新生児肝炎は、1)新生児期に発症したと考えられるもので、多くは生後2か月以内に発見される肝内胆汁うっ滞で、顕性黄疸は1か月以上持続し、多くは6か月以内に消褪する、灰白色便(または淡黄色便)および濃黄色尿を伴う、2)組織学的には巨細胞性肝炎の像を見ることが多い、3)尿路感染症、敗血症、梅毒、その他の全身性感染症あるいは全身性代謝性疾患などに伴った二次性のものを除くと定義されている(厚生省特定疾患「難治性肝炎」「肝内胆汁うっ滞」調査研究班、昭和50年)。
新生児肝炎の病因は不明であるとされてきたが、「肝炎」が意味する感染あるいは炎症の結果ではなく、現在は、以下の複合要因によるものと考えられている
・ 胆汁分泌の未熟性(生理的胆汁うっ滞)
周産期の低酸素及び再潅流傷害(子宮内発育不全、仮死ほか)
細菌感染症(敗血症)
経口栄養開始の遅延(新生児壊死性腸炎、経静脈栄養など)。
臨床像: 黄疸 灰白色便 濃黄色尿
肝腫 脾腫
脂溶性ビタミン欠乏症(ビタミンD、ビタミンK)
体重増加不良
*明らかに病的な肝腫大及び脾腫大は各々 79%、37% に認められるにすぎない。
検査所見:血中直接型ビリルビン (高値)
血中総胆汁酸 (高値)
血清トランスアミラ−ゼ (正常〜高値)
血清 γGTP (軽中等度の上昇)
血清リポプロテイン−X (陽性または陰性)
十二指腸液検査 (黄色胆汁色〜無胆汁色)
腹部超音波検査*
肝生検*
合併症
脂肪便(体重増加不良)、脂溶性ビタミン欠乏症(くる病、出血傾向)、低血糖がある。低血糖は非徴候性の場合がほとんどであるが、低出生体重児で高頻度に認められる。稀ではあるが(壊死後性)肝硬変、肝がんの合併もある。
治 療
利胆・減黄を計る。近年では、フェノバルビタールの投与は推奨されていない。現在では、ウルソデオキシコ−ル酸 (10 mg/kg/day) の投与が選択されている。脂溶性ビタミン欠乏症(V.A、V.D、V.E、V.K)、特にビタミンD及びビタミンK欠乏症に注意する。体重増加不良、高アミノ酸血症(チロシン、メチオニン)、高ガラクト−ス血症があれば、補液、特殊ミルク(中鎖脂肪酸含有ミルク、乳糖除去ミルク、蛋白質・アミノ酸代謝異常症用ミルクほか)を選択する。予後不良例(肝硬変、肝不全)では肝移植が適応となる。
* フェノバルビタールの投与で減黄はえられるが利胆に効果がない。
経過・予後
新生児肝炎の多くは、生後3-6か月以内に黄疸は消失し、1歳前には肝機能の正常化が得られる。しかし一部では胆汁うっ滞性黄疸が遷延する、あるいは黄疸は消失しても肝機能異常が残る症例がある。
* 本邦例(100例)の検討では、12か月時、94例の患児で肝機能正常化が得られている。 2例は乳児早期に肝不全で死亡、2例は黄疸が消失したが肝機能異常が持続した(慢性肝炎)。2例では黄疸が持続、その中の1例では胆汁性肝硬変及び肝癌を合併して死亡(1歳6か月)している。
* 新生児肝炎の発症数は、胆道閉鎖と同程度(1/10,000出生)であったが、近年、減少傾向にある。医療技術の進歩、環境の改善、母乳保育の推進等がその因子として考えられている。
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