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6.睡眠障害へのケア

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以下に示すのは利用者と家族に対する自分自身の日頃の看護活動を振り返るチェック項目です。各項目について普段行っている看護活動内容に照らし合わせて次の4つのうち1つを選んで回答してください。(必ずできている:4, おおむねできている:3, あまりできていない:2,全くできていない:1)

睡眠障害へのケア質指標

アセスメント

1 利用者の生活状況を把握する際には、睡眠障害が生じている可能性を常に考慮する。
2 <睡眠に障害が生じている可能性がある場合>
利用者本人から、熟眠感や朝の目覚めの気分、日中の眠気等の睡眠の状態や悪夢を見る、夜中に頻繁に目覚めるなど睡眠中の状況について情報収集を行う。
3 利用者本人以外からも情報収集(睡眠の状態や歯ぎしりをする、うなされる、いびきをかく、呼吸が止まるように見える等睡眠中の利用者の状態など)を行う。
4 利用者や家族が、生活パターンの中で睡眠時間・就寝時刻についてどのように考えているか(希望、期待、要望など)を把握する。
5 <睡眠に障害が生じていることが把握できた場合>
睡眠障害が始まった時期を把握する、睡眠日誌をつけてもらう、あるいは睡眠状況を聴きとるなどして、以下の睡眠障害のタイプをアセスメントする。
  • 入眠障害
  • 再眠困難を伴う中途覚醒
  • 早朝覚醒
  • 熟眠感欠如(日中の眠気)
  • 身体症状によるもの
  • 心理的原因によるもの
  • 睡眠時無呼吸症候群の可能性  など
  
6 睡眠障害による生活への影響(日中ぼーっとしている、活動性が低い等)をアセスメントする。
7 利用者や家族の睡眠障害に対する問題意識(何とかしたい、仕方ない、問題ない等)を把握する。
8 睡眠障害に対して利用者または家族が何らかの対処方法(昼寝、寝酒、受診、服薬など)をとっているかを把握する。
9 睡眠障害(現在の対処方法を含む)に対する援助の必要性を判断する。
10 睡眠障害の原因を明らかするために、以下の項目についてアセスメントする。
  • 痛み・かゆみ・息苦しさ・頻尿等の睡眠障害に影響すると考えられる身体状況
  • 服用している薬剤・その服用状況及び睡眠障害への薬剤の影響
  • 生活パターン
  • 食事・飲酒・運動等の生活習慣
  • 生活環境(特に夜間)
  • ストレスの有無・不安等の心理状態
  • 日中の対人関係、社会的活動
  • 脳の器質的・機能的障害(脳血管障害、抑うつ状態など)による睡眠パターンの変化  など
  

[介入]痛み、かゆみ、息苦しさ、頻尿等の身体状況が睡眠に影響していると考えられる場合

11 睡眠に影響している身体状況の原因をアセスメントする。
12 睡眠に影響している身体状況に対処する方法として、以下のようなケアの効果や、実施の可能性を利用者、家族と共に検討し、適切ならば実施するまたは方法を指導する。または、家族や介護職に依頼するなど、実施できるように働きかける。
<痛み>
  • 痛みを軽減するために、湿布など貼用剤・鎮痛剤など内服薬の使用、温罨法・冷罨法、マッサージ
  • 入浴、足浴などによる緊張緩和等のケアを就寝前に実施
  
<かゆみ 皮膚の乾燥や皮膚掻痒症の疑いがある場合>
  • 保湿剤などの塗布薬、内服薬などの使用
  
<かゆみ 紙おむつのギャザーによるかゆみが考えられる場合>
  • 布おむつ使用など、ギャザーによる圧を取り除く工夫
  
<かゆみ 局所の循環不良によるかゆみが考えられる場合>
  • 布団の重みがかからないようにする(除圧)
  • マッサージを行う
  
<息苦しさ>
  • スクイージング、体位ドレナージ、マッサージなどにより、就寝前に充分に痰を排出できるようにする
  • 睡眠時の安楽な姿勢を考える
  • 加湿を充分に行う
  
<頻尿>
  • 夜間の排尿が最小限になるようにする
  
<頻尿 昼間の腎血流量を増やし排尿量と回数を増やすことが適切と考えられる場合>
  • 日中に臥床し足を挙上する時間を作る等の方法を、利用者・家族と共に考え、実施できるようにする
  
<頻尿 利尿剤の服用時間の調整、治療による尿意の調整(バルンカテーテルの使用など)が適切と考えられる場合>
  • 主治医に相談する、または主治医への相談を勧める
  
<四肢等に冷感がある、体が温まらない等の訴えがある場合>
就寝前に以下のような方法で身体あるいは寝具を温める。
  • 電気毛布、携帯用カイロ、ボアシーツ等温かいリネン類の使用
  • 入浴時間の変更(就寝予定2時間前)や足浴など部分浴の実施
  • 利用者自身でできる手足の運動、耳のマッサージ、深呼吸などの実施
  • 家族や介護職が行うマッサージの実施
  • 温かい飲み物の摂取  など
  

[介入]薬剤を使用している場合

13 処方されている薬剤について以下のことを利用者・家族から情報収集し、睡眠状況と服用との関連を検討する。必要であれば、服薬確認、服用方法の工夫などを行う。
  • 服用歴、処方されている薬剤を確実に服用しているか
  • 服用時刻、量
  • 夜間覚醒時の歩行状態・ふらつきの有無、便秘などの副作用
  • 薬剤の服用に関して困っていることはないか  など
  
14 睡眠に影響する副作用がある、多剤併用している、処方が重複している等、薬剤の調整が必要と考えられる場合は主治医に相談する、または主治医、専門医への相談を勧める。

[介入]昼夜逆転している場合

15 以下のような光刺激によりサーカディアンリズムを整える方法を考え、利用者・家族と共に工夫し、実施する。または、家族や介護職に依頼するなど実施できるように働きかける。
  • 朝目覚めたら、雨戸、カーテンを開ける
  • 午前中に積極的に日光浴をし、太陽の光を浴びる時間をつくる
  • 窓際にベッドを移動し、日中は太陽の光を感じられるようにする
  • 日中、部屋の中が暗くないように、電灯をつける
  • 夕方になったらだんだん明るさを落とし、夜は暗くする   など
  

[介入]睡眠に影響すると考えられる生活習慣がみられる場合

16 以下のような生活習慣上の特徴がある場合、睡眠に与える影響を利用者・家族に伝え、生活習慣などを整える可能性を共に検討し、適切であれば、実施できるように働きかける。または、利用者・家族に指導する。
<就寝直前に熱めの湯での入浴をしている場合>
  • 入浴時間の調整、または湯温の調整を行う
  •   
<日中の居眠り、午睡の時間が長い場合>
  • 日中の生活場所の工夫、身体活動量の増加など、刺激を増やす
  •   
<身体活動量の不足が考えられる場合>
  • 散歩や外出、リハビリ運動、入浴など、体を動かすことにつながるケアを取り入れる  など
  •   

[介入]明るさ、騒音、温度、臭気、害虫、または寝衣・寝具が不適切など何らかの環境因子が刺激となっている場合

17 刺激をなくす、または軽減する方法を考え、適切であれば、利用者・家族と共に実施する。

[介入]心理的ストレスが考えられる場合

18 心理的ストレスの原因を探り、ストレスを緩和する方法(深呼吸、筋弛緩法、アロマテラピー、自律訓練法など)を、利用者・家族と共に検討する。
19 対人関係保持、生きがいを見つける、可能な役割の継続など、社会生活の充実のために、長期的視点で働きかける。

[介入]抑うつ状態等が懸念される場合

20 医学的判断が必要かどうかを判断し、適切であれば、主治医もしくは専門医への相談を勧める。

[介入]家族に睡眠障害がみられる場合

21 家族の睡眠障害に対しても、可能な支援方法を検討し、適切ならば実施する。
22 家族の疲労度をアセスメントし、必要ならば、デイサービス、ショートステイ等の社会資源の利用や同居家族に限らないサポート資源を提案し、資源の活用ができるように、家族や介護支援専門員等に働きかける。

[フォローアップ]利用者・家族に何らかのケア方法を指導した場合

23 ケア方法ごとに、実施にあたって困難なことはないか、ケアの効果、利用者及び家族への影響を検討する。
24 睡眠障害への介入によると考えられる変化を以下の観点から期限を決めて評価し、状況により介入計画を修正する。
  • 睡眠時間
  • 入眠までの時間
  • 睡眠の継続時間
  • 熟眠感(すっきりした、よく眠れた、よく休んだ感覚)
  • 集中力がある
  • 利用者及び家族の生活リズムの確立  など
  
25 睡眠障害への介入による利用者の認識の変化(「苦痛が和らいだ」「この程度なら大丈夫」)を把握し、評価する。

[フォローアップ]利用者すべてに

26 睡眠に障害が生じている可能性を考えた生活状況のアセスメントを定期的に行い、看護記録に記載する。

関連書籍

高齢者訪問看護の質指標

―ベストプラクティスを目指して―

日本看護協会出版社

ISBN-10: 4818013404

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