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日本医科大学付属病院 心臓血管外科 病院講師 坂本俊一郎 |
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図1 |
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かねてより自律神経の興奮が心房細動の発症と維持に深く関わっているとの知見があり、昨今の心房細動の治療において外科内科問わず心臓に密に分布する自律神経を焼灼し、手術成績を向上させることができるとの報告があります。
心臓の自律神経は心臓表面に広く分布していますが、神経細胞、及び神経線維の密集する心臓神経叢といわれる場所が左房、特に肺静脈周辺にあり、外科手術では心臓表面の脂肪組織へと微弱な電気刺激を与えることにより、自律神経の反射、主に脈が遅くなることで同定できます。
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個人差はありますが、2~5箇所の心臓神経叢を確認でき、これらを高周波エネルギーにより局所的に焼灼を行います。焼灼は自律神経の反射が消失するまで繰り返されます。(図1)
この心臓神経叢の焼灼術によって術後早期の心房性期外収縮や心房細動の発症を予防することが期待されます。心房細動のうち発作性心房細動は肺静脈より発生する心房の異常興奮が原因であることが多く、心房細動の7~8割が肺静脈隔離術(肺静脈4本を全周性に焼灼して心房との交通を途絶させる)で治療されますが、この肺静脈隔離術に加えて心臓神経叢焼灼術を施行し、肺静脈隔離術よりも高率に洞調律を維持しえたとの報告があります。
叉、慢性心房細動に対しても標準的なメイズ手術に加えて心臓神経叢の焼灼術を施行し、成績を調べる施設もでてきました。この他、心臓神経叢の焼灼術によってメイズ手術を簡略化し、心臓を拍動させたまま胸腔鏡を用いて治療を行う、低侵襲心房細動外科手術の試みもあります。
いずれにせよ、心臓神経叢への焼灼術は心房細動外科治療の一環として期待されますが、その一方、焼灼効果がどの程度で叉どのくらい長期にわたり持続しえるかはいまだ明らかとなっていません。
動物実験では4週間で神経の再生が示唆されており、今後の調査結果が待たれるところです。 |
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