文章の7原則

書き言葉は、話し言葉と違ってニュアンスを伝えることが難しい。きっちりとした「型」を用いて、文章の構成を整えることで内容を伝えやすくなる。文章の「型」には機能がある。(PRC委員長 大島康雄)

・「型」比較的複雑な内容も伝えやすくする原則
・文章を整理するのみならず、考え方を整理するツール


7つの原則

1. 口語体で書く
2. 文体の統一
3. 主語、述語、目的語を明確にする
4. 修飾、被修飾の関係を明らかにする
5. 二重否定を避ける
6. 全体否定か、部分否定かを明確にする
7. 1つの文で「及び」と「又は」を使わない


1. 口語体で書く

× 厚生労働大臣においてこれを決す。
○ 厚生労働大臣がこれを決める。

英語のmedical writingでも、わかりやすい言葉でおきかえることを推奨する教科書がある。 (Robert B. Taylor, MD, The Clinician’s Guide to Medical Writing ISBN 0–387-22249-9)

Heavyweight wordGood choice as a replacement
InitiateStart, begin
TerminateStop, end
SufficientEnough
PerformDo
UltimateLast
TranspireHappen
IndividualPerson
InstitutionHospital
PredominateChief
EtiologyCause
NumerousMany
DiminutiveSmall

* NativeのEnglish editor会社に頼んでも、難しい言葉に置き換えて返してくるケースが少なくない。彼らもMedical Writingを「難しい言葉で表現する事」と勘違いしているのかもしれない。


2. 文体を統一する

日本語:「です。ます。」 か 「だ。である。」
英語なら:「color , leukemia」 か  「colour, leukaemia」

悩むのは時間の無駄なので、決めてしまえばよい


3. 主語、述語、目的語を明確にする

○ 誰が、何を、どうした。
○ 医師は有害事象の程度を判定した。
○ 問診時に患者は頭痛の程度を医師に伝え、患者の報告を基にして、医師は頭痛の程度を判定した。

最後の例では、文自体は長いが、しっかりした文章なので、わかりにくくはない。
はしょって、短くまとめようとすると逆に混乱させる可能性がある。はしょる時に「主語」が省略されやすいが、この例のように主語が途中で変わるものは、はしょると解りにくくなりがち。

何文字以上は1文にするのはよくないとか書いている本もあるが、構造がしっかり、シンプルですっきりしていれば、列挙する単語が多いとかいうことで文が長くなる場合、あえて分ける必要はない。


4. 修飾、被修飾の関係を明らかにする

× 消失半減期の長い第2世代の抗ヒスタミン薬
○ 第2世代の抗ヒスタミン薬のうち、消失半減期の長いもの

上の例では、第二世代の抗ヒスタミン薬が一般に半減期が長いのか、第二世代の抗ヒスタミン薬のなかで、消失半減期が長いもののみを言いたいのかが不明となる。映画にBig momma’s houseというのがあるがこれも、このタイトルだけではbigなのがmommaかhouseかが分かりにくい。どちらがbigか気になる方はこちらをご参照ください。


5. 二重否定を避ける

× 重篤な有害事象に該当しなければ、報告の必要はない。
○ 重篤な有害事象に該当する場合には、報告が必要である。

これら2文は必ずしも論理的には一致しないが、伝えたい内容が後者で伝わるのであれば後者のほうがずっと良い。報告不要のものを列挙するよりは、報告してほしいものを列挙する方が、報告書を入手する側にとっても有用なはず。


6. 全体否定か、部分否定かを明確にする

–「ように」+ 否定型 は要注意–

× アムロジピンのように本薬の降圧効果は強くない。
○ アムロジピンのようには、本薬の降圧効果は強くない。
○ 本薬の降圧効果はアムロジピンほど強くない。
○ アムロジピンと異なり、本薬の降圧効果は弱い

悪い例では、アムロジピンの降圧効果が強いのか弱いのかがわからない


7. 1つの文で「及び」と「又は」を使わない。

× 胸痛及びAST上昇、CK上昇またはその両方が認められる患者を本試験の対象とする。

○ 以下の所見がどちらも認められる患者を本試験の対象とする。
・ 胸痛
・ AST上昇、CK上昇のいづれかまたはその両方

この例では、何を言いたいのか「書き手はわかっているけどうまく表現できない」ケースが少なくない。言いたいことの本質を整理したら、伝えたいことを表現する方法が見えてくるはず。