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周産期の異常・新生児仮死

<診断のポイント>

  • 急性及び慢性の周産期異常がある。
  • 胆汁うっ滞性黄疸(閉塞性黄疸)を認める。
  • 肝内胆汁うっ滞(新生児肝炎)を考える。
  • 周産期の異常や新生児仮死があっても、必ずしも胆道閉鎖症などの肝外性の病因を否定しない。


<病  態>

 新生児仮死は多様な臓器へ傷害を与えるが、肝臓では低酸素による肝壊死による虚血性肝炎 (ishemic hepatitis) が引き起こされる。新生児肝炎の約90%の症例で急性及び慢性の周産期異常が認められ、胆汁分泌の未熟性(生理的胆汁うっ滞)を背景とした「肝虚血」が病因・発症機序として提唱されている。これらの症例の約90% では肝細胞の巨細胞性変化、約25%の症例では脂肪肝が観察されている。
 周産期の肝虚血あるいは乏血傷害が起こる状況では、肝臓をバイパスする静脈管を介して臍帯血が増加し、肝血流の減少と再分布が起こりうると考えられる。その結果、胆汁分泌は減少し、さらに血流の再開に伴う虚血、乏血肝への酸素の再供給は再潅流傷害(ishemic-reperfusion injury)を引き起こし、その傷害を増幅するものと考えられている。

【Clinical Pearls】
* 先天性静脈管開存(11ケ月~10歳)では、全例で脂肪肝が観察されている。
* 胎児期には、静脈管(ductus nenosus) の開存などがあり、肝臓の血流は左葉が優位である (3:1)。日齢1で新生児仮死及び胎便吸引症候群で死亡した症例の肝右葉は、茶色味を帯びた脂肪肝、肝左葉は暗赤色(うっ血肝)という外観(two tone liver)を示していたと報告されている。


<診  断>

 急性及び慢性の周産期異常(仮死や子宮内発育不全など)の既往歴があり、閉塞性黄疸を認める症例では、急性及び慢性低酸素状態が病因と考える。大部分の症例 (80%)では、血清ビリルビンの減少(月齢 1-2)と共に血清γ-GTPの増加(-600700 IU/l:月齢 2-3)、その後の漸減及び正常化が観察されることも参考になる

【Clinical Pearls】
* 新生児仮死では、一般的にはLDHおよびCPKと共に、AST優位の一過性の高トランスアミラーゼ血症を経験するが1-2週で正常化する。
* 閉塞性黄疸を認める場合は、特にその障害が高度の場合は、胆汁性肝硬変(肝不全)への進行を懸念する。あるいは、その後、黄疸が消失しても、潜在性の進行性肝病変(肝線維症、肝硬変)が存在する可能性を念頭におく。
* 血中γ-GTP上昇の機序としては、胆管の虚血性傷害、あるいは肝細胞ATP の枯渇による胆汁分泌の減少が考えられている。


<治療と予後>

 治療は「新生児肝炎」に準ずる。一般的に、新生児肝炎と同様、その後の経過は良好である。黄疸は6ケ月以内、肝機能検査は 1年以内に正常化する。稀ではあるが、軽度の閉塞性黄疸から高度な閉塞性黄疸へ進行する症例、新生児期以降に黄疸が持続して胆汁性肝硬変へ進行する症例、あるいは黄疸が消失した後に壊死後性肝硬変が潜在して肝不全に至り、肝移植の適応となる症例もある。


<参考文献>

1. 田澤雄作. 新生児胆汁うっ滞―新生児肝炎及びシトリン欠損による新生児肝内胆汁うっ滞の臨床を中心として. 日本小児科学会雑誌 2007;111:1493-1514.
2. Vajro P, Amelio A, Stagni A, et al. Cholestasis in newborn infants with perinatal asphyxia. Acta Paediatr 1997;86:895-898.
3. Jacquemin E, Lykavieris P, Chaoui N, et al. Transient neonatal cholestasis: Origin and outocome. J Pediatr 1998;133:563-567.

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