脱脂綿を使う
    ・冷感:回復することは難しいが、やけどを起こさないように温めたり、さすったりすることができる
  
18 家族介護の支持支援
  • 介護の身体的、精神的負担を捉え、負担軽減が必要かアセスメントする
  • 負担軽減が必要な場合の対応・ 家族や親せき、友人や近隣住民などの支援が可能であるか確認
    ・外部支援(訪問介護等)の導入
    ・ 訪問看護の回数・時間の調整
  • 家族の介護に対して労いの言葉かけや気遣いをし、負担感軽減に努める
  • 患者を取り巻く人々(親戚・友人)への連絡支援をする
  
19 予期悲嘆への関わり
  • 傍らで過ごせる時間の調整:利用者の意識状態の如何に関わらず、家族が落ちつて利用者の傍で過ごせる時間が持てるように家事や介護を調整する
  • 感情を吐露できる環境を提供する:差し迫った身内の死に際して抱く感情が表出できるよう環境を整える
  • 振り返りを促す言葉かけ:家族の歴史、過去、利用者との思い出の振り返りができるような言葉かけや場づくりをする
  • 的確な現状の受け止めの確認:死に逝く身体の変化の受け止めが楽観的、または悲観的になりすぎないよう、家族の受け止めを確認する
  

[介入] 看取り時の支援

20 別れを悲しむ場と時間をもてるように環境を整える。
21 死亡確認の補助として、必要に応じて以下のような内容を行う。
  • 医師への連絡
  • 死亡確認後の医療器具等の除去及び身体の整え
  
22 死亡後の対応、家族の望む死後の処置を確認する。
  • 死後の処置について確認して実施(家族も加わるか、誰が行うのか、衣服や身に着けるものなど)
  • 葬儀について確認して支援(土地の風習や習慣、宗教、葬儀社利用方法など)
  

[介入] 遺族ケア

23 利用者の死亡後、死による悲嘆の反応を確認しつつ、以下のような支援を行う。
  • 死亡後1か月後を目安にする:電話などにて遺族と話し、終末期の家族の介護に対して、ねぎらいの言葉をかける
  • 四十九日後:訪問にて遺族と面接し、死亡後の気持ちの変化、身体的な問題はないか、複雑性悲嘆の可能性の有無を確認し、遺族への支援今後の方針を決める
  • 介護等による心労での健康障害がみられる場合には、適切な治療および療養を受けられるよう促す。または、看護師による面接や専門家の支援を活用することを勧める
  

フォローアップ

24 チーム・スタッフ間で振り返り、検討をする。デスカンファレンスをする。

関連書籍

高齢者訪問看護の質指標

―ベストプラクティスを目指して―

日本看護協会出版社

ISBN-10: 4818013404

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