令和2年度「若手支援技術講習会」を終えて
若手支援技術講習会実行委員長 大島 正伸(金沢大学がん進展制御研究所) |
毎年9月初旬、2泊3日の日程で蓼科高原にて「若手支援技術講習会」を開催していましたが、今年は新型コロナウイルス感染拡大防止のため、9月11日にweb形式で講習会を開催しました。オンラインでの講習会に若手参加者が集まるか不安の中での公募でしたが、総勢77名の若手研究者の応募がありました。参加者には学部生2名、修士課程12名、博士課程24名の大学院生が含まれ、ここ数年で本講習会がearly exposureの機会として定着して来た印象があります。その期待に応えられるように、プログラムには最先端の研究だけでなく、自然科学についてより広い視野から考える機会となるように心がけて来ました。
今年は1日限りの開催のために、外部講師の先生による講演は2つだけでしたが、どちらも若手参加者の皆さんにとって記憶に残る講演会でした。畠山昌則先生(東京大学大学院医学研究科)にはヘリコバクター・ピロリ菌のCagAタンパクが胃がん発生を誘導する分子機構について、最新のデータを含めてご講演いただき、西川伸一先生(NPO法人オール・アバウト・サイエンス・ジャパン)からは、西欧における自然科学に対する考え方の時代的な変遷と、38億年前に遡る生命誕生(Abiogenesis)についてご講演頂きました。webinarによる講演会には、若手以外の研究者も加わって視聴者数は100名を超え、オンラインでの活発な質問が続きました。
若手による発表演題は、がん研究をはじめ、神経科学、行動科学、発生学から疾患モデル開発や細胞生物学などの基礎生物学まで多岐に渡り、8〜9名ずつのグループに別れて、3グループずつの発表会を並行して(3チャンネルで)開催しました。今年の新しい取り組みとして、若手セッションの司会を、これまでの若手講習会に参加して来た「若手の先輩」の皆さんに担当してもらい、実行委員が1人ずつアドバイザーとして各グループに参加しました。各参加者の皆さんには発表5分、質疑5分という短い時間でしたが、十分に準備して来たことがよくわかる発表が多く、積極的に質問する姿勢もとても印象的でした。アンケートの集計を待ちたいと思いますが、大学院生、ポスドクおよび教員の立場の違う皆さんが、それぞれに得られたものがあれば講習会は成功だったと思います。
毎年行っているワークショップですが、モデル動物作製、病理形態解析、分子プロファイリング、生理機能解析の各支援班から八尾良司先生(がん研究会がん研究所)、宮崎龍彦先生(岐阜大学医学部)、松本健先生(理化学研究所)、萩原英雄先生(藤田医科大学)の各先生方に、技術的な側面を中心に大変わかりやすく、また支援を利用した研究成果などを含めて紹介して頂きました。時間の都合で2つのワークショップを同時開催としたため、全ての講演を聞くことができなかったのが少し心残りでしたが、支援について若手の皆さんに伝える良い機会となりました。
最後に、事務局の皆さんには例年と違う全く新しい準備と手続きで、大変な準備をして頂きました。この場を借りて心より感謝いたします。お陰さまで心配したトラブルは全くなく2020年度の若手技術講習会を盛況に終えることが出来ました。有り難うございました。
ご参加の皆様
講演プログラム
特別講演1
西川 伸一(NPO法人オール・アバウト・サイエンス・ジャパン)
Abiogenesis:38億年前に新たに誕生した因果性
特別講演2
畠山 昌則(東京大学大学院医学系研究科・微生物学分野)
胃がんにおけるHit-and-Run carcinogenesisの実証に向けて
WS1(モデル動物作製支援)
八尾 良司(がん研究会・がん研究所・細胞生物部)
身近になった遺伝子改変動物~何のために何を作るか?
WS2(分子プロファイリング支援)
松本 健(理化学研究所 環境資源科学研究センター)
バーコードshRNAシークエンス技術による分子探索
WS3(病理形態解析支援)
宮崎 龍彦(岐阜大学医学部附属病院)
形態学的研究のキホン 組織の取扱と固定について
WS4(生理機能解析支援)
萩原 英雄(藤田医科大学 総合医科学研究所 システム医科学研究部門)
神経精神疾患モデル動物の脳における組織pHおよび乳酸濃度の網羅的解析