心臓の4つの部屋を順番に動かしている電気系統に異常がおこり、異常な電気刺激が心室から発生し、そのために脈が乱れることを心室性不整脈といいます。 心室性不整脈には、(1)心室性期外収縮、(2)心室頻拍、(3)心室細動があります。 不整脈に対する心臓カテーテル検査(心臓電気生理学検査)を行うと、不整脈の機序(しくみ)や悪性度などがわかります。
心室性期外収縮(英語の略語でVPCあるいはPVCと言います)は健康診断などでよく見つかる、もっともありふれた不整脈のひとつです。
症状は人それぞれで、無症状から強い症状を訴える人までいます。
実は、健康診断などで病院に紹介される心室期外収縮の患者さんの約95%は治療の必要がありません。 しかし、残りの患者さんにはさらに悪性度の高い不整脈に発展する可能性があるため、治療が必要となります。
この判断の基準となるのは、1)基礎心疾患の有無と、2)期外収縮の悪性度です。
この心室性期外収縮が3つ以上連続して現れた場合を心室頻拍(英語でventricular tachycardia、略してVT)といいます。もともと心臓に病気がなく、数連発程度の心室頻拍なら心配ないこともありますが、心臓に病気があったり、連発の数が多かったりする場合は、危険性が高い不整脈になる可能性があります。 30秒以内に自然停止する場合を非持続性心室頻拍といい、30秒以上持続する場合、あるいは30秒以内に重篤な症状(意識消失、血圧低下、心不全など)が出現するために緊急治療が必要となる場合を持続性心室頻拍と分類しています。
通常、心室頻拍のリズムは規則正しく、その速さは1分間に120から250拍にもなります。
心拍数が遅いと症状が少ない場合もありますが、速いと血圧が下がってさまざまな症状が現れます。 また、心室頻拍からさらに最も悪性度の高い心室細動(英語の略語でVFと言います)に移行することもあります。
この場合には直ちに心臓マッサージなどの心肺蘇生術と心臓電気ショックが必要です。
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心室頻拍にはもともと心臓に心筋梗塞や心筋症などの病気があっておこる場合と、心臓にははっきりとした病気がなくてもおこる場合とがあります。 心室頻拍を引き起こす可能性のある代表的な心臓病としては、心筋梗塞、拡張型心筋症、肥大型心筋症、催不整脈性右室心筋症、QT延長症候群、心サルコイドーシスなどがあります。 一方、はっきりとした心臓病がない患者さんに生じる心室頻拍のことを、とくに特発性(とくはつせい)心室頻拍といいます。
心室の筋肉が変性し、異常に速い電気興奮が発生するようになったり、心室の筋肉内に電気興奮が旋回する異常電気回路が生じてしまったりすることが心室頻拍の起こる仕組みです。
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心室頻拍の連発数が少ない場合は、脈の抜ける感じ、脈が跳ぶ感じなどが代表的な症状です。
心室頻拍の持続時間が長くなると動悸感などの症状を自覚するようになります。
動悸は突然始まり、停止する時も突然なことが特徴です。
動悸とともに胸痛や胸部不快感を感じる場合もあります。
心室頻拍の心拍数が速くなると、血圧が低下するため、脳虚血症状が出現します。
脳虚血症状には、めまい、ふらつき、失神などがあります。 極端に血圧が低下するとショックの状態に陥ることもあり、緊急治療が必要です。
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ひとことで心室不整脈といっても、定期的に心電図をとって経過を観察するだけでよいものから、厳重な治療を要するものまでさまざまです。 心電図検査などで心室頻拍が認められた場合、その悪性度を診断し、治療の必要性を決定しなくてはなりません。 24時間ホルター心電図、運動負荷心電図、加算平均心電図、心エコー(超音波)などの検査を行い、多くは心臓カテーテル検査や心臓電気生理学検査(不整脈のカテーテル検査)が必要となります。 心臓電気生理学検査(写真EPL)は局所麻酔下に、足の太い血管(大腿静脈、場合によっては動脈も)から心臓内部に挿入した電極カテーテルを用いて行います。 最近は電極先端の位置を三次元的に表示させる画期的な医療機器(写真CARTO)が開発されたため、以前には解明できなかった複雑な不整脈の仕組みもわかるようになりました。 また、常に電極カテーテルの先端の位置がディスプレイ上に現れていますので、安全に検査や治療ができるようにもなりました。 レントゲン透視をあまり用いなくてもカテーテル先端の位置がわかるので、患者さんや術者のレントゲン被爆を最低限に軽減することも可能です。
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心室頻拍に対する治療としては、抗不整脈薬の内服、高周波カテーテル・アブレーション、心臓外科手術、植込型除細動器(ICD)などがあります。 心機能が悪く持続性心室頻拍の病歴がある場合には、植込型除細動器による治療が最も確実な方法です。原因となる心臓病がある場合は、それに対する根本的な治療も必要です。 意識消失したことのあるような心室頻拍や最も悪性度の高い心室細動に移行したことのあるような心室頻拍に対しては、抗不整脈薬内服、高周波カテーテル・アブレーション、心臓外科手術、植込型除細動器植込み術などのすべての治療法を駆使して治療しなくてはなりません。
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強い症状がある場合には救急外来を受診し緊急の治療をうけるべきです。 実際に症状のある際の心電図を記録しておくことは、その後の診断や治療にも極めて有用です。 健康診断の心電図などで無症状あるいは軽度の症状の非持続性心室頻拍を指摘されたら、悪性度の判定のため専門医の診察を受けることが必要です。
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