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34年ぶりの件

34年ぶりの再訪の件

                                 (室月 淳 2015年1月11日)

再訪.

一度目は大学一年の夏だから,あれからすでに34年がたちます.わたしにとって古寺巡礼のいわばスタートといってもいい旅でした.郊外のベッドタウンのふつうの町並みを抜けたところにあって,有名な割には境内にはひともまばら,建物は傷み,池の水も淀んでいる,というのが当時の記憶です.しかしよくもわるくもその印象は一変していました.

「世界遺産」となったことがきっかけだったのでしょうか.寺も庭園もすべて整備されてきれいになり,なによりも真冬のシーズンというのに境内はひとの波でした.お堂にはいるのになんとテーマパークなみの1時間半待ち‼ しばらく迷いましたが,じぶんの目でみるということはなんでもたいせつなので,予約の時間が来るまであちこち歩きながら時間をつぶすことにしました.

旧跡のあとに修理され復元された華麗な建物.朱塗の柱にあざやかにきらめく金箔.阿弥陀如来と雲中菩薩群が柵ごしにみえます.手をあわせるときひとは知らず目をとじます.目をとじると玉砂利をふみしめる無数の足音が背後にひびき,やがてそれはきえ,いつのまにか静けさがあたりをつつんでいきます.

むかしどこかでこのようにきみのすがたを感じたこともあったが,静寂というものがこれほど幻ににかよったものとはしらなかった.生きているあいだにここにくることはおそらくもうないだろう.おもむろに顔をあげ,幽明さだかならぬ堂内のおおきな影に目をこらした.

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カウンタ 629 (2015年1月24日より)