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シトリン欠損症(NICCD)

<診断のポイント>

  • 新生児マススクリーニング陽性(ガラクトース、メチオニン、フェニルアラニン高値)
  • 閉塞性黄疸と淡黄色あるいは灰白色便を呈し、血液検査では胆道閉鎖症との鑑別が困難
  • 体重増加不良、血液凝固能低下、低蛋白血症、低血糖など、臨床症状・所見が多彩
  • シトルリンをはじめとする一過性の多種高アミノ酸血症
  • 肝生検にて胆汁うっ滞および脂肪肝の所見


<総論ないし病態>

概念・病因
 シトリン欠損症はSLC25A13遺伝子異常による先天代謝異常症であり、成人発症?U型シトルリン血症(CTLN2)とシトリン欠損による新生児肝内胆汁うっ滞(NICCD) に分類されます。日本人の変異アレルの91%が6種(mutation I〜V、XIX)の高頻度変異であり、ヘテロ接合体(保因者)の頻度は1/65、変異ホモ接合体の頻度は1/17,000と常染色体の遺伝性疾患としては高頻度に存在します。

病態生理
 シトリンはミトコンドリア内膜に局在するアスパラギン酸・グルタミン酸キャリア(aspartate-glutamate carrier: AGC)です。AGCはミトコンドリアで生成するアスパラギン酸を細胞質に供給するとともに、リンゴ酸・アスパラギン酸シャトルを構成して細胞質のNADH還元当量をミトコンドリアに輸送する機能を有しています。シトリンの機能喪失は、尿素・蛋白合成、好気的解糖、糖新生、さらにはエネルギー代謝などに障害を与えます。その結果、シトリン欠損症患者では多彩な症状を呈します。一方、未発症の変異ホモ接合体も存在すると考えられています。

臨床像
図2
 [図1] ※クリックで拡大できます
 シトリン欠損症では、新生児期にNICCDを発症し、幼児から成人にかけては一見症状のない見かけ上健康な時期(適応・代償期)を経て、CTLN2を発症します。(図1)

 (1)NICCD
図2
 [図2] ※クリックで拡大できます

NICCDの40%は新生児マススクリーニング陽性(ガラクトース、メチオニン、フェニルアラニン高値)を契機に発見され、残りの症例の大部分は黄疸(直接ビリルビンの上昇)、淡黄色あるいは灰白色便を主訴に生後1〜4か月の間に受診します。他に症状として体重増加不良、検査結果では高胆汁酸血症、血液凝固能低下、くる病(高ALP血症や手関節X線所見)、低蛋白血症、低血糖、α-fetoproteinの上昇、シトルリンをはじめとする一過性の多種高アミノ酸血症など、非常に多彩な臨床像を呈します。肝組織像では胆汁うっ滞像とともに大小脂肪滴の沈着を伴う広汎な脂肪肝が特徴的です。(図2)

 (2)適応・代償期
多くのNICCD患児は1歳までに肝機能は正常化し、見かけ上無症状となります。離乳食が開始されると甘いジュースや米飯を嫌い、豆類や卵、乳製品や揚物など低炭水化物、高蛋白質、高脂肪食品を好むという特徴的な食嗜好が現れます。この特異な食癖はシトリン欠損による代謝不全を代償する合目的行動と考えられ、糖質(ジュース、飴など)の過剰摂取やアルコール摂取を避ける必要があります。
 (3)CTLN2
意識障害、失見当識、異常行動、けいれん、てんかん様発作など多彩な精神神経症状で発症し、高アンモニア血症、シトルリン血症、肝不全を呈して致死的となります。従来の高アンモニア血症に対する治療、とくに高カロリー輸液やグリセオール®は禁忌です。


<診断の詳細>

 この時期に閉塞性黄疸を呈する場合は、胆道閉鎖症を第一に疑う必要があります。NICCDは新生児肝炎と比べて直接ビリルビン、γ-GTP、総胆汁酸が高値をとることが多いため、血清生化学検査では胆道閉鎖症と鑑別が困難です。便色、肝の触診所見、腹部超音波検査、十二指腸液採取などの所見を総合して、胆道閉鎖症の可能性が低いと判断された場合は、肝内胆汁うっ滞の原因検索としてウイルス学的検査、血漿中アミノ酸分析、エコーガイド下経皮的針肝生検などの精査を行います。肝生検は、胆道閉鎖症の否定や肝内胆管減少症など他の肝内胆汁うっ滞との鑑別診断に有用であり、脂肪肝を認めた場合はNICCDの可能性が極めて高くなります。しかし、新生児・乳児早期に肝生検を実施できる施設は限られるため、症状および検査所見からNICCDが疑われる場合は、遺伝子診断を検討してもよいでしょう。


<治療と予後>

 NICCDに対しては、中鎖脂肪酸(MCT)ミルクを使用し、高ガラクトース血症がある場合には乳糖除去MCTミルク(蛋白加水分解MCT乳:ML-3)を使用します。薬物療法として、脂溶性ビタミン(A・D・E・K)の補充と利胆薬(ウルソデオキシコール酸)の投与を行います。
 シトリン欠損症の治療およびCTLN2の発症予防として、低炭水化物・高蛋白・高脂肪食療法、ピルビン酸ナトリウム投与が試みられています。肝移植は救命と代謝異常矯正に有用です。


<典型的症例>

 男児。在胎41週、出生時体重3010g、混合栄養。新生児マススクリーニングでは異常なく、新生児黄疸は軽度だった。2か月健診にて黄疸を指摘され、血液検査にて胆汁うっ滞性肝障害を認めたため、日齢70にて紹介入院となった。便は淡黄色、肝は4cm軟。総ビリルビン9.9 mg/dL, 直接ビリルビン 5.4 mg/dL, AST 109 U/L, ALT 50 U/L, LDH 890 U/L, ALP 3728 U/L,γ-GTP 408 U/L, TP 5.1 g/dL,血糖79 mg/dL, アンモニア <85μg/dL, 血清総胆汁酸 331.0 μmol/L, ヘパプラスチンテスト 45%,血漿中シトルリン 123.9μmol/L (5.1〜37.4), スレオニン 372.0μmol/L (6.2〜152.8), メチオニン 96.5μmol/L (13.4〜32.2),チロシン 131.3μmol/L (34.2〜93.8)(括弧内は基準値)。肝生検にて胆汁うっ滞および脂肪肝を、SLC25A13遺伝子解析にてII (IVS11+1G>A) / V (IVS13+1G>A) 変異を認め、NICCDと診断された。MCTミルク、脂溶性ビタミン補充にて加療し、生後4か月までに黄疸・アミノ酸異常が消失し、1歳までに肝障害・肝腫大も改善した。


<参考文献>

1) 大浦敏博:シトリン欠損症研究の進歩―発症予防・治療法の開発に向けて.日児誌113:1649-1653,2009
☆2) Kimura A, et al: Histological findings in the livers of patients with neonatal intrahepatic cholestasis caused by citrin deficiency. Hepatol Res 40:295-303, 2010
☆3) Ohura T, et al: Clinical pictures of 75 patients with neonatal intrahepatic cholestasis caused by citrin deficiency (NICCD). J Inherit Metab Dis 30:139-44, 2007
☆4) 田澤雄作:新生児胆汁うっ滞―新生児肝炎及びシトリン欠損による新生児肝内胆汁うっ滞の臨床を中心として.日児誌111:1493-1514, 2007

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