構音嚥下障害
1.咀嚼(そしゃく)嚥下障害
筋強直性ジストロフィーでは咀嚼(そしゃく)筋や咽喉頭筋の障害が早期から見られます。また、歯並びの悪さ(歯列不整)、高口蓋・鼻咽頭閉鎖不全、舌機能障害(舌萎縮・運動障害)など歯科学的異常も見られます。これらのため、本症の患者様は堅い物が噛みにくく、飲み込みが下手になります。食べたものが咽頭(梨状窩、喉頭蓋谷)に貯まる、間違って気道に入る(誤嚥)ことも多く見られます。誤嚥してもムセが起きない患者様も多く、レントゲンで初めて誤嚥に気付かれる場合もあります。食べ物を丸呑みすることも珍しくなく、窒息の危険性が高くなります。咀嚼(そしゃく)嚥下障害も自覚症状に乏しく、誤嚥してもムセが起こらないことが多いため、ご自身が気付かれることはほとんど有りません。誤嚥性肺炎の原因、低酸素血症の増悪因子としても重要で、定期的な嚥下機能評価や言語療法士による嚥下訓練、嚥下機能にあわせた食形態の工夫、定期的歯科受診による口腔衛生維持、口腔吸引などを考慮します。
2.構音障害
唇を閉じる力が弱い(口唇閉鎖不全)、口腔と鼻腔の間の軟口蓋を持ち上げる力が弱い(鼻咽頭閉鎖不全)、舌が小さく動きが悪い、高口蓋のため舌が上顎に届きにくい、喉頭を閉じる力が弱い等のため、鼻声(開鼻声)や明瞭さの低下(呂律障害)が見られることがあります。言語治療士による訓練や、装具を用いることで改善がえられることもあります。
3.手術を予定される場合
嚥下障害がある場合、全身麻酔からの回復期(抜管後)に誤嚥性肺炎を起こす場合があります。明らかな誤嚥があっても、自覚されている方は少数です。手術前には言語治療士や嚥下造影検査など嚥下機能評価を受けておきましょう。歯科を受診して、歯石除去や虫歯の治療など口腔衛生を良い状態にしておくことも大切です。