持続可能なプライマリ・ヘルス・ケアを目指して
Towards Sustainable Primary Health Care—Leaving No One Behind
大会長 井上 真智子
(浜松医科大学地域家庭医療学講座 特任教授)
この度、2024年6月7日(金)~9日(日)に、第15回日本プライマリ・ケア連合学会学術大会を静岡県浜松市のアクトシティ浜松にて開催することになりました。静岡県での開催という貴重な機会をいただき、会員の皆様に深く感謝申し上げます。
今回の学術大会テーマは、「誰一人取り残さない持続可能なプライマリ・ヘルス・ケアに向けて」です。
2015年に国連で採択された「持続可能な開発目標(SDGs)」では、「誰一人取り残さない―Leave No One Behind」を理念とし、2030年までに達成すべき具体的な17の目標を掲げています。社会的・経済的・環境的な側面から幅広い領域が取り上げられていますが、複数の領域で医療との深い関わりがあります。たとえば、ゴール3の「すべての人に健康と福祉を」は、保健医療システムとして、すべての人に質の高いプライマリ・ヘルス・ケアが提供なされることを目指すアスタナ宣言(2018年)でも受け継がれています。
しかし、COVID-19パンデミックは世界的に甚大な影響を及ぼし、ゴール3のみならず貧困や経済、ジェンダー平等といった他のゴールもまた大きく脅かされる事態となりました。プライマリ・ケアの重要性が再認識され、同時に多くの医療者が、医療と社会の関わり、持続可能な医療提供体制や働き方について考えさせられました。
さらには、戦争・紛争・災害、そして気候変動も、人々の健康や福祉を脅かす急務の課題となってきています。
本学会ではこれまで、人口減少社会におけるプライマリ・ケア提供体制のあり方、国際標準の専門医制度、健康の社会的決定要因(Social Determinants of Health)へのアプローチ、多職種連携による地域包括ケアシステムへの貢献、災害対策や医療人材の多様性推進といった課題に取り組んできました。
そこで、本大会ではこのような国内外の文脈をふまえ、「持続可能なプライマリ・ヘルス・ケア」のあり方を議論し、未来の医療へと引き継ぐため、多様な企画を展開したいと考えております。特別講演では、WONCA(世界家庭医機構)会長Dr. Anna Stavdalをお招きし、グローバルな観点からプライマリ・ケアチームが、持続可能なプライマリ・ヘルス・ケアに向けてどのように取り組むべきかを語っていただきます。
浜松は新幹線でのアクセスがよく、会場のアクトシティ浜松は駅から徒歩5分です。徳川家康ゆかりの「出世の街」として知られ、260年に及ぶ太平の世を築いた家康の精神は、何事にも果敢に挑戦する「やらまいか精神」として受け継がれています。
静岡県各地で活躍するメンバーの力を結集し、静岡ならではのおもてなしを提供する予定です。学術交流のみならず、ピアノやジャズ演奏など「音楽のまち・浜松」ならではの体験をお楽しみいただければと思います。
本大会における活発な議論と交流により、新たな学びと発見、つながりがもたらされ、本学術領域のさらなる発展および地域住民の健康・ウェルビーイングの向上へ資することを心より願っております。
皆様のご参加をお待ちしております。