ITC_001_翻訳に際して議論のあった用語について

ITC001 Hepatitis C Virusを翻訳した際に揺らぎのあった用語の扱い

例:ルーチン/ルーチーン、曝露/暴露、DAAs/DAA、再燃/再発
薬剤名等の例:ペグ・インターフェロン/ペグIFN、ソホスブビル/ソフォスブビル、日本で承認されている薬剤はカタカナ表記/日本未承認薬剤は英語表記のままに統一。FDC配合錠剤は、A/B/Cと表記し、併用薬はA+Bと表記した

薬剤名のphos-やciclo-はそれぞれホス/フォスやシクロ/サイクロなどの読み方をする先生が混在している。国の機関では一般名として原則一つに定めるようになっているので確認のうえ統一する。統一する際、マクロを使用することが推奨される。

  1. ITC001 Hepatitis C Virus の翻訳に際して議論となった用語
    * この用語の使用を推奨するものではなく、議論の際の根拠や考え方の参考にしてください
    英語日本語訳統一案初出時備考 議論内容、根拠にした辞書やWebpage等
    Weight-based ribavirin体重で用量調整したリバビリン
    SVRSVRSVR(ウイルス学的持続陰性化)消化器病学用語集より
    SVR12sSVR12 訳注:治療終了 12 週間後の時点で評価したSVRITC44 のページにだけ出てくる。
    (1回しか出てこないので、統一するべき用語とは趣旨が違いますが調べたことのメモとして)元論文で確認済み。http://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(15)00349-9/abstract
    Treatment-naive未治療 (症例)
    未治療 (群)
    Interferon-experienced (patinets)インターフェロン治療歴のある症例
    FDCFDC錠FDC錠(固定用量配合錠)FDCだけだと理解しにくいと思われるので。日本のガイドラインは「配合錠」でした。ただ、「配合錠」だけだと、 fixed dose の意味が抜ける。両者の意図を入れて「 FDC 配合錠」としました。
    regimenレジメン他候補: regimen プロトコール、治療プロトコール
    CKD慢性腎臓病日本腎臓学会 HP で確認
    ION-4 trial
    C-SURFER study
    ●● 試験 で統一する他候補:●●トライアル、●●スタディ、●●研究
    Large prospective studies大規模臨床試験観察研究だと「いわゆる」retrospectiveが存在するためprospectiveを記載したい気持ちもわからなくもないが、臨床試験はふつう後ろ向きというのが考えにくい。また、観察研究の領域でも現在は"prospective" "retrospective"という用語をそのまま用いることは推奨されない。
    DAAsDAADAAs ( Direct acting antivirals, 直接型抗ウイルス薬)「 DAAs 直接型抗ウイルス薬」に関しては、日本肝臓学会、 C 型肝炎治療ガイドラインにてこの用語が使用されていた。 http://www.jsh.or.jp/files/uploads/HCV_GL_ver5.1_Oct08_fina_Oct12.pdf
    Antiretroviral treatment/medication/regimen抗レトロウイルス治療
    抗レトロウイルス薬
    抗レトロウイルスレジメン
    一般的な用語であって、あえて統一しないと意味するところがあいまいになるようなものではない
    Co-infection
    ( この記事では HIV と HCV)
    重複感染他候補:複合感染 (医学科用語集にはcoinfection co-infectionともに収載なし。厚労省ガイドラインは、重複感染の用語となっている。http://api-net.jfap.or.jp/library/guideLine/images/2005_HIV_HCV.pdf

    D型肝炎ウイルス(delta-agent)はB型肝炎ウイルスに感染した個体に感染する。また、アデノ随伴ウイルスは感染した細胞にアデノウイルス等ヘルパーウイルスが感染することでアデノ随伴ウイルス粒子が複製・放出されるなど、ライフサイクルに意味のある重複感染もある。
    Patients患者・症例・被験者(使い分けは備考)病気に罹患した人について述べるときは「患者」、事例として病態を患ったヒトを述べるときは「症例」、臨床試験に組み入れらた対象を述べるときは「被検者」
    pegIFNペグ・インターフェロン厚労省ガイドラインもこの用語を使用している。http://api-net.jfap.or.jp/library/guideLine/images/2005_HIV_HCV.pdf
    他候補:ペグIFN peg IFN ペグインターフェロン(・なし)、PEGインターフェロンなど 
    Drug 治療薬の場合は「薬剤」
    違法薬物の場合は「薬物」
    例: drug-drug interaction ⇒ 薬剤 相互作用
    IVDU ⇒静注薬物
    Herb herbal生薬他候補:ハーブ、薬草、民間療法薬、 
    60mg60mg  ( mg で記載)他候補:ミリグラム
    Cytochromeチトクローム他候補:シトクロム(日本医学会用語集はこの用語になっているが、あまりに聞き馴染みがない)、チトクロム、サイトクロ(-)ム
    Guidance「指示」「ガイダンス」「治療指針」「診断治療指針」のなかから文脈に応じて
    First-line regimen第一選択レジメン他候補:第二選択レジメン、その他のレジメン
    Alternative regimen代替レジメン
    Monitoringモニタリング、モニターする他候補:監視
    Adherence アドヒアランスアドヒアランス(服薬コンプライアンス)理由:服薬コンプライアンスの方が、日本では圧倒的に多数の医師に理解されやすい。ただし、これからはコンプライアンスを、アドヒアランスにしていこうという時代の方向性のため。
    Risk factorリスク因子他候補:危険因子、リスクファクター
    Ongoing risk継続的なリスク
    Fatigue倦怠感他候補:疲労、全身倦怠感、疲労
    Specialist専門医他候補:専門家、スペシャリスト
    Manage management管理他候補:マネジメント 
    Exposure曝露他候補:暴露(不正を暴露など「あばく」のニュアンスがあるが、間違いともいえない)
    Routine ルーチン他候補:ルーチーン
    Relapse ( HCV の場合は)「再燃」としている。他候補:再発 ウイルスに注目する場合は「reactivation ;再活性化」 が使用される場合もあり、ウイルスの領域によってrelapseとは使い分けられているので、要注意。
    genotype  genotypegenotype 1
    genotype 2
    など
    (日本肝臓病学会ガイドラインはゲノタイプ 1 型、ゲノタイプ 2 型の記載)
    subtypesubtype他候補:サブタイプ 
    PWIDPWIDPWID (people who inject drugs)
    MSM男性同性愛者男性同性愛者( MSM: men who have sex with men )
    Pangenotypic regimenPangenotypic regimenPangenotypic regimen (汎遺伝子型薬物レジメン) 訳注:どのgenotypeに対しても普遍的に有効な薬物レジメン
    FDC 製剤と、併用薬の薬効成分の記載方法 FDC 製剤(=配合錠)は A/B/C と記載する。併用薬は  A+B+C と記載する
    Dose用量
    Dosing投与する事・投与方法
    Mortality and morbidity死亡率および罹患率
    「など」は漢字で統一する。ゆえに「等」と記載する 
    Liver transplantation肝移植他候補:肝臓移植
    日本医学会用語集も肝移植
  2. ITC002 Hepatitis C Virus の翻訳時に統一した医薬品
    *(海外で承認されている)医薬品の国内での承認状況は時間とともに変化します。その時々で確認してください
    drugPMDA 検索(北野)日本に(北野検索)中薗さん情報
    sofosbuvirソホスブビルありあり
    ribavirinリバビリンありあり
    boceprevir検索されないなし未承認
    telaprevirテラプレビルあり
    paritaprevirパリタプレビル配合錠としてありあり
    ritonavirリトナビルあり
    ombitasvirオムビタスビル配合錠としてありあり
    dasabuvir検索されないなし未承認
    daclatasvirダクラタスビルありあり
    velpatasvir検索されないなし未承認
    elbasvir検索されないなしエルバスビルとして審査進行中
    grazoprevir検索されないなしグラゾプレビルとして審査進行中
    ledipasvirレジパスビル配合錠としてあり
    simeprevirシメプレビルあり
    tenofovirテノホビルあり
    efavirenzエファビレンツあり
    rilpivirineリルピビリンあり
    raltegravirラルテグラビルあり
    tipranavir検索されないなし未承認

 

参考資料 (PHARM STAGE vol.12, No.2 2012 pp 12 -23):ちなみにdosing(動詞的な用法)だと投与すること、投与方法で、以下の資料でいうdosageに近くなります。