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胆道閉鎖

<診断のポイント>

  • 胆汁うっ滞性黄疸(閉塞性黄疸)がある。
  • 便の色調が黄色(あるいは淡い黄色)であることを理由に、「胆道閉鎖」を除外しない。
  • 術前診断では肝外性の徴候の有無を検索し、「Alagille症候群」を除外する。
  • 早期診断により早期の手術(2か月以内)を目指す。

【Clinical Pearls】
* 胆道閉鎖では正常出生体重児が多い。
* 肝外胆道系の完全閉鎖は生後に完成するタイプがある。この場合、生後しばらく経てから淡黄色便が明らかとなる。
* シトリン欠乏による新生児肝内胆汁うっ滞 (NICCD)は黄疸(直接型高ビリルビン血症)に比較して胆汁うっ滞(高胆汁酸血症及び高γGTP血症)が高度である。
* Alagille症候群では肝外胆管の低形成を伴う症例があり、通常の胆道造影では描写されないことがある。肝組織像では「肝内胆管減少症」があり、胆道閉鎖とは異なる所見を示す。この場合は、肝門部空腸吻合術(葛西手術)を行わない。


<病因・病態>

 病因としては、ウイルス、ductal plate malformation (DPM)が提唱されている。胆道閉鎖は(一部の症例を例外とし)完全肝外胆管閉塞である。未治療の場合、胆汁うっ滞が長期間持続し、胆汁性肝硬変(脾機能亢進症を合併)へ進行し、非代償性の肝不全に進行する。

*Ductal plate (DP) は胎生12週頃に出現する。以後DPの一部に管腔構造が形成され、門脈域結合組織内へ移動 (remolding)し、胆管が完成する(生後 1か月)。この remoldingの異常により、胆道閉鎖症、先天性肝線維症、Caroli病等が発生すると推定されている。胎生12週前後、胎児肝門部胆管は、菲薄な支持(結合)組織から厚い結合織内へ移動し再構築の過程を経るわけであるが、このremolding が障害される場合、菲薄な支持組織は胆汁流量の増加に対応できず、胆汁のリ−クが発生、炎症機序により胆管の障害、閉塞が発生すると推定されている。


<診  断>

 臨床的に、閉塞性黄疸(黄疸、濃尿、灰白色便)があり、脂溶性ビタミン欠乏症状(くる病、出血傾向など)、肝脾腫大があり、検査所見として、直接型高ビリルビン血症、高胆汁酸血症、高リポプロテインーX血症(あるいは高コレステロール血症、高リン脂質血症)、高γGTP血症があり、超音波検査では、胆嚢や肝外胆管が観察されない、あるいは左右肝内胆管が不明瞭である、十二指腸液検査で胆汁の流出がない場合、「胆道閉鎖」が疑われる。肝針生検が最も鋭敏性および特異性に優れている。門脈域の線維化、小葉間胆管の増生、胆汁栓などの胆汁うっ滞像を認めれば「胆道閉鎖」と診断できる。肝生検の施行ができないか、「胆道閉鎖」を否定できない場合には、開腹下の胆道造影及び肝生検で診断する

【Clinical Pearls】
* 胆道閉鎖症の胎便の色調は約70%が正常、黄色便の既往歴も約 70%、入院時に黄色便と判定された症例は黄色便(約 3%)淡黄色便を含めると約 30%となる。
* 母乳栄養児では、母乳中成分が灰白色便を隠蔽する危険がある。
*一般的に日齢の進んだ症例では肝脾腫大があり肝の硬度も高度、日齢が若い症例では肝脾腫大は軽度であり硬度も進行していない。しかし、日齢が早くても肝脾腫大や肝の硬度が高度な症例がある(出生前から完全肝外胆道閉鎖が完成し、胆汁性肝硬変が進行したと推測されている)。
* 母乳性黄疸及び特発性乳児ビタミンK欠乏症等との鑑別診断が重要である。胆汁うっ滞による二次的な脂溶性ビタミンK欠乏による出血傾向(頭蓋内出血など)に注意する。
* 血中γGTPは補助診断として簡便かつ有用である。新生児肝炎に比較し、胆道閉鎖症(手術前)では高値を示すが、平均値は週齢と共に減少する。 血中γGTPの推移には特に注意が必要である。正常では、血中γGTPは生直後高値を示すが、以後漸減する。胆道閉鎖では、生後1ケ月を底値とし減少する現象が認められる。しかし、週齢 4-5に底値を示した後に反転し漸増する特異なパタ−ンを示す。
* 超音波検査は一般補助検査として有用であるが経験のある検者を必要とする。
* 特殊検査としては、十二指腸液検査、肝・胆道シンチ、経皮的肝生検があげられるが、各施設の状況、現場医師の経験差で選択されている。十二指腸液検査が最も簡便である。
* 胆道閉鎖症の診断では、経皮的肝生検が最も信頼性の高い検査であるが、残念ながら一般的には行われていない(3%)。また、時間的余裕のない場合も、経皮的肝生検を割愛する。胆道閉鎖症の可能性が否定出来ない場合には、開腹下胆道造影あるいは経皮的肝生検を施行する。


<治療と予後>

 外科的治療(肝門部空腸吻合術)が選択される。生後2か月以内の早期手術が良好な予後につながるとされている。胆汁性肝硬変の進行例では肝移植が選択されることもある。肝門部空腸吻合術術後でも胆汁分泌が不十分で上行性胆管炎を繰り返し、肝硬変が進行した症例では肝臓移植が選択されることがある。

<参考文献>

1. 田澤雄作. 新生児胆汁うっ滞―新生児肝炎及びシトリン欠損による新生児肝内胆汁うっ滞の臨床を中心として. 日本小児科学会雑誌 2007;111:1493-1514.
2. 田澤雄作. 肝内胆管減少症状の概念、分類および病因. 小児内科 1987;19:215-220.
3. 田澤雄作, 白木和夫. 胆道閉鎖症の鑑別診断―特にAlagille症候群の除外についてー.小児外科 1999;31:237-241.

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