「社会階層と健康」研究班5年間のまとめのシンポジウムを開催します。
http://mental.m.u-tokyo.ac.jp/sdh/pdf/pubsympposter140212.pdf
発表抄録より:
タイトル:日本人の健康状態の推移:これからの健康づくりにむけて
講演者名: 近藤尚己
講演者所属: 東京大学大学院医学系研究科保健社会行動学分野
日本が敗戦から驚くべきスピードで世界一の長寿国となった理由は何だろうか。たとえば、「お互い様」といった助け合いの規範が生きていることが、日本の長寿の達成に貢献してきた様々な制度や地域での取り組みに反映されてきた結果ではないかと考えられている。たとえば多くの先進諸国に先んじて国民皆保険制度・国民皆年金制度を創設したことや、貧しい農村での自主的な保健活動の事例である。また、社会格差は健康に悪影響を与える可能性があることを示す多くの実証研究があるが、多様な側面における格差の小ささも日本の特徴であった。しかし近年では、特に男性の平均寿命の伸び悩みが目立ち、それと関係するように職業階層間の健康格差の“いびつな”拡大がみられている。実は健康格差の拡大が世界的な傾向とし日本以上に充実した社会保障制度を持つ北欧諸国でも健康格差は継続的に拡大している。これらは、カネやモノの再分配政策だけでは「心の」健康状態や健康「行動」の格差までは是正できず、新たな一手を考案する必要があることを示唆している。だれもが安心して暮らせる社会システムの追及に加え、力強く、かつ“安全”に、人々の行動を、より健康な方向に促すような社会デザインが必要かもしれない。