日本不整脈外科研究会
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Japanese Society For Arrthythmia Surgery
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日本不整脈外科研究会 Top >> 治療方法 >> カテーテル治療 / 頻脈性不整脈に対する高周波カテーテルアブレーション
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治療方法
 
カテーテル治療
 
頻脈性不整脈に対する高周波カテーテルアブレーション
群馬県立心臓血管センター 循環器内科 循環器内科第二部長 内藤滋人
 
1.はじめに(カテーテルアブレーションとは 図1)
 
図1
  高周波カテーテルアブレーションは、カテーテルの先端から高周波による熱エネルギーを不整脈の発生起源やリエントリー回路に加えることにより、薬剤抵抗性の頻脈性不整脈、期外収縮を根治させる治療法です。
電気生理学的検査によって不整脈の機序および至適通電部位を決定し、通常500kHz前後の高周波電流を用いて、カテーテル先端と背部対極板との間で通電します。
電流、電圧、抵抗(インピーダンス)、先端温度をモニターして、通常20-50Watt、30-60秒間の通電を行います。
先端温度は50-70度に上昇し、心筋組織の凝固壊死が得られます。

先端電極が4-8mmの両曲がりのカテーテルが開発され、成功率および安全性が向上しました。
障害組織の深達度は3-8mmであり、安全性の面でも問題なく、WPW症候群、房室結節回帰頻拍などの上室性不整脈に対して非常に有用です。
しかし器質的心疾患に合併した心室頻拍は、focusが幅広くかつ心筋深層に存在するため以前は治療困難でしたが、近年、心筋深層まで到達可能かつ血栓予防にも有用である冷却機能付きカテーテル(irrigation catheter)が開発されています。
カテーテルアブレーションの最大の利点は、薬物療法と異なり根治療法であるという点です。
通常の症例では、3-4日間の入院で施行可能であり、早期社会復帰も可能です。
 
2.カテーテルアブレーションの適応疾患(図2)
 
図2
 
図3
 
図4
 
図5
 
1.WPW症候群
WPW症候群はアブレーションの最も良い適応です(図3)。
副伝導路を介した頻拍には、房室結節と副伝導路の間で心房、心室の一部を含め興奮が旋回する房室回帰頻拍(AVRT)と心房細動における無秩序な心房興奮が副伝導路を介して高頻度に心室を興奮させる偽性心室頻拍(pseudo VT)の2種類があります。
成功率は95-98%と高率であり、薬剤抵抗性の頻脈を伴うWPW症候群ではfirst choiceです。
再発率は7%前後と報告されています。
 
2.房室結節回帰頻拍(AVNRT)
AVNRTは、興奮が遅伝導路(slow pathway)を順行性に、速伝導路(fast pathway)を逆行性に旋回する通常型AVNRTと、fast pathwayを順行性に、slow pathwayを逆行性に旋回する非通常型AVNRTの2種類があり、いずれも根治可能です。
AVNRTに対するアブレーションは、解剖学的指標および心内電位指標をもとに、後中隔のslow pathway領域を焼灼します。
房室ブロックの合併に注意が必要ですが、成功率は95-100%と高く、再発率は5-10%です。
 
3.心房頻拍(AT:atrial tachycardia)
心房頻拍は、心不全症状を呈することも多く、その機序によって、撃発活動(triggered activity)や自動能亢進(automaticity)による異所性心房頻拍とリエントリー(reentry)によるリエントリー性心房頻拍に分けられます。
異所性心房頻拍の好発部位は、右房ではcrista terminalis(CT)、上大静脈(SVC)、冠静脈洞(CS)に多く、左房では肺静脈入口部周囲に多く認められます。
カテーテルアブレーションの成功率は80-95%です。
リエントリー性心房頻拍は、洞結節周囲心房頻拍(sinus nodal AT)、外科的切開線周囲心房頻拍(incisional AT)などが日常的によく遭遇します。
Incisional ATは心臓手術後に認められ、右房切開線周囲を旋回するリエントリーであり、切開線から下大静脈間を焼灼してリエントリー回路を切断します。
 
4.心房粗動(common AFL)
通常型心房粗動(common AFL)は、12誘導心電図のII、 III、 aVF誘導にて鋸歯状の陰性F波を有し、そのリエントリー回路が明らかとなっています。
すなわち右房内において、右房側壁のpectinate muscleを下降し、三尖弁輪(TA)―下大静脈(IVC)間の峡部(isthmus)を通った後に心房中隔を上行する反時計回転のリエントリーです。
電気生理学的手法を用いて診断後、三尖弁輪-下大静脈間の峡部(isthmus)を線状に焼灼し、両方向性の伝道ブロックを確認します。
成功率は90-100%と良好です。
 
5.心房細動
心房細動に対するアブレーションは、肺静脈を中心とする巣状興奮(focal trigger)による心房細動発生の要因と、拡大、変性した左心房筋を中心とする器質(substrate)による心房細動維持の要因を考慮する必要があります。
現在、心房細動に対するアブレーションの方法として、肺静脈focal ablation、4本の肺静脈隔離術、拡大肺静脈隔離術、complex fractionated atrial electrogram(CFAE)を指標とする左右心房焼灼術などが施行されています。
CTやMRI画像の取り込みが可能な三次元マッピングシステムが使用可能となり、心房細動アブレーションにおいて非常に手助けになっています。(図4
成功率は、年齢、心房細動歴、左房径、基礎心疾患などによって異なります。
また発作性か、持続性かによっても異なります。比較的若年者で、左房の拡大がない薬剤抵抗性の孤立性発作性心房細動においては、75-85%の成功率が期待できます(図5)。
一方、高齢者で症状のない持続性心房細動例は、アブレーションの適応となりません。
慢性心房細動では、薬剤による心拍数コントロール困難例に対し、房室接合部のアブレーション(完全房室ブロック作製)と恒久ペースメーカーの植え込みが行われています。
 
6.心室頻拍(VT)
心室頻拍の中でアブレーションの良い適応となるのは特発性心室頻拍です。
①左右の心室流出路起源VT、②左室後下壁のプルキンエ線維のreentryによるVT(右脚ブロック+左軸編位)の2種類があり、いずれも成功率は90-95%と高率です。
器質的心疾患を有する心室頻拍に対するアブレーションは、瘢痕周辺部や瘢痕に挟まれた部位に存在する必須緩徐伝導路をターゲットとします。
水冷カテーテル(irrigation catheter)の使用や心外膜からのアプローチなどによりの成績はやや向上しています(50-70%)が、薬剤や植込み型除細動器(ICD)の適応を含めた総合的な検討が必要です。
 
3.カテーテルアブレーションの合併症
 
アブレーションの合併症は0.5%-2.0%と報告されています。
 
1.穿孔、心タンポナーデ
心嚢ドレナージで済むことが多いですが、外科的手術が必要なことがあります。
 
2.血栓症、塞栓症
脳塞栓、一過性虚血発作、安静解除後の肺塞栓に注意が必要です。
 
3.完全房室ブロック
AVNRT症例、前中隔副伝導路例において特に注意が必要です。
 
4.食道損傷
心房細動アブレーションの際に、左房―食道ろう(fistula) 、迷走神経障害による胃蠕動運動の低下が報告されています。
 
5.その他
横隔神経障害、大動脈弁閉鎖不全、冠動脈攣縮、穿刺部血種など。
 
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