アーバン教則本の無料ダウンロード

アーバン教則本

はじめに

美人トランペッターの齋藤舞子さんが、ツイッターでデュエットの二番パートの動画を掲載しました。舞子さんが教則本の中でも比較的難易度の低い方の楽曲を選んで2番パートを演奏してくださっています。フォロワーが気楽に1番パートを演奏して、練習して楽しんだり、重ね撮りしてアップして楽しんだり、と言う使い方を想定していらっしゃるようです。私はというと大学卒業後30年ほどほとんど楽器に触らない時期も長かったのですが、私もこの動画をみて重ね撮りしたくなりまして、試しに演奏してみました。そのセットアップの大変さは気が向いたら書きたいと思いますが、普段web会議とかで使用しているwebcamのlogicool HD1080pでは、ラッパの音が大きすぎて音が割れてしまったり、ライブの撮影に使用してますzoom Q2nはドライバーがないのかマックが認識してくれなかったり、同じくライブの音を撮っているTASCAM のDR-07 mkIIがUSBマイクのような使い方ができなかったりと音と画を撮る機材がマックとの連携が悪くて悩ましかったところです。*結局DR-07 mkIIのアナログ出力をYAMAHA STEINBERG UR22 mkIIでA/D変換してマックへ取り込みました。画はHD1080pで撮れました。

この記事ではとりあえず譜面がどこにあるのかを記事にしようかと思います。

1. ペトルッチIMSLP 

著作権の消失した古い譜面を、アーカイブしている、言わば楽譜の電子図書館のサイトです。ここへアクセスします。

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2. 上記の「4 more」をクリック

すると画面表示が少し変わります。

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3. Book 4. The Art of Phrasing をクリック

「15秒後にダウンロードが再開します」が「ダウンロードを再開するにはこちらをクリックしてください」に変わるまで待ちます。(頻繁に利用されるのでしたらユーザー登録して、この15秒を節約しても良いかもしれません)

ダウンロードを再開するにはこちらをクリックしてください」をクリックします。

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4. デュエットはファイルの56ページから開始

冊子上は246ページ(ファイルでは56ページ)からデュエットの譜面が始まります。

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以上。

 

COVID-19原因ウイルスのspike蛋白質の受容体結合ドメインとヒトACE2

シミュレーション動画

新型コロナウイルス肺炎COVID-19原因ウイルスのSARS-CoV-2がヒト細胞に侵入する際に結合すると考えられているヒト細胞側のタンパク質(受容体)はACE2です。このACE2とウイルス側の結合する部位(受容体結合ドメイン)がどのように相互作用するのか、直接観察することは難しいものです。直接見るのが難しいのであれば、コンピューターシミュレーションで補うというのが、観察に迫る一つのアプローチです。この点についてデビッド・ショウらのモレキュラー・ダイナミック・シミュレーションの結果が公開されています。シミュレーションデータは膨大で、私は入手しませんが、シミュレーションの結果の結合してゆく様の動画だけ表示させていただきます。SARS-CoV-2

ピンク色の分子がヒトACE2~ human ACE2 (hACE2)~で、グリーンがSARS-CoV-2のspike蛋白質の受容体結合ドメインです。~receptor-binding domain (RBD) 元の論文1では結晶構造を得やすくする様に少し修飾しています(元になった構造はエントリー6VW11)~

途中で小さな白い棒のようなものに赤や青の小さな点が付いたものがニョキニョキ出てきていますが、両蛋白質のアミノ酸残基で、結合にかかわるものだけを表示するように設定したものと思われます。動画にはありませんが、リンク先ホームページには結合部位が400ほどに増えると、エネルギーが低い安定した状態になるような図も提示されています。

1.
Shang J, Ye G, Shi K, et al. Structural basis of receptor recognition by SARS-CoV-2. Nature. March 2020. [PubMed]

リサーチクエスチョンを組み立てる(1)

~悟りを与えるのは答えではなく質問である~ユージン・イヨネスコ

新しい知識は答えのある質問をしたことから生まれます。まだ解決されていない重要な問題に対して新しい有用な答えを見つけるためには、その問題について多くのことを知り、現在の知識と無知の境界線がどこにあるのかを正確に知る必要があります。問題について多くのことを知らなければ、もっともらしい診断検査や介入が開発されることを想像することはできません。現在の知識の状態を知らなければ、正しい「次のステップ」の方向に向かっているかどうかを知ることも困難です。

このセクションで紹介する質問に対する最初の答えは、研究可能な質問は、健康問題に対する知識の「最先端」を見つけることから生まれるということです。応用研究では「質問は簡単だが、答えを出すのは難しい」場合があります。これは、質問が良くないのかもしれません。思ったものそのままを、「質問」にしても答えを得ることはできないかもしれません。現在の応用研究の方法で有効な答えが得られるように、質問を構成しなおすのです。

研究の質問の構成には多くの要因が関与しています。特に応用研究では有効な質問に構成するというのは、一瞬でひらめくようなものではなく反復的な作業が必要です。反復的な要素には、臨床問題の基本的な次元、デザインの妥当性と実現可能性、一緒に作業する仲間、問題に取り組むために必要な他のリソース、試験を実施する際に生じる偶発的な問題などが含まれます。主な相互作用は、あなたが本当にやりたいことと、実際に可能なことの間にあります。これは直線的なプロセスではありません。

基本的な問題に対処し、質問の最初の方向性が有望だと思ったら、重要な追加質問に対処しなければなりません。

  • 評価の適切な段階は?
  • 内部妥当性は達成できるか?
  • 外部妥当性(一般化可能性)はどの程度まで達成可能か?
  • あなたの状況が許すものは何ですか?
  • あなたは何をする余裕がありますか?
  • 「アイデア」と「実現可能性」のバランスは?

FDA COVID-19流行下での治験の実施に係るガイダンスを公開

FDAはCOVID-19流行下でのガイダンスを公開

対象

治験依頼者・治験責任医師・IRB

公開日時

2020年3月18日

背景

新型コロナウイルスCOVID-19による感染症が蔓延しつつある。

コロナウイルスに試験施設の人員の感染や被験者の感染などが発生した場合、試験施設の閉鎖、移動制限、治験薬のためのサプライチェーンの障害などが生じうる。このような場合には、プロトコールの変更は避けられない。

COVID-19による影響は、試験中の疾患の特徴、試験デザイン、試験が実施されている地域など多数の要因によって起こりうる。

推奨事項

  • GCP順守を維持し、臨床試験の完全性を損なうリスクを最小化しながら試験参加者の安全性を確保すること

実施中の試験

代替プロセスの実施は可能な限りプロトコールと一致しているべきであり、治験依頼者及び治験責任医師は、実施した不測の措置の理由を文書化すべきである。治験依頼者及び治験責任医師は、COVID-19に関連した制限が、どのように試験実施の変更とその変更の期間につながったのかを文書化し、どの試験参加者が影響を受けたのか、どのように影響を受けたのかを示すべきである。

試験の評価については、電話連絡やバーチャルな訪問などで代替できる方法により実施、また、もはや治験薬や試験サイトにアクセスする必要のない参加者には追加の安全性モニタリングを実施すること

試験の受診スケジュールの変更、欠席、または患者の中止は、情報の欠落につながる可能性がある(例えば、プロトコールで指定された手技の場合)。症例報告書には、欠落したプロトコール指定情報(例えば、COVID-19による試験受診の欠席や試験中止など)のCOVID-19との関係を含め、欠落したデータの根拠を説明する具体的な情報を記載することが重要であろう。臨床試験報告書にまとめられたこの情報は、治験依頼者及びFDAにとって有用である。

臨床現場での予定された診察に大きな影響が出る場合、通常、自己投与で配布されているような特定の治験薬は、代替の安全な投与方法を利用することが可能であるかもしれない。通常、医療環境で投与される他の治験薬については、代替投与(例えば、訓練を受けているが研究者以外 の職員による訪問看護や代替施設など)の計画についてFDAの審査部門に相談することが推奨される。いずれの場合も、治験薬の説明責任を維持するための既存の規制要件は依然として残っており、これに対処し、文書化すべきである。

有効性評価については、可能であれば、バーチャル評価の利用、評価の遅延、研究特異的検体の代替採取等、有効性評価のプロト コルの変更について、適切な審査部門との協議を行うことを推奨する。有効性評価項目が収集されなかった個別の事例については、有効性評価を取得できなかった理由を文書化する(例:COVID-19 によ る具体的な制限事項を明らかにし、プロトコールで指定された評価を実施できなかった理由を明らかにする)。

開始前の試験

治験依頼者、治験責任医師、及び IRB は、試験実施施設における COVID-19 対照措置の結果として試験が中断される可能性がある場合に、試験参加者を保護し、 試験の実施を管理するために使用するアプローチを記述するための方針と手順の確立と実施、又は既存の方針と 手順の改訂を検討すべきである。方針と手順の変更は、インフォームド・コンセントのプロセス、試験の訪問と手順、データ収集、試験のモニ タリング、有害事象の報告、及び渡航制限、検疫措置、または COVID-19 疾病そのものに起因する治験責任医師、治験実施施設のスタッフ、及び/またはモニターの変更への影響に 対処しうるが、これらに限定されるものではない。方針と手順は、COVID-19の管理と管理のために適用される(地域または国の)方針に準拠しているべきである。上記の変更の性質に応じて、適用される規則の下でプロトコルの修正が要求されることがあります。

以上は一部抜粋の情報です。詳細はオリジナルをご参照ください。

ガイダンス(オリジナル)

EMAも治験依頼者向けガイダンスを3月20日付で公開

PMDAも関連のQAを3月30日付で公開

各施設での対応状況(5月14日付)

class-oembed.php is deprecated since version 5.3.0

class-oembed.php is deprecated since version 5.3.0! Use wp-includes/class-wp-oembed.php instead. in ….

WordPressをアップデートしてからずっとこのエラーが出続けていて、よくわからないまま放置していたのですが、このフレーズでGoogle 検索すると私のページがトップに出てくるようになってしまいました。エラーメッセージを見ると推奨しないだけで、リスクがあるとか、使えないとかいう訳でもないようです。

そもそも、こういうエラーメッセージをページの最上部に表示するのは不自然です。と思ってみていたら、どうやらデバッグモードになっているらしいことがわかりました。なんでそうなっているのかわかりませんが。とりあえず、インストールの時に設定した wp-config.php のなかの

define(‘….’, ‘….’)

が連続する箇所の最下部に以下を追記しました。

define( ‘WP_DISABLE_FATAL_ERROR_HANDLER’, false );   // 5.2 and later
define( ‘WP_DEBUG’, false );

とりあえず、これでうっとうしかったメッセージは見えなくなりました。(2行目はもともと書き込まれていたので追記でもないか?)

とりあえず、めでたし!

CDCのサーベイランスアルゴリズム

CDC(Centers for Disease Control and Prevention)

最近安倍総理大臣もこの言葉を覚えた模様で「日本版CDC」をというような使い方がなされています。業界の人にとっては、ガイドラインを出しているのでその周辺でお目にかかることが多いのではないかと思います。私は、1995年公開の映画「アウトブレイク」で初めて耳にしました。1999年に留学したFDAとは、同じHHSの下部組織、つまりFDAとCDCは組織図上は横並びでした。CDCはどういった仕事をしているのでしょうか?業務は多岐にわたります。CDCの仕事を身近に感じたのは、1999年留学した年に、テレビで「鳥の死骸から西ナイルウイルスが検出された」という発表でした。米国には鳥の死骸のウイルス検査をしている行政機関があることに驚きました。その後ニューヨークでは夜間にヘリコプターで住宅街に殺虫剤をまくというプロジェクトが放送されていました。夜間に殺虫剤をまくので窓を閉めて寝るようにという放送がされていました。テレビの放送によると、「人体には無害な殺虫剤をまくが、念のため窓を閉めておくように」という事でした。

次に私が目にしたのは、FDAのCBERと共同してワクチンの副反応を集めて集計している業務です。パピローマウイルスワクチン、いわゆる「子宮頸がんワクチン」を知り合いたちと集計したのを覚えています。当時日本では上市前でしたが、すでに上市されていた米国のデータではStill病のような副反応が報告されているという内容でした。

サーベイランスのアルゴリズム

そして今回の新型コロナウイルス肺炎の騒ぎで、伝染病のサーベイランスと結果次第では早めの対応を日本でもできるようにという事で、「日本版CDC」をという議論が出てきているのだろうと思います。ただ、良く判らないのがその機能を担う機関が日本に全くないのかというとそういう訳でもないように思います。それは、さておき感染症のサーベイランスはどんな風にデータを評価しているのか少し調べてみました。Getting started with outbreak detection (アウトブレイクを検出することから始めよう)という論文によるとCDC algorithmという手法があります。新たに発症した症例数を週ごとに集計して、過去の発症例数と比較して変動の範囲を超えて感染者が増加した場合に、そのシグナルを検出する手法です。どんなふうになるのか、論理的な事や数式が出てきて良く判らなくなるよりは、実際のCOVID-19の日本のデータ(3月10日までの集計)を流し込んでどういったアウトプットが得られるのか、ながめてみることにしました。

とりあえず結果です

図はFarringtonアルゴリズムの出力です。四角い柱で1日ごとの度数が表示されています。右端のピークが3月6日。初めのアラートが1月28日(3例報告の日)。

Rplot

実は、CDCが感染の流行をモニターしているアルゴリズムは週ごとのデータしか解析しないということで、今回のような短期のデータを日ごとで集計しようとするとエラーになりました。そこで教科書にCDCのアルゴリズムと列挙されていましたもう一つのアルゴリズム Farringtonのアルゴリズムで集計してみました。とりあえず、過去50日分の報告件数から、変動の範囲内なのか流行の兆しなのかを計算しているようです。この手法は、日ごろから散発的に報告があるような疾患で、急に増えて流行の兆しではないかというのを早期に発見する目的で使用するのに適している様で、COVID-19の様に全く新しい疾患に対しては、この手法は向いていないように思いました。残念。

A statistical algorithm for the early detection of outbreaks of infectious disease, Farrington, C.P.,Andrews, N.J, Beale A.D. and Catchpole, M.A. (1996), J. R. Statist. Soc. A, 159, 547-563.

https://www.jstor.org/stable/2983331?seq=1


library(“surveillance”)
library(readxl)

X0020_STS <- read_excel(“COVID_STS.xlsx”)

CovidDisProg <- create.disProg(week = X0020_STS$week,
observed = X0020_STS$observed,
state = X0020_STS$state,
start = c(2018, 1),
freq=365,
epochAsDate=TRUE)

#Do surveillance for the last 50 days.
n <- length(CovidDisProg$observed)
#Set control parameters.
control <- list(b=2,w=3,range=(n-50):n,reweight=TRUE, verbose=FALSE,alpha=0.01)
res <- algo.farrington(CovidDisProg,control=control)
#Plot the result.
plot(res,disease=”COVID-19″,method=”Farrington”)

# sts.cdc <- algo.cdc(CovidDisProg, control = control)
# <<<error>>> algo.cdc only works for weekly data.
# plot(sts.cdc, legend.opts=NULL)


使用した集計済ファイル

https://gis.jag-japan.com/covid19jp/?fbclid=IwAR3FWAcLkQvXDTUUMtNwm7qRFhplIxSREML5m-rrPXWzfz7IxVANOBdSeSY

KRAS.G12C ミュータント分子と阻害薬の構造

はじめに

KRASは悪性疾患でしばしば変異するがん遺伝子で、腫瘍でのシグナル伝達分子をコードします。その変異分子は以前より報告されていましたし、阻害薬の開発が試みられていましたがなかなかうまくいかなかったという事で、Undruggable KRASとも呼ばれていました。先日の飲み会で、とある先生が、このKRAS分子変異であるG12C(12番目のGlyがCysに変わる変異)に対する阻害薬が有望そうだというような話をされていました。酔っていたので詳しいことは覚えていませんが、とりあえず調べてみるとAmgen社から有望そうな阻害薬AMG510が臨床開発に進んでいるというようなことが解りました。1

この阻害薬の興味深い点は、変異することでCysアミノ酸残基ができるため、この性質を利用してS-Sジスルフィド結合をもたらすような最適化がなされている事です。どういう事かというと、他のATPに似た分子が水素結合での緩い結合を複数形成して結合部位に固定されているのに対して、ジスルフィド結合という共有結合で結合部位に結合されています。共有結合は水素結合より強い(外すのに大きなエネルギーが必要)ですので、水素結合を利用した阻害薬より強力な阻害作用が期待できそうです。それが、変異分子に特異的に作用するという点が味噌です。

また、アロステリック酵素という事で阻害薬が結合すると、分子全体の構造が大きく影響を受けるようです。ということで、その変化をとりあえず見てみます。

方法

だいたい前出の記事と同じ方法でモデルを作成しました。元になる構造は次のもので、P68Xには阻害薬が12番目のシステインに共有結合していました。また、野生型の構造では1番目がMet(合成の際の翻訳開始コドンがATGなのでMetになってしまうが成熟タンパクではなくなることが多い)になっていたので、問題のG12Cの場所は13番目と1個分ナンバーがずれてました。

1. 野生型ヒトKRAS :PDB エントリ 5O2S2

2. 変異KRAS.G12C: PDB エントリ 6P8X3

結果

野生型

wild-type

G12C

G12C

上記を重ねあわせた物

full

slabモードで野生型

wild-type_slab

slabモードで変異型

G12C_slab

slabモードで重ねあわせた物

slab

References

1.
AMG 510 First to Inhibit “Undruggable” KRAS. Cancer Discov. 2019;9(8):988-989. [PubMed]
2.
Guillard S, Kolasinska-Zwierz P, Debreczeni J, et al. Structural and functional characterization of a DARPin which inhibits Ras nucleotide exchange. Nat Commun. 2017;8:16111. [PubMed]
3.
Shin Y, Jeong J, Wurz R, et al. Discovery of <i>N</i>-(1-Acryloylazetidin-3-yl)-2-(1<i>H</i>-indol-1-yl)acetamides as Covalent Inhibitors of KRAS<sup>G12C</sup>. ACS Med Chem Lett. 2019;10(9):1302-1308. [PubMed]

COVID-19 の原因病原体であるコロナウイルスSARS-CoV-2のタンパク質の構造

COVID-19の原因ウイルスであるSARS-CoV-2のMproというタンパク質の構造がPDBに公開されていました。エントリは6LU7。PDBの解説の書き方からすると、このウイルスのタンパク質で他にも構造が決定されている分子があるけれども、(無料で無条件に)公開されているのはこれだけだという様に取れます*1。新しいものを発見したとして、その知財を囲い込んで自分達の金儲けにするというのは20世紀的なアメリカンドリームであって、ものが不足していた頃の考え方で時代遅れでないかと。発見したもので社会の様々な問題を解決したり、世の中を良くする様にというような考え方が広がらないかなぁ。それはさておき、タンパク質の発現にバキュロと昆虫細胞を使った系が多い中、このタンパク質は私が慣れ親しんだBL21(DE3)で発現しています。公開されたものを見てみましょう。(レンダリングは私がしましたが、構造はPDB 6LU7を使用しています)

*1 その後多くの構造が公開されています。ACE2とウイルスのタンパク質の結合についてを別記事に追加しました。(2020.04.11)

SARS-CoV-2コロナウイルス3CLヒドロラーゼ(Mpro)のタンパク質で、登録された構造全体(1分子分)を表示しています。Mpro(白)以外にオリゴペプチド様の阻害薬(薄紫)が一緒に含まれています。

Covid2019A

阻害薬付近が見えやすいように薄切り(Slab)にしてみます。

Covid2019C

両分子間で水素結合がありそうなところを見やすい表示にしてみました。ちゃんとはまり込んでいるような感じになっています。

Covid2019B

PDB newsによると、「PDBアーカイブのエントリーと比較すると、少なくとも90%の配列相同性を持つ蛋白質が95件のPDBエントリーで同定されました。さらに、これらの関連蛋白質構造には、約30個の異なる低分子阻害薬が含まれており、新薬の発見に役立つ可能性があります。」とのこと。それらの阻害薬は治療薬の開発の出発点になるかもしれません。

誰が科学を殺すのか

なかなか衝撃的なタイトルの書籍で、興味深く読ませていただきました。サブタイトルが示す【科学技術立国「崩壊」の衝撃】が示すような現象の、部分部分はこれまでも少なからず報道されていましたが、新しい情報を入れつつ、踏み込んだ取材がなされていました。私の見方では、どこかの誰か個人が悪さを働いているというよりは、日本国民の全体のムードというか、時代の空気に流されていくことで、こういう状況になってきているのだろうなと思いました。

身近な例でも

この書籍の主題とは別に、身近なところでは環境が厳しくなってきています。具体的にどういう集計なのか、わかりませんが10分の1というのが実態を反映している数字であれば、相当にゆゆしき状況です。

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法改正で良くなるか?

Japanese Cancer Trial Network (JCTN)ではホームページで法改正への提言を訴えています。臨床研究法の制定には、一部の研究者らの不正がきっかけとなった側面があり、(元)研究者らが他研究者らの首を絞めている構図だったりします。科学コミュニティで、プロフェッショナルとしての自浄作用がうまく機能しなかったがために、法律で締め上げられたりするわけです。

それはさておき

私自身がかつて、観察研究のページで描いた内容もあっという間に時代遅れな感じになってしまいましたので、少し補足を。

QAの改訂1

QAの改訂で変わった点ですが、旧問51では、「診療の一環として」行えば、visitや検査の回数が増えても、通常行わないような検査であっても「観察研究」にできるように読めました。この旧問51に相当する新問1-11では、そのような読み方ができない形に改められました。(図は旧新の順です)

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QAの改訂2

QAの改訂で旧問59に相当する新問1-12, 1-13ではおなじみ「軽微な侵襲」という言葉が消えました。「軽微な侵襲」も、施設によっては柔軟すぎる運用をやっていたのではないかという懸念もあり厳しくしたのか?とも勘ぐってしまいます。治験のバイオマーカー研究では、普通の感覚では軽微とは言い難い検体採取が必要で、かといって、観察研究としてやるとの治験や特定臨床研究にするのとでは手間が大いに変わります。(だからと言って適当でいいはずもなく)(図は順に旧新)

visitについては、負担が少ないのであればちょっと多めになる程度なら観察研究として実施できるようです。

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バイオマーカー研究の位置づけ

2019.3.31版の事例集では、治験に付随するバイオマーカーの研究は「医薬品の安全性有効性をみる」わけではないので観察研究で良いということになったようです。

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チェックリスト

この辺りをまとめたホームページでは、チェックリストが提供されています。

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とりあえず、アップデートはこの辺で

新型コロナウイルス

2020年1月24日付のNew Engl J Med誌には新型コロナウイルスに関連した記事が複数123掲載されています。無料で読めるようになっていますので、購読契約された職場でなくても読めます。(職場で購読契約しているovidはリアルタイムで読めなくて、少し遅れて全文を見ることができるようになります)スタンリーパールマン(真珠男?)さんの論説2からの情報を中心に、少し整理してみました。

新型コロナウイルスの名前

2019-nCoVと暫定的に命名された。

2019-nCoVが見つかった場所

中国武漢のシーフード市場、生鮮食品市場(wet market)にさらされているヒトに見つかった。

2019-nCoVについて

人から人への感染

当初の報告では人から人への感染は「ない」あるいは「限定的」とみられていたが、1/24/2020現在では人から人への感染は発生しているとされている。かつて流行したSARS-CoVやMERS-CoVのアウトブレイクと同様に重症の呼吸器感染症を引き起こす。1/24/2020現在、800を超える症例が報告されていて、感染した人のうち死亡した者の割合は3%と報告されている。(https://promedmail.org/)

ゲノム配列

同誌のZhu et alが報告した通り3、2019-nCoVのゲノム配列が決定されている。SARS-CoVの配列と75-80%が共通で、いくつかのコウモリコロナウイルスと密接に関連している。初代ヒト気道上皮細胞を用いて培養することができる。培養法は、治療法を開発するための基礎研究に使用できるかもしれない。たとえば、迅速診断法の開発を通して、市場・野生の動物や人での感染者の割合を評価して対策を検討することが可能となる。また、治療薬・ワクチン・動物モデルの開発を促進できる。

SARS-CoV, MERS-CoVで学んだことから

SARS-CoVのヒト気道上皮の受容体はACE2とされている。SARSの時の様にヒトACE2への結合の強い変異を2019-nCoVが獲得しヒト宿主への適応力を高める可能性が指摘されている。このヒト宿主への適応状況を広範囲にモニターする必要がある。

MERS-CoVはラクダから人へ感染し、SARS-CoVは生鮮市場の動物から人へ感染したとされているが、2019-nCoVはコウモリのコロナウイルスとの類似性が高いことから、コウモリがウイルスの主要な貯蔵所である可能性が高い。コウモリから中間ホストを介して感染するのか、コウモリから直接人に感染するかを明らかにすることは人畜共通感染の対策を策定する際に有用である。

References

1.
Munster V, Koopmans M, van D, van R, de W. A Novel Coronavirus Emerging in China – Key Questions for Impact Assessment. N Engl J Med. January 2020. [PubMed]
2.
Perlman S. Another Decade, Another Coronavirus. N Engl J Med. January 2020. [PubMed]
3.
Zhu N, Zhang D, Wang W, et al. A Novel Coronavirus from Patients with Pneumonia in China, 2019. N Engl J Med. January 2020. [PubMed]
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