東京大学医学部附属病院 心臓外科・呼吸器外科

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心臓移植について

心臓移植※1とは、亡くなった他の方(ドナー)から心臓の提供を受け、自分の心臓の代わりに植込むことで心不全を改善する治療です。なんらかの理由で脳死に至ったドナーの方の善意によって初めて成り立つ治療ですので、臓器提供を受けられる方(レシピエント)となる条件も限られています。具体的には、下記のような疾患で、内科的治療(内服薬、点滴薬)で症状が改善しない場合に心臓移植が考慮されます。

  1. 特発性心筋症
    a. 拡張型心筋症
    b. 拡張相肥大型心筋症
  2. 拘束性心筋症
  3. 虚血性心疾患(心筋梗塞)※2
  4. 心臓弁膜症※3
  5. 先天性心疾患(外科的に修復のできない場合)
  6. その他:心筋炎、サルコイドーシス、心臓腫瘍、薬剤性心筋障害など

多くの患者様は移植希望者として登録(日本臓器移植ネットワーク)すると、補助人工心臓を装着し退院後、自宅で移植を待機することになります。

心臓移植については現在9施設が認定されており(小児心臓移植は3施設)、東大病院では国内でも特に多くの手術を行っております。しかしながら、ドナー数の不足から多くの心不全の患者様が長期間待機しており、今後の課題になっています。

心臓移植について詳しい説明はこちらまで

※1 心臓移植

心臓移植(Heart transplantation)は、自己の心機能の高度の低下のために全身の臓器への血液循環が低下し、従来の治療法では改善の見込みのない「重症心不全」状態にある患者さんを救うための治療法の一つで、脳死の方から心臓の提供を受けて移植し、心不全からの回復を図る治療方法です。
脳死となって心臓を提供して下さる方をドナー、心臓の提供を受ける患者さんをレシピエントと呼びます。1997年の臓器移植法の施行とともに日本でもおこなわれるようになりましたが年間数例の実施に留まっていました。
2010年の改正臓器移植法が施行されて以来徐々に実施数は増加していますが、2013年、2014年は年間37例ずつで頭打ちです。心臓移植を待つ患者さんの数は着実に増加していますが、ドナーの数が圧倒的に不足しているのが日本の現状です。

※2 虚血性心疾患

虚血性心疾患とは、心臓の筋肉(心筋)に栄養を送る血管である「冠動脈」の狭窄や閉塞のために心筋に十分な血液が供給されず、痛みを生じたり(狭心症)、心筋組織の壊死のために心筋の働きが低下したり(心筋梗塞)する病気です。
虚血性心疾患に対する治療方法は、薬物療法、カテーテル治療(血管内治療)、冠動脈バイパス手術(開胸手術)があります。
虚血性心疾患に対する治療方法についてはこちらをご覧ください。

※3 心臓弁膜症

心臓弁膜症は、心臓の血液の流れを整流する弁の機能不全によって全身への血液の循環の効率が低下して心不全症状を呈する疾患です。
心臓の4つの部屋(右心房、右心室、左心房、左心室)の出口には、それぞれ弁が存在します(三尖弁、肺動脈弁、僧帽弁、大動脈弁)。弁は血液の流れを整流する「一方向弁」として働くべきものですが、変性や感染、虚血、外傷、そのほか種々の理由によって機能不全を起こし得ます。機能不全には2種類あり、「狭窄」と「逆流(閉鎖不全)」です。狭窄とは血液がスムーズに流れていかないこと、逆流(閉鎖不全)は、血流が逆戻りしてしまうことです。
外科手術としては、弁置換と弁形成とがあります。弁置換は人工弁に取り替える術式であり、弁形成は自己の組織をトリミングすることで弁の機能不全を修復することです。僧帽弁、三尖弁に対しては、特に弁逆流の場合は弁形成が積極的におこなわれます(僧帽弁形成術について)。大動脈弁の機能不全に対しては、従来は置換がほとんどでしたが、近年、弁形成が試みられる例が増加しています。

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