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4.排尿ケア

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以下に示すのは利用者と家族に対する自分自身の日頃の看護活動を振り返るチェック項目です。各項目について普段行っている看護活動内容に照らし合わせて次の4つのうち1つを選んで回答してください。(必ずできている:4, おおむねできている:3, あまりできていない:2,全くできていない:1)

排尿ケア質指標

アセスメント

1 蓄尿または排尿について障害が生じている可能性がある利用者には、その原因を明確にするために、必要に応じ以下の項目等のアセスメントを行う。
  • 発熱、全身倦怠感の有無
  • 尿の色調の異常(褐色、赤色)、尿混濁の有無
  • 一定の書式等を用い、排尿や水分摂取量の記録日誌をつける
    (資料2参照:排尿時刻・排尿量・尿漏れの有無、飲水量、等)
    記録日数は、利用者や介護家族の協力が得られる範囲内で設定する。
    (できれば3日間、難しければ1日)
  • 排尿状態の観察
    (排尿痛、尿閉、頻尿、尿意切迫感、トイレまでに間に合わずもらしてしまう、咳やくしゃみ等腹部に力が加わる動作で尿が漏れる、尿が出にくい、排尿時間が長い、尿線の途絶、いきんで排尿する、残尿感、排尿後尿滴下、等の有無)
  • ADL(特に、下半身の更衣が自立できているかどうか)
  • 認知機能
  • 便秘・肥満・睡眠障害の有無
  • 一日の食事内容:特にアルコール・カフェインの摂取状況
  • 以下の現病歴や既往歴の有無:
    尿路感染症、腎疾患、泌尿器科系疾患や手術、意識障害、脳神経系疾患、呼吸器系疾患、心疾患、整形外科系疾患や手術、高血圧、糖尿病、直腸や子宮等の骨盤内の手術、分娩、肥満、精神障害、等
  • 下部尿路症状を起こす可能性のある薬剤の使用の有無
    尿が出にくくなる薬剤:風邪薬、パーキンソン病治療薬、抗コリン薬、抗アレルギー薬、睡眠薬、抗うつ薬、向精神薬
  
2 尿路感染症、血尿、尿量の異常が疑われる場合、排尿痛がある場合には、必ず主治医に報告する。
3 高齢者訪問看護の基本と前述1におけるアセスメントの結果、おおよその下部尿路症状(高齢者に多くみられる尿失禁、頻尿)を把握する。その際の考え方として、①まず機能性尿失禁の有無を把握し、②さらに下部尿路機能の異常がみられる場合には、蓄尿時か排尿時かに分け、さらに膀胱と尿道の機能を別々に評価すると把握しやすい(資料3参照)。
4 排尿用具(おむつやパッドを含む)の使用の有無、使用している場合にはそれらの種類や一日の使用状況を把握する。
5 カテーテルを使用している利用者は、カテーテルが挿入された状況や理由を確認する。
6 在宅におけるトイレの環境(和式か洋式か、移動距離、段差の有無、移動時の障害となりそうな物、等)を把握し、援助の必要性を判断する。
7 入浴等清潔保持の状況と泌尿器周辺の皮膚の状態を把握し、援助の必要性を判断する。
8 下部尿路症状のタイプと今後のケア方針について、主治医と相談する。

一般的なケア

9 下部尿路症状を悪化させる要因として便秘、肥満、睡眠障害、アルコール・カフェインの多量摂取、薬物が考えられる場合、それぞれの要因に対処する。
10 前述9の対処で改善がみられない場合には、主治医への相談を考慮し、適切ならば実施する。
11 失禁後すぐに清潔ケアが行えるように、介護家族や他職種とケア方法や頻度を相談する。
12 利用者のADLや介護条件、居住環境に合わせて排尿用具が選択できるように、利用者・家族や他職種等に働きかける。
13 排尿用具・おむつ・パッドの選択には以下を考慮する。
  • 利用者の排泄状態
    (一回の失禁量、排泄後の対処法、介助の必要性、交代頻度、便失禁の有無)
  • ADL
  • 介護力
  • 経済状況
  
14 利用者や家族が適切な排尿用具やおむつ・パッドを選択できるように、パンフレット・試供品等の活用を工夫する。
15 医療費控除の対象となる利用者には、その手続きの説明を行う。
16 下部尿路症状のために飲水量を制限していないか確認する。制限している場合には、尿量や尿性状・疾患・食事摂取量・活動量等を考慮し、一日の水分摂取量の目標を設定する(一般に、食事による水分を除いて1,000~1,500mlが推奨されている)。
17 下部尿路症状をもつ利用者の苦痛、その対応に追われている利用者と介護家族の労を十分にねぎらう。

尿道カテーテルが挿入されている場合のケア

18 カテーテルを使用する根拠を看護記録に記載する
(例:尿意がない、褥瘡がある、夜間頻尿で眠れない、利用者は重症な身体的または精神的障害のため介入の代替手段がない、代替の介入を望まない、等)
19 尿量や尿性状・疾患・食事摂取量・活動量等を考慮し、一日の水分摂取量の目標を設定する(一般に、食事による水分を除いて1,000~1,500mlが推奨されている)。
20 尿量および尿の性状、発熱の有無等のアセスメントを行い、異常時には主治医へ相談する。
21 カテーテルの交換は、材質の特性に合わせて2~4週間ごとに行う。ただし、尿の性状に異常がある場合は、必要に応じ、より早期にカテーテルを交換することも考慮する。
22 カテーテルによる水疱等の皮膚障害を予防する(例えば、絆創膏を使用しない、カテーテルに布をまきつける、おむつ等で固定する、等)。
23 陰部洗浄の頻度は、疾患、泌尿器周辺の皮膚状態、褥瘡の有無、介護状況や介護サービスの利用状況等を考慮したうえで設定する(一般に、毎日行うことが推奨されている)。
24 家族および介護者への指導は、以下の項目を含む。
  • 尿量、尿の性状、尿混濁の有無、等の観察
  • 不用意な接続部の開閉をしない
  • カテーテルの圧迫や屈曲がないか注意する
  • 蓄尿バッグを膀胱の高さより低くする
  • 臥床患者には制限範囲内で積極的な体位変換を行う
  • 体位変換時にカテーテルを引っ掛けないように注意する
  • 移動時に尿を逆流させないようにする
  • 状況に応じ、移動時に携帯の方法を工夫する
    (蓄尿バッグを首に下げ両手が空くようにする、蓄尿バッグをカバーし外から見えないように配慮する、等)
  

高齢者によくみられる症状別のケア

25 腹圧性尿失禁の場合には、以下の実施を検討し、適切ならば利用者・家族に指導する。
  • 骨盤底筋訓練
  • 骨盤底筋訓練の効果が見られない場合(目安は2~3ヶ月程度とされている)、または薬物や外科的手術等が原因と考えられる場合、主治医をはじめ専門医への相談を考慮し、適切ならば勧める
  • 利用者に、以下の内容等の指導を行う(お腹に力が入らないようにする、運動前に排尿する、咳やくしゃみの時には尿道を圧迫するように試みる、少し漏れても大丈夫なように当てものを工夫する、リハビリパンツをはく、等)
  
26 切迫性尿失禁の場合には、必ず主治医に報告する(薬物治療が第一選択であるため)。加えて以下の行動療法の実施を検討し、適切ならば利用者・家族に指導する。
  • 膀胱訓練:排尿を一定時間我慢する練習
  • 習慣化訓練:介助者による排尿誘導 等
  
27 溢流性尿失禁および尿排出障害の場合には、必ず主治医に報告する。
28 頻尿について、残尿を確認する(主治医への依頼、膀胱用超音波検査器:ブラダースキャンの使用、等)。多量の残尿(目安として100cc以上)がみられる場合には主治医に必ず報告する。多量の残尿がみられない場合には26の切迫性尿失禁の対応に準じる。
29 前述25~28について、薬物治療が開始された場合には、その効果とともに副作用の早期発見に努める。
30 機能性尿失禁の場合には、利用者および介護の状況に合わせて、まず排泄環境を整える。加えて、以下のような行動療法の実施や工夫を検討し、適切であれば利用者・家族と共に試みる。
  • 排尿誘導について、利用者の意思を確かめ、家族・介護者に可能な範囲での排尿誘導の方法を説明する
  • ルーティン/スケジュール排尿:一定のスケジュールでトイレ介助を行う
  • 習慣化訓練:普段の排尿パターンにあわせてトイレ介助を行う
  • 排尿自覚刺激行動療法:モニタリング(おむつがぬれていないかどうか声をかける)→誘導(トイレの使用を試みるように尋ねる)→賞賛(失禁がない状態の保持、またはトイレに行こうとすることに対して賞賛する)
  • トイレを汚す場合:脱ぎやすい衣類をつける、ポータブルトイレを近くに設置する、根気よくトイレの使用方法を伝え、その場で手助けする
  • トイレ以外の場所で排尿する場合:トイレの位置をわかりやすく表示する、排尿誘導を行う、うまく排尿できた場合には、それを誉め意欲を高める
  

フォローアップ

31 実施したケアについて、ケアの内容により期限を決めて評価を行う。
32 排尿用具(おむつ・パッドを含む)を使用している場合には、その使用状況や失禁量等を定期的に評価し、より適切な排尿用具の選択につながるようにする。
33 排尿ケアに関して、利用者や介護家族をはじめ関係する他職種とチームで取り組める体制づくりができるよう働きかける。

関連書籍

高齢者訪問看護の質指標

―ベストプラクティスを目指して―

日本看護協会出版社

ISBN-10: 4818013404

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