私たちパブリック・ヘルスの研究者は、社会と健康の関係を探る研究を行い、「健康な社会づくりをめざしています。私たちの健康は、人とのつながりや様々な社会の仕組みなど、さまざまな事がらによって決まっています。
「長生きの秘訣」「健康づくり」というと、「運動しましょう」「野菜を食べましょう」というような習慣の話になりがちです。確かに今、がんや狭心症、脳卒中、糖尿病といった、いわゆる「生活習慣病」がかつてないほど増えています。これは世界的な傾向です。
しかし、これらの病気を持つ人すべてに対して、「生活習慣が悪かったから」「自業自得だから」と批判できるでしょうか?私たちは決してそうは考えません。
どんなに自分をしっかり律する人でも、常に理想的な生活習慣を送ることはできません。なぜなら、健康な習慣を送ることができるかどうかは、あなたを取り巻く「つながり」や「地域や社会のありよう」の影響を強く受けるからです。
「健康のヒケツ」というと、「ストレスをためない」というのをよく聞きますね。これは正しいと断言できます。ストレスがたまれば、やけ食い・やけ酒など不健康なことをしがちになりますし、ストレスそのものが血圧や血糖値を上げたり、免疫力を弱めたりして、臓器を痛めつけてしまうということも、医学研究の進歩によりわかってきています。でもどうやったらそうできるのでしょう?
このように、私たちの健康は社会と密接に関わっています。健康な社会が健康な市民をつくり、健康な市民の存在はよりよい社会づくりのための「資源」になります。
人々を取り巻く社会背景や社会そのもののありようによって、健康状態がどう違ってくるのか、それを研究や実践、政策設計によって明らかにし、「健康な社会」づくりを目指すのが、パブリック・ヘルス:公衆衛生に関わる私たちの仕事です。