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ミトコンドリア病(ミトコンドリア肝症、ミトコンドリアDNA枯渇症候群)

<診断のポイント>

  • 発達の遅れ、けいれんなどの神経症状や体重増加不良などを伴うことが多い。
  • 原因不明の進行性の肝障害またはReye様症候群として発症することが多い。
  • 必ずしも高乳酸血症は伴わないことも多い。
  • 十分な量の肝組織と凍結保存が診断するために必要である。
  • 脂肪肝を呈する事が多く、線維化を伴うこともある。


<総論および病態>

ミトコンドリア病(ミトコンドリア呼吸鎖複合体異常症)は呼吸鎖(電子伝達系)または酸化的リン酸化の障害であり、多彩な臓器症状を呈する先天代謝異常症です。中でも肝障害が前面に出るものをミトコンドリア肝症といいます。ミトコンドリア肝症はミトコンドリア病全体の10%強を占めます。この中には主として乳児期に胆汁うっ滞を伴うだけでなく凝固能低下などを伴い進行性の肝障害をきたす「ミトコンドリアDNA枯渇症候群(MDS)」があります。ここ3年間で12例診断されています。


<診断の詳細>

ミトコンドリア肝症は高乳酸血症を認めないこともあります。本疾患を行う前に、血中アミノ酸分析、尿中有機酸分析、アシルカルニチン分析(タンデムマス)を行い、他の代謝性疾患を否定する必要があります。本症の診断の基本は、肝臓におけるミトコンドリア呼吸鎖の酵素活性測定になります。千葉県こども病院代謝科 村山か、埼玉医科大学小児科大竹までご相談下さい。血液や皮膚線維芽細胞のみで診断に至ることは非常に難しいです


<治療と予後>

MDSは進行性で予後は決して良くありません。しかし、コエンザイムQ10や各種ビタミン剤などの薬物療法や栄養療法によってトランスアミナーゼが改善することがあります。重篤な肝外症状(神経症状や心筋症など)がなければ、肝移植をする選択肢もあります。


<参考文献>

1)Sokol RJ: Mitochondrial hepatopathies. In: Liver disease in children. 3rd ed, Cambridge university press, New York, 2007: 803-29
2)Bernier FP, Boneh A, Dennett X, Chow CW, Cleary MA, Thorburn DR. (2002) Diagnostic criteria for respiratory chain disorders in adult and children. Neurology 59: 1406-1411
3)Thorburn DR, Sugiana C, Salemi R, Kirby DM, Worgan L, Ohtake A, Ryan MT. (2004) Biochemical and molecular diagnosis of mitochondrial respiratory chain disorders. Biochim Biophys Acta 1659: 121-128.
4)Kaji S, Murayama K, Nagata I et al: Fluctuating liver functions in siblings with MPV17 mutations and possible improvement associated with dietary and pharmaceutical treatments targeting respiratory chain complex II. Mol Genet Metab 97(4): 292-296, 2009

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