東京大学医学部附属病院 心臓外科・呼吸器外科

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見学・研修希望の方へ

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東大呼吸器外科での目標とキャリアパス概要

東大呼吸器外科とその関連病院・協力病院を中心に修練を行い、呼吸器外科専門医としてキャリアを重ねる場合のおよその目標とキャリアパスの概要をご説明します。

いわゆる「入局」について

一般的に、本格的に呼吸器外科医としての修練を行うのは医学部卒業後2年の初期研修と、その後3年の外科専門研修を修了したところから(つまり医師6年目から)です。もっと早い段階(外科専門研修や初期研修の段階)で、将来呼吸器外科を専門にすることを決めていただいた方も歓迎しています。逆に卒後6年目以降でも、これから東大呼吸器外科を中心にキャリアを考えたいという方も大歓迎です。
これまでの「医局」は、非公式な、いわばアングラな組織でした。東大呼吸器外科では、法的な裏付けのある組織の中で若手医師の一貫した教育・育成を行うことを主な目的とし、2024年4月、一般社団法人東京呼吸器外科・肺移植振興会を設立しました。この会に「入会」の手続きをしていただくことが従来の「入局」に相当します*。入会していただいた方は、初期研修医、外科専門研修医であっても、将来の進路を見据えて、ハンズオンセミナーなどのご案内、学会活動や論文執筆など学術活動の教育支援も積極的に行っていきます。
東大呼吸器外科ならびに関連病院での研修に興味のある方、見学希望の方、入局(入会)希望の方は、このホームページの一番下からお問い合わせいただくか、一般社団法人東京呼吸器外科・肺移植振興会のホームページからお問い合わせください。また年2回(2月頃と7月頃)の説明会も開催しています。
少しでも興味のある方には、まず一度ご見学いただき、直接スタッフと話をしていただき、診療科の雰囲気などを直に感じていただくことをお勧めしています。見学は手術日を中心に随時受け付けており、ご都合にあわせて柔軟に対応可能です。是非ご検討ください。

キャリアパスと目標

東大呼吸器外科とその関連病院・協力病院を中心に行っていただく修練・トレーニングの目標は、呼吸器外科専門医として、原発性肺癌をはじめとする呼吸器・縦隔等の疾患を有する患者の診断‧外科療法を適切に行える知識・技術・経験および医師としての倫理を身につけ、後進を指導育成しチームを率いることができる実力を会得して社会に貢献していただくことです。
資格としては、卒後5年で外科専門医資格を取得したうえで、卒後7~11年までに呼吸器外科専門医資格を取得します。症例が豊富で、経験豊かな指導者が数多く在籍する当院および関連病院で臨床医としての実力を磨いていただきます。並行して、学術活動にも積極的に参加していただき、希望者は大学院博士課程を経て学位を取得していただきます。また国内外への留学など、それぞれのビジョンと実力に応じた様々な選択肢を用意します。
こうした過程を経て、卒後15年目までに、呼吸器外科医としての臨床能力と、術者としての豊富な臨床経験を備 え、後進の呼吸器外科医を教育できる指導医としての力、そしてできれば呼吸器外科学分野の未来を切り拓くacademic surgeonとしての力を磨いていただきたいと思います。

東大呼吸器外科は、歴史的に心臓外科・呼吸器外科によって構成される胸部外科の流れをくんでおり、現在も東京大学内では「東大胸部外科」として一つの医局として運営を行い、様々な面で協力しあっています。本ホームページが心臓外科と並んで展開されているのもこのためです。一般社団法人 東京呼吸器外科・肺移植振興会に所属していただく場合、6年目以降で東大胸部外科にも所属していただくことがあります。

東大呼吸器外科・関連/協力施設でのキャリアパスの実際

ここでは修練の段階別に、東大呼吸器外科およびその関連・協力施設でトレーニングを行い、キャリアを積み上げていく場合の目標や研修内容を解説します。

初期研修:医師としてのキホンを身につけるについて

東大病院における初期研修の一環として呼吸器外科に配属された初期研修医は、東大病院総合研修センターの方針にのっとり、研修を行います。
東大病院での初期研修プログラムについての詳細は、東大病院総合研修センターのページをご確認ください。

東大呼吸器外科での初期研修

当科に配属された初期研修医は、1~2か月のローテーション中、呼吸器外科入院症例を担当し、呼吸器外科疾患に対する専門的な知識の習得、一般外科の基本的手技(縫合・結紮等)の修得、胸腔ドレナージや呼吸管理といった当科で学ぶべき手技や知識、術後管理の実際的知識を習得します。これらの経験を通じ、臨床医としての患者に対する基本的態度を養い、チーム医療への理解を深めます。
研修の最初の段階で担当指導医と相談のうえ、自分自身で研修目標を設定してもらいます。2週間毎に、研修で得た知識、経験できた手技、感じたことや反省点など、研修内容を指導医と一緒に振り返り、指導医からのアドバイスを受けます。担当指導医と2人3脚で研修を行うことで、より充実した初期研修を実現することができます。また希望に応じて、ドナーチームの一因として脳死ドナーの臓器摘出術にも同行していただく機会を設けるようにしています。
当科の手術に興味を持ち、より積極的に取り組みたい方には、比較的難易度の低い手術において第一助手や術者の機会を設けるようにしています。特に呼吸器外科を将来の選択肢として積極的に考えていきたい方は是非ご相談ください。他科をローテーション中であっても、夏休みなどを利用しての呼吸器外科見学や進路相談については常時対応しています。気軽にお問い合わせください。また初期研修医であっても、東大呼吸器外科を進路に考えている方は、一般社団法人 東京呼吸器外科・肺移植振興会に準会員として入会することもできます。進路を見据えて、ハンズオンセミナーなどのご案内、学会活動や論文執筆など学術活動の教育支援も積極的に行っていきます。

東大病院以外で初期研修を行っている方へ

初期研修医として幅広い知識と基本的な手技、医療倫理、チーム医療について学ぶことが重要です。その中で、特に東大呼吸器外科を将来の選択肢としてお考えの方は、是非、見学や進路相談についてお問い合わせください。また初期研修医であっても、東大呼吸器外科を進路に考えている方は、一般社団法人 東京呼吸器外科・肺移植振興会に準会員として入会することもできます。進路を見据えて、ハンズオンセミナーなどのご案内、学会活動や論文執筆など学術活動の教育支援も積極的に行っていきます。

外科専門研修:外科医としての基礎を幅広く築く

東大呼吸器外科に入っていただくためには、外科プログラムでの外科専門研修が必要となります。最終的に東大呼吸器外科を進路と考えている方の外科専門研修としては、東大外科プログラムでの専門研修と、それ以外のプログラムでの専門研修の2つの選択肢があります。それぞれのメリット・デメリットを考えて選択していただくのがよいでしょう。これまで当科入局者のうちわけでは、東大外科プログラムとそれ以外が半々でしたが、この2~3年は東大外科プログラム出身者が多くなる傾向があります。

東大外科プログラムでの外科専門研修

東大外科プログラムでの3年間の専門研修は、東大病院で半年、それ以外の施設で2年半となっています。最初または最後の半年で東大病院をまわり、大学病院以外では症例が集まりにくい領域(小児外科など)を中心にローテーションを行います。東大病院以外の研修先についてはそれぞれの希望により振り分けが行われますが、多くの方が第3希望までの施設で研修を行っています。逆に、第1希望の施設で研修できるとは限らない点は、東大病院以外のプログラムに応募した場合と比べてデメリットといえるかもしれません。
とはいえ、どの施設で研修をすることになったとしても、外科専門医を取得するには十分な症例数を経験できるようにプログラムが設定されています。またいずれも東大の関連病院での研修であるため、何かと融通が利きます。たとえば、どうしても研修先の病院が合わないといった場合でも、東大外科プログラムの枠内で様々な対応が検討可能です。われわれとしても研修先の病院と連携しやすく研修内容も呼吸器外科への進路を見据えたものを検討しやすいメリットがあります。また、他の大学病院の外科プログラムと比べた場合、大学病院のよさと、市中病院で研修するよさの「いいとこ取り」ができる、という声も聞きます。
東大外科プログラムの外科専門研修として当科に配属された後期研修医は、呼吸器外科入院症例を担当し、呼吸器外科疾患に対する専門的な知識の習得、一般外科の基本的手技(縫合・結紮等)の修得、胸腔ドレナージや呼吸管理といった、一連の外科研修の中で特に当科で学ぶべき手技や知識を勉強していただきます。また卒後5年で外科専門医が取得できるよう、呼吸器外科の必要症例を経験していただきますが、通常は呼吸器外科に関しては必要数の何倍かの症例を経験していただくことになります。外科医として一定の水準に達していることが確認できれば、比較的難易度の低い手術において術者の機会を設けるようにしています。希望に応じて、ドナーチームの一因として脳死ドナーの臓器摘出術にも同行していただく機会を設けるようにしています。
また、呼吸器外科を将来の選択肢として積極的に考えていきたい方には、常に進路相談の門戸を開いていますので気軽にお問い合わせください。専門研修中であっても、一般社団法人 東京呼吸器外科・肺移植振興会に準会員として入会することもできます。進路を見据えて、ハンズオンセミナーなどのご案内、学会活動や論文執筆など学術活動の教育支援も積極的に行っていきます。

東大での外科専門研修については、東京大学外科系ホームページ 、および東大病院総合研修センターホームページに詳細の記載がありますので、ご参照ください。

東大以外の外科プログラムでの研修

東大以外の外科修練プログラムも、それぞれが特色をもっており、ご自身の希望、将来の展望を見据えて東大以外のプログラムを選んでいただいても全く問題はありません。その場合でも、当科を進路に考えていただいている場合は、外科研修中も定期的に連絡をとらせていただき、研修の進捗などをフォローし、何か困ったことがあれば常に相談できる体制をとるようにしていますので、是非、見学や進路相談についてお問い合わせください。また東大外科プログラム以外で外科修練中であっても、東大呼吸器外科を進路に考えている方は、一般社団法人 東京呼吸器外科・肺移植振興会に準会員として入会することもできます。進路を見据えて、ハンズオンセミナーなどのご案内、学会活動や論文執筆など学術活動の教育支援も積極的に行っていきます。

コラム:呼吸器外科を進路に考えているのに、呼吸器外科以外を学ぶ意義があるか?

呼吸器外科を進路に考えているのに、呼吸器外科以外を学ぶ意義があるか?―これはキャリアの比較的早い段階で進路を決めた場合に思う疑問だと思います。答えはYESです。初期研修、外科専門研修を問わず、自分の最終的な専門以外を幅広く学ぶことは、必ず将来のためになります。
呼吸器外科医として修練をはじめ、数年間みっちりトレーニングを積めば、ほとんどの方が呼吸器外科領域の標準的な手術(たとえば肺葉切除+リンパ節郭清)は自力でできるようになります。しかし、そこからの伸びは個人によって違いが出てくるところです。そして最終的な呼吸器外科医としての実力がどこで決まるかといえば、(もちろん様々な要素があるとはいえ)ひとつ重要なのは、さまざまな局面に対応できる「引き出しの多さ」だと思います。これは手術中の難局もそうですが、術後合併症への対応や、他疾患を合併している場合の手術適応の判断など、多岐に及びます。そしてこの引き出しの多さに大きな影響を及ぼすのが、自分の領域外で何をどれがけ学んだかーです。決してこれだけ学べば大丈夫、という枠組みが決まっているわけではありません。一流のアスリートに、何をどれだけ練習したら一流になれるかという枠組みがないのと同じです。専門医取得までは確かにある程度のカリキュラム、枠組みがありますが、それさえ満たせば一人前というわけではなく、最終的にどれだけ自分を伸ばしていけるかは、みなさん一人一人のビジョンと努力にかかっています。そして広いビジョンをもって、初期研修や専門研修に臨めば、その分得られるものも多いでしょう。
また同じことは専門医を取得した後にも当然言えることであり、当科の特徴である肺移植の経験をはじめ、国内外の留学や専門医取得後に行うadvancedな他領域(例えば心臓外科)の研修、そして大学院を中心とした研究など、すべて、呼吸器外科医として自分を伸ばしていくために役立つオプションです。それらをどう自分のキャリアの中に組み込んでいくか―ひとつの正解があるわけではなく、また何を選んでも間違えではありませんが、何事も本当にムダなことはない、ということ、一見無駄に見えるようなことも、実はあとになって振り返ると「必要なムダ」だったということが、よくあります。有名な3人のレンガ職人の話(※)に例えられるように、自分がやっていることにどんな意味があるのかを、広い視点で考えながら行うことで、その人の仕事に対する取組み姿勢や成果、そしてそこから得られる幸福感・充実感も大きく変わるのです。

3人のレンガ職人の寓話:
(出典には諸説あるが)重いレンガをひたすら積む「単純作業」を仕事にしている3人の職人がいた。それぞれに、何をやっているのか聞いてみたところ次のような答えだった。一人目:見ての通り、レンガを積んでいるのさ。暑いし重いし、こんな仕事は懲り懲りだけど、やれと言われて仕方なくやっているんだ。二人目:レンガを積んで壁をつくってるんだ。大変だけでそれなりに給料もいいし、家族を養わないといけないからやっているのさ。三人目:大聖堂をつくっているのさ。この大聖堂は後世に残る素晴らしいものになるのだから、こんな仕事ができてとても光栄だよ。
この3人は全く異なるビジョンをもって仕事に取り組んでおり、当然そこから得られるもの(充実感はもちろん、得られる技術・知識・洞察)も違ってきます。ここから先は物語にはありませんが、その結果、こうすればもっとうまくレンガが積めるんじゃないかというアイディアや後進の指導といったところで大きな差が生まれ、3人目の職人は指導者になって金銭的にもより恵まれていくのかもしれません。

呼吸器外科修練(6年目以降)

東京大学卒後5年で外科専門医を取得し、卒後最短7年で呼吸器外科専門医資格を取得することを目指します。症例豊富な東大病院および関連病院で、経験豊かな指導医の元、呼吸器外科専門医資格を取得するのに十分な修練を積んでいただきます(後述:東京大学呼吸器外科の関連病院・協力病院での研修)。一般社団法人 東京呼吸器外科・肺移植振興会に入会いただくことで、大学の外にいても一貫性のある修練と学術活動への支援が得られるようにしています。ただここで注意していただきたいのは、受け身の姿勢で、やれと言われたことをやっているだけで、一人前の呼吸器外科医に成長できるほど甘い世界ではないということです。やはりそれぞれが、どうやったら上手くなるのか考え工夫しながら学んでいくことが求められます。そして最終的には自分がどんな外科医を目指すのかというビジョンが重要となります(上記の3人のレンガ職人の話と同じです)。悩むことも多々あるでしょうが、頼りになる先輩たちがたくさんいますので、いつでも気軽に相談してみてください。
また当科では、こうした臨床の修練と並行して、症例研究や臨床研究を通じて国内‧国際学会での発表や英文学術雑誌への論文投稿を早い時期から積極的に行うことを推奨しています(後述:academic surgeonを目指そう! )。数年の呼吸器外科修練を経て、希望する方には大学院博士課程への進学をお勧めしています。また希望に応じて、国内および国外への研究および臨床留学も積極的に検討いたします(後述:外の世界に飛び出そう! )。さらに呼吸器外科医としての幅を広げるため、関連領域(心臓外科、食道外科、頭頚部外科など)での研修も相談可能です(後述:呼吸器外科医としての「引き出し」を増やすには )。
これらの過程を経て、卒後およそ15年目までに、呼吸器外科医としての臨床能力と、術者としての豊富な臨床経験を備え、多数の学会発表や論文投稿を行い、後進の呼吸器外科医を教育できる指導医としての力、そしてできれば呼吸器外科学分野の未来を切り拓くacademic surgeonとしての実力を磨いていただきたいと思います。

東京大学呼吸器外科の関連病院・協力病院での研修

東京大学呼吸器外科の関連病院・協力病院は、症例豊富な地域の中核施設であり、またその指導者も経験豊かな一流の呼吸器外科医です。多くの症例を経験し、また一例一例から多くのことを学ぶことができるはずです。関連病院・協力病院にはそれぞれに特色があるので、各自の希望や研修全体のバランスを考慮し、経験が偏らないように配慮いたします。

関連病院、協力病院一覧(2024年7月現在)

施設名 所在地 病床数 関連・協力施設 在籍する
当科出身医師数
東京大学医学部附属病院※ 東京都文京区本郷7丁目3-1 1,226   15
NTT東日本関東病院 東京都品川区東五反田5丁目9−22 594 関連施設 3
JR東京総合病院 東京都渋谷区代々木2丁目1−3 425 関連施設 2
国立病院機構東京病院 東京都清瀬市竹丘3丁目1-1 472 関連施設 3
国保旭中央病院※ 千葉県旭市イ1326番地 989 関連施設 2
茅ヶ崎市立病院 神奈川県茅ヶ崎市本村5丁目15−1 401 関連施設 2
東京都健康長寿医療センター 東京都板橋区栄町35−2 550 関連施設 3
国立国際医療センター※ 東京都新宿区戸山1丁目21−1 719 関連施設 2
川崎幸病院 神奈川県川崎市幸区大宮町31-27 326 関連施設 2
日本赤十字社医療センター※ 東京都渋谷区広尾4丁目1−22 708 関連施設 3
虎の門病院 東京都港区虎ノ門2丁目2−2 819 協力施設 1
がん研究会有明病院 東京都江東区有明3-8-31 686 協力施設 1
新東京病院 千葉県松戸市和名ケ谷1271 430 協力施設 2
東邦大学医療センター佐倉病院 千葉県佐倉市下志津564−1 451 協力施設 1
関西医科大学附属病院 大阪府枚方市新町2丁目3番1号 797 協力施設 2
藤田医科大学岡崎医療センター 愛知県岡崎市針崎町五反田1番地 400 協力施設 1

三次救急医療施設

Academic Surgeonを目指そう!

当科では、多くの方が大学院に入学し、医学博士の学位を取得しています。かつて医者の世界では、学位は足の裏の米粒と同じ(取らないと気持ち悪いが取ったからといってどうということはない)と言われていました。今は、取らないと気持ち悪い―という時代でもなくなり、また専門医資格と比べると、学位を取得することの直接的な必要性は感じにくいと思います。だからこそ、ここで学位取得を含めた学術活動の意味と、研究もできる外科医、あるいは人の研究について正しく理解できる外科医=academic surgeonの存在意義について述べておきたいと思います。
前述のように、学位をとること、研究をすることに直接的な必要性は感じにくい時代ですね。そして当科でも、学位をとることを必須とはしていません。一方、必須ではないからこそ、そこで人による差が出る部分ということもできます。キャリアの一時期でも研究に専念することで、何がよいというのでしょうか?

怒涛の日常臨床に「くさび」を打つ学術活動

まず多くの臨床医にとって一番身近な学術活動である症例報告から考えてみましょう。私たちの臨床医としての日常はやはり忙しく、うっかりしていると5年10年が本当にあっという間に過ぎてしまいます。また、毎日手術や術後管理、外来を行い、目の前の病気の患者さんがわれわれの治療によって元気になって退院、社会復帰していく―これは非常に満足度の高い仕事であり、われわれの幸福感を満たすのにも十分といえるでしょう。この中で、医師になって比較的早い段階(~10年目くらい)で行う症例報告は、そうした怒涛の日常に「楔(くさび)」を打つものだと考えています。症例報告は、学術活動の題材として最も身近な題材であり、実際多くの方が、指導医から学会の地方会や研究会で何らかの発表をするよう指示されることがあると思います。何となく言われるままにこなしてしまうことが多いかもしれませんが、この症例報告に意識的にしっかり取り組めるかどうかは、その後のacademic surgeonといての発展に大きく差が出るところだと思います。

  • 一つの症例について、そのデータや経過をしっかり見直す。
  • 関連する文献を読み込んだうえで、経験した症例と比較し考察する。
  • 症例から得られた知見・教訓を、どこまで一般化できるのか、できないのか考える。
  • 症例について、人に伝えられる形(学会発表・論文)に整理し仕上げる。
  • 上記の学会発表や論文執筆の過程を通じて、症例から得られた教訓・真に伝えるべきメッセージを自分の中で明確化し、無駄をそぎ落としていく。

こうした一連のプロセスは、将来みなさんがacademic surgeonとして羽ばたくために2つの重要な経験を提供します。一つは、その症例を中心とした関連分野について、教科書を読んだり、臨床で症例を単に「経験」したりしただけでは得られない、深堀された知識と自分なりの知見を得ることです。これが先ほど述べた「くさび」です。イメージ的には、臨床経験をしばらく重ねると何となく全体がわかってきた気はしてくるのですが、それだけではまだフワフワしていて、症例報告をすることで、その中で特に自分の中で専門家して地に足がついた部分をつくる―この部分に関しては自分は結構よく知っているぞ、とある程度自信をもって言える部分をつくっていく感じです。これをいくつかやっていると、それぞれの点が線でつながるように関連して、自分の専門分野(=呼吸器外科)について一段深いレベルで理解ができていることに気が付いてくると思います。これが臨床医としてその専門性を高めることになり、それまで学んできた知識を、自分ではまだ出会ったことのない問題に対処できる知恵に昇華させる力につながります。症例報告、じっくりと一つの症例に向き合う経験は、すぐれた臨床医・真の専門家への第一歩として大きな意味があることがご理解いただけたでしょうか。
もう一つ重要な点は、知識・情報の収集・整理とアウトプットの仕方を学ぶ、ということです。医学部は他の学部と違って卒業するにあたり卒業論文を書く必要がありません。みなさん医学部を出た優秀な人たちですが、実は卒業論文がなく国家試験に合格するための知識詰込みが優先されるため、日本の医学生や若い医師は、この知識・情報の収集・整理とアウトプットにおいて、かなり個人差がある―つまり、できる人は最初から結構できるが、全体にそもそもそうした訓練が足りていないと感じます。症例報告は、身近な症例(しかも自分では臨床で真剣に向き合った症例)を題材に、こうした訓練を行う場を提供します。ではこうした訓練をしているかどうかで何が違うのでしょうか?
わかりやすいのは、将来大学院に進んで本格的に研究を始めたときに出る差です。まったくこうした訓練をしたことがないところで研究をはじめると、例えば論文の検索や整理の仕方がわからない、スライドの作り方の基本を知らない、データがあってもそれをどうまとめて論文の形にしたらいいかわからない、論文を書いても投稿から査読といった過程がどう進んでいくのか、どれくらい時間と手間がかかるのか想像もつかない、ということになります。そこから勉強を始めるのは結構しんどいものがあります。というのも、大学院生として実験をしたりデータ収集解析をしたりする作業はそれなりに大変で、それがメインといってもよいですが、その時点で情報収集~アプトプットのやり方を全くわかっておらず、それを一から勉強するにはかなり時間が不足します。逆に、症例報告を通じて学会発表を行い英語論文を一本仕上げるのは、それなりに大変な経験になると思いますが、その過程を通じて、将来本格的な研究を行ってそれを学会で発表し論文として世に出していくために必要なことを一通り学ぶことができます。このような理由で、当科ではできるだけ早い時期に学会発表はもちろん、英語で症例報告の論文を書くことを推奨しており、大学院で本格的に研究を始める前に英語論文を一本は出しておくことを強く勧めています。また一般社団法人 東京呼吸器外科・肺移植振興会では、入会いただいた先生が早い段階からこうしたトレーニングを積めるよう、さまざまな形で支援します。
情報を収集して整理しアウトプットしていく能力は、このような将来の本格的な研究活動に備えるという側面に加えて、実は医師として専門家としてこれから皆さんが生きていく多くの場面で役に立ちます。例えば、患者さんへの病状説明です。情報の整理とアウトプットがうまくできない方の説明は、枝葉末節の部分が詳しすぎたり、相手(聞き手)の立場に立った思考が不足しているために使う言葉が専門的でわかりにくかったりして、全体像とその中における重要ポイントが見えにくい話になりがちです。逆に、そうした訓練がしっかりなされている人の話は、非常に整理されていてわかりやすいことが多いです。また、患者さんやご家族からの質問を引き出し、それに答えるといった場合も、相手の立場に立てているかどうかで、そのわかりやすさが大きく異なります。そして患者さんやご家族と共有するそうした経験は、良好な医師-患者関係をつくりだすうえで非常に重要となります。Academic surgeonとして求められる素養が、実は臨床医として求められる能力とかなり重複することがおわかりいただけるでしょうか。

本格的な研究へ

医学の進歩はすさまじく、本来、常にアップデートしなければ最先端の患者さんに提供すべき医療についていけないのが、専門性の高い呼吸器外科の世界です。しかし怒涛の日常に流されていると、ついそのようなアップデートが遅れてしまいがちです。これは単に勉強する時間がないというのではなく、ある程度学術的なトレーニングを受けておかないと、新しく世の中に出てくるデータを読み解く力が不足するということです。
また、我々は専門家として、そのようにすさまじく進歩し続ける医学の一部でもあることは自覚しなければなりません。若いころは、既に世の中にある知識・技術を吸収するのに手いっぱいでもあり、またそのことで十分すぎるほどの充実感が得られるでしょう。しかし専門医を取得し数年もすれば、およそ一通りのことは自分でできるようになります(そうなってもらわなくては困ります)。それからの医師として外科医としての人生は続くわけですが、そこで自分のやっている臨床にいろいろな疑問や、これはこうした方がいいんじゃないか―といったアイディアがわいてくるはずです。そうしたリサーチクエスチョンに答える中心的立場にあるのはやはり大学や国立の研究所ということになりますが、そうでなくても研究はできますし、一般病院から重要な研究成果が発表されることも少なくありません。できれば将来、一臨床医・一外科医にとどまらず、研究者としても社会に貢献していただければと思います。
このように、呼吸器外科医として本格的に一度は研究に専念する時間をつくることには大きな意義があり、そのための有効な手段としてお勧めできるのは、やはり大学院に入っていただくという道筋です。以下で具体的に、東大医学部の大学院に入学しようとした場合の流れを説明します。

大学院の実際

当科の大学院では、研究に専念する期間(ベッドフリー:受け持ち患者を持たない期間)を2年以上としています。研究の状況や希望によって2年を超えてベッドフリーとしていることもあります。外科医としての「腕」を考えると、あまり長くブランクをあけるマイナスもあるため、そのバランスをとりつつ進めることになります。当科の大学院生のもっとも一般的なスケジュールは下記の通りです。

  • 1年目:関連病院または大学で臨床に従事しながら研究テーマを検討、文献検索や研究計画書の作成など、本格的な研究に入るまでにできる準備を指導教官とともに行う。
  • 2~3年目:研究に専念する。
  • 4年目:関連病院または大学で臨床を行いつつ、学位論文の仕上げ学位審査を受ける。

研究に専念するのが2年間だとすると、これはかなり短く、この間に学術論文を書き上げてpublishするのはなかなか大変です。4年で卒業できなかったとしても(満期退学という扱いになります)、その後3年以内であれば、在学生と同じように学位審査を受け、学位をとることはできますが、実際に臨床に本格的に復帰してしまうと、忙しくてなかなか研究を仕上げることができず、そのままになってしまう事例もかつてはありました。またその間に、せっかく行った研究自体が陳腐化するという問題もあります。
そこで効いてくるのは、前述のように、キャリアの早い段階からの学術トレーニングです。大学院でベッドフリーになる前に、最低1本は症例報告の英語論文を書いてpublishするように強く勧めているのは、そのためです。論文を書きあげ、ただ書くだけでなく、それをpublicationまでもっていくのはそれなりに労力のかかる作業ですが、そういう経験を臨床のトレーニングと並行して積んでいるかどうかで、大学院に入った時点で非常に大きな差がつきます。
一方で、2年間とはいえ、臨床からある程度遠ざかる期間が生じることも、外科医としての将来を考えると懸念材料となり得ます。特に、ある程度呼吸器外科医としてのことが一通りできるようになる前にブランクを空けてしまうと、また初心者近くまで戻ってしまうことがあります。そこで当科では、呼吸器外科の標準的な手術-具体的には肺葉切除や比較的シンプルな区域切除-がある程度自立して執刀、完遂できることを、ベッドフリーで大学院に戻ってくる条件と考えています。もちろん、そこで呼吸器外科医としての技術が完成するわけではないのですが、このレベルの基本ができていると、ある意味自転車の乗り方を覚えるのと似ているところですが、例えばアプローチが変わっても(開胸、胸腔鏡、ロボット支援)、あるいは術式が複雑化しても、さまざまな応用が効きます。

東大呼吸器外科で大学院生として研究に専念するための条件
  1. 最低1本は症例報告の英語論文を書いてpublishしている
  2. 自力で基本的な肺葉切除、シンプルな区域切除が完遂できる技術を習得している

さらにディープな研究の世界に浸りたい方は…

研究の世界の奥深さは、実際にその世界に足を踏み入れてみないとなかなかわからないところです。その奥深さに魅せられて、もっと研究の道を追求したいという方には、それ相応の道を準備したいと思います。また自分自身で道を切り拓いていく人もおり、それには様々な面で協力を惜しみません。具体的には、さらに研究を追求するための、より専門的な施設への紹介(海外を含め)だったり、懸念材料となるその後の臨床を含めたキャリアパスだったりしますが、やはり大学を中心としたグループとしての強みは、個々人の人生設計にあわせて柔軟に相談していけるところだと思います。

外の世界に飛び出そう!

東京大学呼吸器外科では、いわゆる留学を積極的に勧めています。国内外で、興味のある研究や臨床修練を追求したいという方には、施設の紹介や推薦、その他さまざまなサポートを行っています。実際、東大呼吸器外科には海外で修練を積んだ医師も多く所属しており、世界中のいろいろな施設ともコネクションがあります。「外の世界」に興味のある方は、積極的にご相談ください。以下は東大呼吸器外科からの海外留学実績です(カッコ内は人数)

  • ワシントン大学.(St.Louis) 肺移植研究(3)肺移植臨床(1)
  • トロント大学(カナダ) 肺移植研究(4)、臨床(3)
  • ロンドン大学(Francis Crick研究所) 肺癌研究(1)
  • ハーバード大学(MGH) 肺再生医学研究(1)
  • Memorial Sloan-Kettering(New York) 肺癌研究(1)
  • コロラド大学 肺・気管移植研究(1)
  • ウィーン医科大学 肺移植臨床(2)
  • パリ・サクレ大学 研究(1)

また当科では、国内外の多くの施設から留学や見学を受け入れており、常時3~5名程度の見学者、実習生がいる国際色豊かな診療科となっています。特に最近は、国内では癌研有明病院と積極的に人事交流を行っており、また海外では中国の四川大学華西医院、遵義医科大学(貴州省)、大連医科大学第一附属医院の胸部外科教室とは部局間協定を結んで人事学術交流をはかっています。肺移植やVAL-MAPなど、当院の特色である技術や医療を学ぶことを主な目的として来られる先生方が多いのですが、こうした交流はお互いに非常によい刺激になり、当科所属の若い先生方が外に目を向け、科内を活性化することにも大いに貢献しているように思います。

呼吸器外科医としての「引き出し」を増やすには

当科におけるトレーニングの様々なフェーズについて記載してきましたが、最後に呼吸器外科医としての「引き出し」について述べたいと思います。外科医としての実力は何で決まるのでしょうか?いろいろな見方、指標がありうると思いますが、非常に重要な要素だといえるのは、患者さんの(ときに予想外の)様々な状態、状況に対応できる応用力だと言えるでしょう。これを「引き出し」の多さと呼んでいます。あの手がダメならこの手、といった具合に、次々と選択肢を繰り出して状況を打開する突破力といってもいいかもしれません。
そうした実力を養うのに重要なのは、もちろん多くの臨床経験であることは言うまでもありません。それぞれの施設によって特徴(患者さんの傾向や臨床への取り組み方、守備範囲)があるので、複数の施設でさまざまな経験を積んでおくことが最終的な実力につながっていきます。これは当科のように、多くの優れた関連施設をもつグループの大きな強みだと言えます。外傷が多く緊急対応の仕方を鍛錬できる施設、癒着が強いことが多い感染症を多く扱う施設など、必ずしも症例数だけではない診療の幅の広さも念頭に、経験を積んでいくのが望ましいでしょう。
同じ理由で、東大病院で一定期間経験を積むことも大きなプラスとなります。肺移植は大学でしかできない医療であり、その技術は進行肺癌などにおける気管支形成、血管形成などに応用可能であり、また心嚢内操作も多く、普通に呼吸器外科医をやっていたのではなかなか経験できない手術操作をルーチンでおこなっています。このため、他の施設や海外からも留学に多くの方が勉強に来られますが、それにとどまらず、気道手術やその管理、体外循環を使った拡大手術など、大学ならではの多くの経験を積むことができます。たとえ自分が執刀、担当しなくても、そういうやり方があるということを見ておくだけでも大いにプラスになるといえるでしょう。
さらに呼吸器外科医としての守備範囲を広げるために、心臓外科や食道外科、頭頚部外科などでの一定期間の研修も有効だと考えられます。自分で心臓や食道の手術をするわけではなくても、隣の臓器をどのように扱っているかを見ておくことは境界領域に強い外科医になるために極めて有効です。一通り呼吸器外科の手術ができるようになってから見る景色は、3~5年目の外科研修のときとは全く違っているでしょうし、そこで身につけられる知識や考え方も大きく異なるはずです。このような研修の希望がある場合は、大学を中心に関連する施設での研修を斡旋いたします。
これらの経験は、何をどこまでやればよいかという正解がある話ではなく、専門医としてどこまで自分を高められるか、あるいは何を自分の「専門の中の専門にしていくか」ということにもつながっていきます。そして専門の中の専門という意味では、研究の世界とも通じてくるところでもあります。

専攻医経験談

東大外科プログラムに決めた理由

天野 瑶子先生

初期研修病院が東大外科プログラムの連携施設であったため後期研修中の先生方から話を聞くことができ、プログラムへの信頼がありました。どの連携施設を選んでも外科専門医を取得するのに十分な症例数があり、充実した専門研修となると考えました。新専門医制度初年度という混乱の中、半年以上と決められた連携施設をどうするか明確でないプログラムもありましたが、従前より「半年が大学、2年半が連携施設」となっていてプログラムとして確立されていると感じました。
また、出身大学のプログラムであり東大呼吸器外科への入局を考えていたため、プログラム終了後の入局までの流れが見通せる安心感がありました。

東大プログラムに決めるにあたり、心配だった点。プログラムの欠点。

自身が研修を積む事になる連携病院がどこになるか、プログラムに決定後までわからない点が心配でした。結果的に第一希望の病院に決まり、周囲もほとんどは第二希望までには決まっていたようです。

前期外勤の研修の状況

病棟業務、手術、外来、救急当直といった業務を通して、外科医としての基礎を身につけることができた2年半でした。都心の病院であること、病院独自プログラムを持ち後期研修医が多いことから、経験症例数はやや少なめですが、開腹手術、内視鏡手術、ロボット手術と幅広く、外科専門医を取るには十分な症例が経験できました。上級医は専門性の高い先生が多く、上部、下部、肝胆膵それぞれの領域について手術だけでなく、学会発表等についても丁寧に指導して頂きました。
また、呼吸器外科志望であることを考慮していただき、2年半のうち1年を呼吸器外科のローテーションすることができ、呼吸器外科の術者経験を積むこともできました。

経験した手術件数:術者150例、助手271例(2年半)
手術方法:開腹手術 188例 内視鏡手術 233例

研修医の先生にメッセージ

呼吸器外科や心臓外科を目指している場合、消化器外科研修期間の短いプログラムもありますが、外科医として最初に身につけるべき基本手技や術後管理などは共通しており、症例数の多い一般消化器外科での経験が呼吸器外科医となった今も役立つことは多く無駄になりません。また、連携施設での研修が3年間の途中に来るプログラムでは引っ越しや引き継ぎなどで研修が途切れてしまうことがありますが、東大外科プログラムでは大学の期間が最初または最後のため連携施設で2年半集中して研修に取り組むことができます。
専門研修の3年間はその後の外科医としてのキャリアの基礎となる大事な期間です。東大外科プログラムはその歴史の中で積み重ねてきた優れた指導体制があります。外科に興味を持った先生方はぜひ東大外科プログラムを検討していただきたいと思います。

東大外科プログラムに決めた理由

東京大学医学部附属病院 呼吸器外科
特任臨床医
永田 宋大先生

東大外科プログラムは、関東近郊の手術症例の多い連携施設を複数有しており当プログラムを選択しました。
他の基幹型プログラムでは地域研修等で半年〜1年毎に施設が変わることが多いですが、東大外科プログラムでは連携施設で2年半継続的に修練を積めることが最大の魅力だと思います。
症例の不足した領域については東大病院で補完することができ外科症例不足で困ることはないと思います。

連携施設での修練

私は、神奈川県内(といっても都心から電車で20分程度の場所)にある病院で2年半研修を行いました。
研修先の特徴として、とにかく多くの手術経験を積むことを外科専攻医として求められ、他施設と比較しても遜色ない経験が積めたと思います。術者として一般外科手術(鼠径ヘルニア,胆摘,乳癌など)は1日に数件執刀することがある一方で、直腸癌や胃癌、肝胆膵領域、拡大切除など高難度手術の術者も行うことができました。鏡視下手術や緊急含めた開腹開胸症例もバランスよく経験できたと思います。
もう一つの特徴として週2回の外来を継続的に行えたことが挙げられます。初診から術前検査、手術適応を決め、化学療法など含めた術後管理や終末期医療まで一人の患者さんに主治医として長く寄り添うことができました。外科手術で社会復帰する方がいる一方で、経過の難しい方もいらっしゃいました。手術はあくまで一部で外科医として入念な準備と術後の様々な問題を解決するために幅広い知識やコミュニケーションが求められることを痛感しました。
手術症例数も勿論大事ですが、一人ひとりの患者背景を考え寄り添う経験を長い時間軸でできたことが非常に有意義だったと思います。外来があると手術に入れない時間もありますが、できれば外来経験の積める病院がおすすめです。

経験した手術件数:545例(術者:374例、助手:171例 うち鏡視下手術:247例)

東大呼吸器外科での修練

現在、当科で修練を開始し半年が経過した時点ですが非常に多くの経験を日々刺激的に積むことができています。
当科の特徴の一つとして挙げられるのが肺移植です。国内有数の移植施設であり、周術期管理ではECMOなどの補助装置から免疫抑制、感染症など幅広い知識を学ぶことができます。一つ一つの判断が大きな分岐点になるため、緊張感もありますが上級医の手厚いサポートのもと多くの経験が積むことが可能です。移植は毎週、時に連日行われ常に吻合手技のみならず様々な細かいtipsを学ことができます。臓器摘出では術者も経験できました。
肺移植のイメージの強い当科ですが、一般胸部外科としても多くの症例を経験できます。
肺癌では積極的に若手が系統切除の術者経験が積める環境です。意外かと思われるかもしれませんが気胸や膿胸、気道病変などの症例も多く、時に一筋縄ではいかない症例では多様なアプローチをエキスパートから学ことができこれも非常に刺激的です。
医局内には海外で臨床・研究を経験された上級医が複数在籍しており、留学生も多く常に世界を肌で感じることができることも特色の一つかと思います。
非常にアットホームでワンチームな医局である一方で、移植を含めた様々な臨床、研究領域で世界を感じることができる環境だと思います。

研修医の先生にメッセージ

東大外科プログラムはどの施設も特色があり症例経験の多く積めるプログラムであり非常に魅力的です。私は連携施設での呼吸器外科の経験はほぼ皆無で、東大病院での研修中に呼吸器領域(特に肺移植)に魅了され専門としました。日々勉強ですが、外科という観点では臓器は違えど、考え方は同様であり応用できることも多いと感じています。外科研修中は日々の症例を大事にすること、たくさん手を動かすことが重要だと思います。
呼吸器外科を考えている方、まだ専門領域を決めかねている方は是非、当科で研修や見学にお越しいただければと思います。肺移植は大変な側面もありますが非常にやりがいのある医療です。移植施設も少ない一方、移植の必要な患者さんは増加しており拒絶など未知の領域も多い分野です。また、当科は肺癌などの一般胸部疾患にも積極的に取り組んでおり様々な可能性を感じられるワクワクできる診療科だと思います。お待ちしております。

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