「中絶体験の葛藤 小説に」(読売新聞)
「中絶体験の葛藤 小説に」(読売13年12月23日宮城版)
(2013年12月23日 室月 淳)
先日出版された,シモーナ・スパラコ著,泉典子訳「誰も知らないわたしたちのこと」(紀伊國屋書店,1,800円) が,読売新聞宮城地域版に紹介されました.
見出しではわたしが「翻訳監修」したことになっていますが,イタリア語がまったく理解できないわたしですから「翻訳監修」などできるわけはなく,それはあきらかに言い過ぎですね.単純に訳文のなかにでてくる医学用語が適切かどうかをチェックし,さらに巻末に解説文を書かせていただいただけです.本の製作の最後の段階にかかわらせていただいただけでこのようにおおきくとりあげていただき,かえっておおいに恐縮している次第です(^_^;)
まあそれは別として,小説自体はとても重要な意味があるものですので,ぜひご一読いただければ幸いです..われわれ周産期医療にたずさわる人間にとって,出生前診断,選択的中絶をうけた女性の体験と心理過程は,なによりも重くうけとめなければならないものです.しかしこの本は周産期の専門書ではないのはあたりまえで,文学作品としてたかい価値をもっていて,一般の読者につよくアピールする小説です.この小説であつかっているテーマは,とくに女性にたいしては例外なくつよくゆり動かされるはずです.
「新型出生前診断」をはじめとする出生前診断が社会的にひろく議論されている現在,この小説のもつ意義ははかりしれません.この小説で語られている現実は,これまでの社会的議論のなかではまったく欠落していた内容でした.だれひとりとして知らず,語らず,目をつぶってきたものといえます.これまでさまざまな発言をおこなってきた論者も,この小説を一読後は自分の意見をふりかえざるを得ないでしょう.
この本のわたしの「解説」分の原稿料はすでにいただいてしまい,かりに本がたくさん売れてももちろん一円もはいってくるわけではありません(笑)が,それでもひとりでもおおくのかたに手にとってもらえればうれしく思います.
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カウンタ 4005 (2013年12月23日より)