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診断のおおまかな流れ

Step1 新生児・乳児の黄疸は要注意

新生児・乳児期早期には、生理的黄疸や母乳性黄疸が多数みられます。その中に潜んでいる病的な胆汁うっ滞性黄疸を見逃さないように注意することが重要です。ビタミンK欠乏性出血症で頭蓋内出血をきたしたり、胆道閉鎖症手術が遅れたりすることを防ぐ必要があるからです。このためには、黄疸の乳児を見たら必ず淡黄色便や褐色尿の有無を確認することと、直接ビリルビンを測定することが大切です。直接ビリルビンが1.5mg/L以上であれば、胆汁うっ滞性黄疸を考えて、ビタミンKの補充を行いながら肝・胆道疾患の鑑別を行います。詳細は黄疸の乳児を見たらを参照してください。

【診断のポイント】
  • 新生児に光線療法を行う時、乳児健診で黄疸を認めた場合には、便と尿の色調を確認し、採血して直接ビリルビンを測定する。
  • 灰白色便、淡黄色便は言葉で聞くだけでなく直接自分の目で確認するか、便色調カラーカードを使って保護者と対話する。
  • 最近、小児科学会で推奨された生後3か月まで毎週ビタミンKを補充する方法は、胆汁うっ滞児の頭蓋内出血を防ぐためにも有効である。

図2

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Step2 まず胆道閉鎖症の除外を!

 胆道閉鎖症の予後は、肝門部空腸吻合術(葛西手術)の時期が早いほど良好です。特に、生後60日以内の手術が望まれます。このためには、遅くとも1か月健診の時から黄疸の精査を開始できるとよいでしょう。胆道閉鎖症の診断方法は、このサイトの胆道閉鎖の項目を参照してください。一方、Alagille症候群に胆道閉鎖を合併することがありますが、これには肝門部空腸吻合術を行いません。したがって、胆道閉鎖症の手術前に心雑音聴取、心臓超音波検査、椎体のX線撮影、眼科検診などを行って、Alagille症候群の症候がないことを確認しておくことが大切です。

【診断のポイント】
  1. 胆道閉鎖症の手術はなるべく早期に行う。
  2. 乳児期早期の胆道閉鎖症は体重増加も良好で、元気な赤ちゃんが多い。
  3. 便色が黄色でも胆道閉鎖症は否定できない。
  4. 他の閉塞性黄疸と異なり、肝内胆管の拡張は通常はみられない。
  5. 迷うときは、早めに専門施設に紹介して胆道造影と肝生検を行う。
  6. Alagille症候群を疑う所見があれば、肝道閉鎖症の手術を行わない。


Step3 特異的な治療の必要な肝内胆汁うっ滞 ではないか?

新生児・乳児期の黄疸では、胆道閉鎖症と共に特異的な治療を必要とする疾患を鑑別することが大切です。まず以下の疾患を考えてみましょう。
 1)感染症:TORCHなどの先天感染や尿路感染症などの細菌感染症
 2)内分泌性:下垂体機能低下症や甲状腺機能低下症
 3)中心静脈栄養など薬剤性
 4)代謝性:シトリン欠損症(NICCD)ガラクトース血症遺伝性高チロシン血症?T型など

【診断のポイント】
  1. 上記の代謝性疾患では新生児マススクリーニングの結果に注意する。
  2. 乳児期の胆汁うっ滞性黄疸で低血糖、midline anomalies、小陰茎などを伴う場合は下垂体機能低下症を鑑別する。
  3. 低出生体重児では、中心静脈栄養、経口摂取不良、感染症、溶血、新生児仮死などが原因となって、胆汁うっ滞をきたしやすい。人工呼吸中に灰白色便を伴う時は、まず授乳前後に超音波検査を行い胆嚢収縮を確認して胆道閉鎖症を除外する。



Step4 遷延性黄疸では遺伝性胆汁うっ滞症をていねいに鑑別

 近年、多数の遺伝性胆汁うっ滞症が発見されています(図23)。これらは、1つ1つは比較的稀な疾患ですが、全体を合わせると胆道閉鎖症と同じくらいの数になるとされています。これらの疾患を正確に診断し、適切に治療することが重要です。このホームページは、主として、このStep4の鑑別に役立つように作られています。まず、以下のような項目をチェックしていきましょう(図4)。


図2

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図3

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図4

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1)ビリルビンと共に血清総胆汁酸とγGTを一緒に測定しましょう。胆汁うっ滞では通常、直接ビリルビン、胆汁酸、γGTは全て高値を示します。しかし、以下の場合は診断に直結する重要な所見です。 2)肝臓以外の臓器に異常はありませんか 3)代謝異常のスクリーニングとして 、血液ガス、血糖、乳酸、アンモニアの測定と、タンデムマススクリーニング、尿中有機酸分析、尿・血清アミノ酸分析を行う
4)肝生検は鑑別を進めるためにとても有用です
5)尿中胆汁酸分析は先天性胆汁酸代謝異常以外にも役立つ場合があります
6)超音波検査、MRCPや胆道造影、肝生検で胆道系の形態を調べる

胆道閉鎖Alagille症候群、カロリー病などのDuctal plate malformation、新生児硬化性胆管炎などの病気で役立ちます。

【診断のポイント】
  • 家族歴がなくても遺伝性胆汁うっ滞症は否定できない。
  • 一般検査を行い、よく考えてからこのサイトで特殊な検査を申し込む。
  • 胆汁うっ滞が続くと生後6か月過ぎ頃から皮膚の痒みが明らかになる。



参考:新生児乳児期の肝不全(出血傾向を伴う肝障害)の原因は?

 黄疸にプロトロンビン時間延長やヘパプラスチンテストの異常など出血傾向を伴ったときは、すぐにビタミンK(1 mg/kg)を静注しましょう。数時間後にもう一度プロトロンビン時間を測定しても改善が見られなければ、肝不全を考えます。肝不全の原因を探すときには、年齢がとても大切です。
 ?@新生児期:新生児ヘモクロマトーシス、新生児ヘルペス、低心拍出量の心奇形に伴う虚血性肝炎
 ?A生後3〜4か月:B型肝炎の母子感染(母親がHBe抗体陽性)
 ?B乳児期いつでも:原因不明の急性肝不全、ミトコンドリア肝症チロシン血症ガラクトース血症などの代謝異常

【診断のポイント】
  • 肝不全はALTでなく出血傾向、プロトロンビン時間の延長で診断する。
  • 肝不全の原因は発症年齢によって見当をつける。




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