学会ジョイントプログラム
第11会場(研修交流センター4階 401会議室)
学会ジョイントプログラムA
<医療の質・安全学会>診療所のインシデント、アクシデントを測定し改善しよう
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企画意図
世界保健機関(WHO)は、患者安全を「ヘルスケアに関連したエラーや患者への悪影響を防止すること」と定義しており、その実現を医療における重要課題としている。プライマリ・ケア領域の患者安全は世界的にもブラックボックスであったが、近年はその研究が増加傾向にある。具体的には、ワクチン接種、投薬、診断、情報共有、患者確認などのエラーや転倒といった様々な問題が報告されている。中でも、ワクチン接種のエラーは約0.05%の頻度で起き、投薬エラーは1年あたり約160万件生じており、救急入院患者の9人に1人が薬剤関連の有害事象に伴うものとされている。加えて、外来患者の5%が診断エラーを経験しており、約50%の患者がその心配をしているとされている。
これらの問題の解消を目指す診療所の患者安全に関する研究によると、「病院よりも個人に判断が委ねられることが多いため、平時から個々の教育・コミュニケーション・振り返り・チームワークが大切で、インシデントレポートの活用も病院と変わらず重要である」とされている。
本セッションでは、WHOや英国家庭医学会(RCGP)などでの診療所インシデント・アクシデントの調査や、それらを用いた質改善について指導経験が豊富なDr. Andrew Carson-Stevensにお越しいただき、プライマリ・ケア医療者に「どのようにして安全ではない環境から学び、安全な環境へと改善するか」について学んでもらい、“医療従事者も患者も誰一人取り残さない安全な環境作り“を実現するきっかけとしたい。
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略 歴
アンドリュー・カーソン=スティーブンス教授は、アカデミックGPおよび医療サービス研究者として、患者や家族が経験した安全ではないケアからどのように医療・福祉機関が学ぶかについての研究をリードしている。カーディフ大学医学部Population Medicine部門の研究ディレクターとして、患者安全研究グループ(PISAグループ)を率いている。カーソン=スティーブンス教授の研究には、大規模な研究費による、医療における回避可能な危害の性質と負担の調査、日常的な患者安全データ(症例記録、インシデント報告、患者調査など)の分析からの患者安全に関する優先分野の特定、インシデント調査からの学習を共有するための方法論イノベーション、患者安全測定(分類法の開発)などがある。
カーソン=スティーブンス教授は、患者安全に関する世界保健機関(WHO)のアドバイザーを長らく務めており、患者報告安全アウトカムに関するOECDワーキンググループの方法論アドバイザーでもある。2016年よりオーストラリアのマッコーリー大学Australian Institute of Health Innovationの名誉教授、2019年よりカナダのクイーンズ大学の非常勤教授として、博士課程の学生を指導している。
演 者 | : | Professor Andrew Carson-Stevens(英国カーディフ大学 患者安全学教授) 青木 拓也(東京慈恵会医科大学) 小坂 鎮太郎(都立広尾病院) 荒神 裕之(山梨大学大学院総合研究部医学域) |
シンポジウム
第12会場(研修交流センター4階 402会議室)
シンポジウムB
新型コロナ地域療養神奈川モデルの経験から~多職種連携・遠隔看護・医療者の働き方の未来を考える~
座 長 | : | 古屋 聡(山梨市立牧丘病院) |
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企画意図
COVID19パンデミックの中で地域療養神奈川モデルの目的は、有限な地域リソース自宅療養中の命を守る事であった。患者数の変動とフェーズごとの症状の特徴や重症度も変化する中で、入院優先度スコアによるリスクアセスメントを行い、感染状況に応じて各所がフォローする対象範囲を変動させ、アプリケーションや自動音声電話を用いて症状の増悪を把握できる仕組みを利用した。遠隔看護でのモニタリングとケア、その遠隔看護と地区医師会・薬剤師会・訪問看護ステーション・介護事業所との多職種連携は、症状マネジメントのみならず、隔離による孤独からの「不安」を軽減することで自宅療養の限界閾値を高め、保健所・機関病院・救急隊の業務の負担軽減に寄与した。何よりも重要だったのは遠隔看護と訪問在宅医療ケアを担う地域との信頼関係の構築で在り、対面でのやり取りが無い中でも、オンライン定例会議での現地の感染状況・医療ひっ迫の状況とそれに応じたミッションの共有がなされたことが、地域療養神奈川モデルでは重要であった。
更に医療従事者も自分自身や家族の感染隔離・療養対応により就労困難となり、感染拡大期と閑散期、感染状況の地域偏在性により医療者の必要数に変動があったことも特徴的であった。この状況下において遠隔看護の勤務体系が在宅ワークや短時間就労を可能にし、居住地とケア対象地域が異なっても勤務できることが潜在看護師への雇用機会の提供・ICTコミュニケーションとデジタル化による医療者の働き方の多様性・人材活用へと可能性を広げた。そして遠隔看護の実践を通し、遠隔・電話による看護ケアに必要なコミュニケーションスキルと看護実践に必要な教育内容や研修カリキュラムの構築、遠隔看護の限界を考慮した地域の医療資源との連携マニュアル作成や業務運用体制の構築に繋がった。
演 者 | : | 富田 さつき(医療法人 社団富田医院) 椎名 美貴(悠翔会 在宅クリニック新宿MBC看護事業部) 眞榮 和紘(AMI株式会社) 小林 順子(小田原医師会訪問看護ステーション) 渡邊 千括(株式会社 優いちょう薬局) 長谷川 嘉春(小田原保健福祉事務所) |
インタレストグループ
第13会場(研修交流センター5階 51研修交流室)
インタレストグループC
誤嚥性肺炎のIllness trajectoryとPatient journey
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企画意図
誤嚥性肺炎に関する本インタレストグループでは、Illness trajectoryおよびPatient journeyの重要性に焦点を当て、参加者との深い意見交換を通じて、この領域における理解と臨床実践の改善を目指すものである。Illness trajectoryは、病状の変化及び終末期や死に至るまでのプロセスを指す概念であり、Patient journeyは、患者が病気を通じて日常生活、外来通院、急性期病院、慢性期病院、そして在宅医療に至るまで、さまざまなケアの場を移動する中で得られる経験を表す。 誤嚥性肺炎患者にとってのこれらの側面の理解は臨床的に極めて重要であるが、現状では十分に研究されているとは言い難い。本インタレストグループでは、Illness trajectoryとPatient journeyに焦点を当てたレクチャーを提供し、その後のディスカッションを通じて、誤嚥性肺炎診療におけるこれらの特徴を明らかにし、参加者からの洞察を得ることを目標とする。 このインタラクティブなセッションを通じて、誤嚥性肺炎に関する新たな研究の方向性を模索し、患者ケアの質の向上に寄与する知識の共有と理解の深化を図る。参加者は、臨床現場での経験や見解を共有することにより、誤嚥性肺炎患者のケアに関する総合的な視点を深める機会を得ることができる。本インタレストグループでは、医師のみならず看護師や管理栄養士、薬剤師、リハビリセラピストなどの多職種でのディスカッションをすることで、誤嚥性肺炎診療の質の向上を目指すことを期待する。
演 者 | : | 森川 暢(市立奈良病院) |
インタラクティブセッション
第14会場(研修交流センター5階 52研修交流室)
インタラクティブセッションD
理論家庭医療学を離陸させよう!
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企画意図
家庭医療学は、医学生物学的に定義される疾患(Disease)だけでなく、病い体験(Illness)を疾患と等価値のものとして扱うことを重視し、そのための臨床的方法論を発展させてきた。しかし、患者の病い体験、さらには回復体験も研究・教育対象ととらえるためには、哲学、文学・表象文化学、社会人類学、心理学、精神分析学など様々な知的領域を横断的に参照しなければならない。こうした分野はMedical Humanitiesや行動医学と呼ばれてきた領域である。ただし、それらは比較的医療一般にかかわる議論であり、プライマリ・ケアに特有の問題群まで射程を伸ばすことに関しては不十分であったといえるだろう。
プライマリ・ケアや地域医療の場面では、患者の主体とはなにか?それに関連して健康とはなにか、地域でひとが生きるとどういうことか、回復はどこで生じるのか、医療者の総合性(Generalism)とはなにか、など、特異的で固有の問題群が存在する。こうした問題群を取り扱う学問分野をわれわれは理論家庭医療学と呼びたい。
今回のセッションでは、日本における理論家庭医療学研究のキックオフとしての、問題提起、フラットなディスカッション、そして研究コミュニティ構築の端緒としたい。
第15会場(研修交流センター 音楽工房ホール)
インタラクティブセッションE
プライマリケアの現場で活用可能な筋骨格・運動器エコー!ハンズオン!
座 長 | : | 猪飼 浩樹(中部ろうさい病院) 上村 公介(順天堂大学医学部) |
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企画意図
筋骨格・運動器エコーハンズオンと自主トレ指導の体験セッションです。昨今、超音波を用いた診断・治療・injectionなどの発展は著しく、プライマリケアの現場でもますます使用される頻度は増えています。本セミナーでは、運動器の診察方法・解剖の理解から出発し、実際にエコーハンズオンを通じて実践的なスキルを磨き、プライマリケアの現場ですぐにでも使える運動器エコーの実用について学んでいきたいと思います。最後には患者さんへの自主トレ指導方法を参加者自身のカラダを動かして学ぶ機会を提供します。講師はリウマチ膠原病、総合診療、内科Generalsit、スポーツドクター、理学療法士、鍼灸師など日々筋骨格・運動器エコーを用いて日常診療を実践している者たちです。それぞれの視点から、参加者が実践的なスキルと知識を習得できる環境を提供いたします。本セミナーでは、皆様が筋骨格・運動器エコーのスキルを向上させ、患者さんへの最適なケアを提供できるようサポートいたします。