髄膜腫 meningioma

脳腫瘍では最も多い良性の腫瘍です

  • 頭痛やたまたま頭をぶつけた時などに,CTやMRIをとって偶然に見つかることが多いです
  • 全く症状がない無症候性髄膜種は最近たくさん発見されるようになってきました
  • 症状のない大部分の髄膜種は治療の必要はなくてほっておいていいものです
  • 半数以上はほっといても大きくならないし症状も出ません
  • 脳ドックで見つかって脳腫瘍だと言われてもびっくりしないで安易に手術を受けないことにしましょう
  • 下のMRIは66歳の女性に脳ドックで偶然見つかった髄膜腫です.左の写真は1995年,右は2005年です。10年間で全く大きくなっていません

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おおまかなこと

  • 髄膜腫は脳を包んでいる髄膜という膜から発生する良性腫瘍で脳の表面にできます
  • 中年以降の女性に多いです
  • 他の場所へは転移しないし,良性の経過をとります
  • 治療は開頭手術摘出で,取れれば治ります
  • 悪性の経過をたどるの髄膜腫はとても少なくて2%ほどです
  • 悪性かどうかは画像を見るか,ちょっと経過を見ればだいたい判断できます
  • グレード2は非定型髄膜腫 atypical meningioma といいます
  • 非定型髄膜腫は再発しやすいもので頻度も高い (4%) ので要注意
  • グレード3退形成性髄膜腫は肉腫(ガン)ですが,ものすごく稀 (1%) です
  • 再発を予測するために,手術後の病理診断がでたらミブワン(後述)の値を聞きましょう
  • 頭蓋内のさまざまな部位にできて,発生する場所によって治療の難しさが違います

症状は

  • 症状がなくて発見されるものが多いです
  • 脳の外側の膜(髄膜)に発生して脳や神経を圧迫します
  • かなり大きくならないと症状がでないものが多いです
  • 大きくなると脳を圧迫して、頭痛,運動麻痺,歩く時にふらつく,けいれん発作(てんかん)などをおこします
  • 小さくても脳神経を圧迫すると,目が見づらい(視力視野障害),ものが二重にみえる(複視),顔がしびれて痛い(三叉神経障害),片耳が聞こえない(聴力障害)などの症状がでます
  • とても大きいものでも軽い症状(頭痛,物忘れが多い)で経過するものもあります
  • 髄膜腫のできる場所と症状には関連があります
  • 傍矢状洞部髄膜腫は,下肢からはじまるけいれんや痙性麻痺を生じます
  • 鞍結節部髄膜腫は,視力視野障害で発症します
  • 斜台錐体骨や海綿静脈洞部髄膜腫は,物が2重に見えるようになります(眼球運動障害)
  • 錐体骨尖部髄膜腫は,顔面の痛みやしびれをだします(三叉神経障害)

検査は

  • 診断は,CTやMRIという簡単な検査でかなり正確にできます
  • MRI T1強調画像やT2強調像で,さまざまな信号を呈します(白っぽいことも灰色にみえることもあるということです)
  • T2強調画像では,腫瘍周囲に強い脳浮腫(脳が腫れる)があることも多いです
  • ガドリニウム造影剤で,髄膜腫が明瞭に描出されます(コントラストがついて白く見えます)
  • CTでみえる限局性の骨肥厚(骨が厚くなる)は髄膜腫に特徴的な所見です
  • 診断のために,脳血管造影(DSA,カテーテル検査)は必要ありません
  • 手術を前提にしても,ほとんどの例でカテーテルを動脈に入れる血管撮影は必要ありません
  • もし開頭手術で髄膜腫を摘出する前に,血液の流れを見て塞栓術をしないと手術にリスクがあるということを言われても安易に受けない方がいいでしょう
  • カテーテルを用いる血管撮影は,脳梗塞などのリスクもありお金(医療費)もかかります

どうしたらいいのか,治療は

  • 経過を見ていると,ゆっくりと大きくなることもあるけど,大きくならないことも多いです(このはっきりした確率は不明です)
  • 特にお年寄りの髄膜種のなかには全く大きくならないことが多いので様子をみます
  • 少し大きくなってもまた増大が止まることがあります (growth arrest)
  • でも,若い人ではたとえ小さくても慎重に判断してから,経過を観察した方がよいでしょう
  • 10代で見つかった髄膜腫は摘出した方がいいです,それ以降の年代は判断が難しい
  • CTで腫瘍の石灰化がある,T2強調画像で低信号(黒っぽい)ものは大きくならない傾向があります
  • 周辺の脳が腫れている(脳浮腫)ときは,症状がなくても手術で摘出した方がいいこともあります
  • 症状が悪化しそうな腫瘍は開頭手術でとる必要がありますが,完全にとってしまえば治る病気で再発の心配はいりません
  • それぞれの脳神経外科医によってかなり考え方が違います
  • 手術が必要と言われてもそのまま受け取らないで,なぜ必要かをしっかり説明していただくことが大切です
  • 不安ならば,手術を受けるかどうかはセカンドオピニオンを聞いてから決めましょう
  • 髄膜腫は脳の中にできる腫瘍と違って脳を切らなくてもとることができますので,慎重な手術さえすれば後遺症が残ることは少ないです
  • 脳外科研修医の先生でも手術できる簡単なものから,ベテランがしても命が懸かるようなものまであります
  • 頭蓋底にできたときや,周りの神経や血管との癒着が強い場合は、完全に摘りきれない場合がありますし,その場合は数年~10年後に再手術となることもあります
  • 薬(制がん剤)は効きませんが,放射線治療は有効といえます
  • 髄膜腫に詳しい医師に早めに相談しましょう

経過を見たらどうなるか

Z. Herscovici, et al.: Natural history of conservatively treated meningiomas. Neurology 63: 1133-1134, 2004
252人の髄膜腫の患者さんを5年程度観察すると,3分の1くらいの患者さんで腫瘍が増大して,3分の2の患者さんでは腫瘍サイズが変わらないとのことです。大きくなっても3mmかそれ以下の増殖速度で,ほとんどが無症候性でした。その後も大規模な報告がありますが大きな違いはありません。まずしばらく経過を見てから治療するかどうかの判断が勧められます。しかし,髄膜腫のできる場所によっては経過観察をしない方がいいものもあります。たとえば視神経近傍の髄膜腫などです。高度な専門的な判断が必要です。

放射線治療は有効です

  • 小さなものに対しては有効だと考えたほうがいいでしょう
  • 摘出できない場所にできたものには定位放射線治療リニアック、ガンマナイフ,サイバーナイフ,ノバリス)を用います
  • 60%くらいしかコントロールできないという意見も,90%効くという報告もあります
  • でもそれは髄膜腫の大きさに比例することが多いです,1 cmくらいの小さなのものなら確実性は高いでしょう,5 cmも広がってしまうとコントロールは難しい
  • グレード2非定型髄膜腫には有効性はあるのですが,グレード3の悪性髄膜腫を制御することはほとんどできません
  • 髄膜腫の場所によって応用するかどうかが決まります
  • 海綿静脈洞髄膜腫は最初から手術しないで定位放射線治療が選択されます
  • 視神経症髄膜腫は視力の良いうちに,手術はしないで定位放射線治療 50.4Gy/28frを行えば視力が守れるということもあります
(゜Д゜) ! 髄膜腫専門外来??

最近患者さんから,ネット検索で髄膜腫専門家がいる髄膜腫外来がある,という話を聞きます。髄膜腫の専門家というのは存在しないので気をつけてください。髄膜腫は頻度の高い脳腫瘍で手術が必要なことが多いので,手術患者さんを集めるための宣伝の道具として,専門外来が名乗られて利用されているきらいがあります。髄膜腫外来と書いてあるところには逆に行かない方がいいかもしれません。手術治療をまず勧める脳外科医の先生は?です。

典型的な髄膜腫

この髄膜腫は中程度の大きさのものです。麻痺や失語症やてんかんなどの症状はありません。とても美しくて若い女性の髄膜腫でしたが,子供に遺伝はしませんし,癌などと違ってタバコなどこれといった原因がなくて発生するものです。

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MRIでの髄膜腫の見え方は撮影の仕方によっていろいろです。左からT1強調画像,T2強調画像,フレア画像といいます。腫瘍の横に小さく白い領域がありますが,これは脳の腫れた部分で脳浮腫といいます。髄膜腫があると周囲に脳浮腫が生じることがあります。

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最も髄膜腫が見やすくて検査で見逃しがないのが,ガドリニウム造影剤を注射して撮影するものです。一般的に髄膜腫は造影剤で白く映し出されます。この腫瘍は左脳側にあります。MRIの軸面という輪切りの写真では左右が逆になりますから注意してください。脳を下から見た図になっています。MRIはいろいろな方向から腫瘍を見ることができますが,右は冠状断という正面から見た図です。よく見ると腫瘍の上と下のはじっこに線状に糸を引いたように造影される部分があります。これをテールサイン(しっぽのサイン)といいます。腫瘍が硬膜に沿って延びている可能性があることを示しています。

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手術後のMRIです。腫瘍は全部取れていて後遺症もありません。圧迫されて変形していた脳はきれいに元に戻っていますし脳浮腫も消えました。一般的に若い人の脳ほどきれいに元に戻ります。注意しなければならないのは,少しでも取り残した場合には,何年か後に10%-20%くらいで再発があることです。もちろん完全に取れた時の再発はほとんどありません。

手術後の再発は?

手術でとり切れたと思っても再発することがありますし,手術で残った腫瘍が何年も全く大きくなって来ないこともあります。手術で完全摘出したといわれても,10年くらい見ると10%弱で再発する可能性があると思った方がいいかもしれません。

MIB-1(ミブ)

再発を予想するのには,病理の所見を見ます。 上の写真がMIB-1(ミブワン)というのを染色したものです。細胞の核が青く染まっているのは細胞が増えない。濃い茶色に染まっているのは細胞が増えようとしていることを示しています。ですから,このミブが多く染まっていると再発し易い髄膜腫といえます。この写真の腫瘍は5%くらい染まっているので,再発するあるいは残っている髄膜腫が大きくなる確率が高い(グレード2)と判断します。

悪性の髄膜腫の頻度は? 2015年米国の統計

グレード1 94.6%   とれれば治る
グレード2   4.2%   再発率が高い
グレード3   1.2%     本当の悪性

脳浮腫(脳のはれ)

  • 髄膜腫が発見されると「まわりの脳が腫れている」と説明されることがあります
  • これを腫瘍周辺脳浮腫 peritumoral brain edema といいます
  • 髄膜腫の20-30%くらいでみられます
  • 脳浮腫が強いと,はれている部分の脳の機能が落ちます
  • 認知症,感覚障害,運動麻痺,失語症,てんかん発作などの症状が出やすくなります
  • 髄膜腫が全部とれると,この脳の腫れも消えます
  • 腫瘍血管が増える時にVEGFが産生されるために,脳の細血管の透過性が亢進して,血液の中の血漿成分が脳組織の中に漏れ出ることが原因です

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メニンジオーマ・ギャラリー

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8年間の観察で大きくならなかった髄膜種(左1996年,右2004年)

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手術後の合併症としての感染

  • 髄膜腫は,脳の膜である硬膜や頭蓋骨に腫瘍が浸潤(細胞がしみ込む)することがあります
  • ですから,腫瘍と一緒に,硬膜や頭蓋骨を取り除くことがあります
  • そうすると,欠損した硬膜や頭蓋骨を補填(他のものに置き換える)しなければなりません
  • 硬膜の場合は,人工硬膜(ゴアッテックス,シームデュラ)などを用いたり,大腿筋膜,頭蓋骨膜を使ったりします。
  • 人工硬膜は異物ですから,細菌感染の原因になることがあります
  • このこの感染は術後数週間で生じることもありますが,術後数年でおこることもあります
  • とくにゴアテックスの感染はたくさんみました
  • ゴアテックスに感染が生じた場合にはそれを除去しないと何度も感染を繰り返します
  • 頭皮や骨弁の感染と間違えてゴアッテックスを取り除かないで感染を繰り返すこともしばしばです
  • 髄膜炎がなくて人工硬膜が感染した場合には単にそれと骨弁を取り除くだけでいいのですが,硬膜がないことを心配してまた新たな人工硬膜をおいてくるとそれにまた感染します
  • シームデュラも異物です。
  • 私自身は大腿筋膜を使ったことはありませんが大腿部の傷跡がつらいことになります。
  • 常に,開頭部やその周辺から採取できる頭蓋骨膜(異物ではない自家組織)で硬膜の欠損部を覆っています,相当に大きな硬膜欠損もこれで対応できます。
  • 頭蓋骨の補填には,かつてはリジンがもっともよく用いられましたが感染が多いものでした
  • とくに鼻腔,耳腔の近くに人工骨をおくと感染を誘発します
  • セラミックの人工頭蓋骨の感染も何度か除去したことがありますから,セラミックなども同じかもしれません
  • 小さな骨欠損ではバイオペックスという材料が用いられます
  • チタンメッシュの感染率は低いような印象をもっていますが証明はできません
  • チタンメッシュは数年で皮膚に取り込まれて毛根を侵し,皮膚が菲薄化するという遅発性合併症のリスクがあります
  • 開頭骨弁を手術中に熱処理して髄膜腫の細胞を死滅させて戻すという方法もあります
とにかく異物を残してこないということが術後感染症を減少させるコツです

自己輸血

  • 自己輸血には,術直前採血・血液希釈法(希釈法)、出血回収法(回収法)、貯血式自己血輸血法(貯血法)の3つの方法があります
  • 髄膜腫の手術では,貯血法希釈法が利用されます
  • 貯血法というのは,手術数週間前から2ヶ月前くらいに1回か2回採血して、全血を冷凍保損じておいて手術出血時に使う方法です
  • 希釈法とは,手術室で全身麻酔が開始されたすぐ後に、400 ml -1,000 ml の自己血を採血して同量の輸液して体内の血液を薄める方法で,手術中に必用に応じてこの血液をもどし輸血します
実際に髄膜腫の手術で自己輸血が必用となることはほとんどありません,それが必用なのは出血の多い手術をしてしまうからです(外科医の技術が足りない)
もし行うとしても希釈法で麻酔導入時の採血で十分です,
手術入院の前に自己血採血をする必用はありません

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頭の中に無数の髄膜腫ができる病気
髄膜腫症 meningiomatosis は別のページですからここをクリック


これから下は専門的記述です

病因・病理

  • 髄膜腫は髄膜 meningesより発生した腫瘍という意味で用いられていますが,組織学的には,くも膜細胞,線維芽細胞あるいは髄膜血管組織より発生するものが含まれるので,WHO分類の亜型に見られるような様々な組織像があります
  • 一部の髄膜腫は,第22染色体上の腫瘍抑制遺伝子の欠損あるいは変異によって発生すると推定されています
  • 発生頻度は原発性脳腫瘍の20%ほどで,神経膠腫と共に頻度の高い腫瘍といえます
  • 好発年齢は40歳代,50歳代で女性に多いです
  • 近年増加の傾向にあるのは,MRIの普及と伴に無症候性髄膜腫の発見頻度が飛躍的に増加したためです
  • 発生部位としては傍矢状洞部,円蓋部,大脳鎌,蝶形骨縁,鞍結節部,嗅窩,テント,小脳橋角部,中頭蓋窩などがあり,たとえば前頭円蓋部髄膜腫のごとく,それぞれの部位に髄膜腫という語をつけて診断名として用います
  • 傍矢状洞部,円蓋部,大脳鎌を合わせると髄膜腫の半分以上を占めます
  • 病理診断で最も特徴的な組織学的構造物は渦巻形成 whole formationで,石灰沈着である砂粒体 psammoma bodyの存在も診断の手がかりとなります
  • 1つの腫瘍の中に先にあげたタイプが混在して認められることも多いです
  • ほとんどの例が良性で孤発性ですが,髄膜腫の2%程度に悪性髄膜腫 malignant meningiomaとされるものが存在します
  • 神経線維腫症2型(NF-2)は多発性髄膜腫(髄膜腫症 meningiomatosis)を生じることがあります

WHO分類 (2007年)

  • Grade Imeningothlial, fibrous (fibroblastic), transitional (mixed), psammomatous,  angiomatous, microcystic, secretory, lymphoplasmacyte-rich, and metaplastic meningiomas
  • Grade II : atypical meningioma (mitotic index > 4 in1 high-power fields), clear cell meningioma, chordoid meningioma
  • Grade III : anaplastic (malignant) meningioma (mitotic index > 20), rhabdoid meningioma, papillary meningioma

改正された注意点:古くからて脳への浸潤がある髄膜腫は再発率が高いことが知られていました (Perry 1999)。新しい定義では,Brain invasion by a meningioma is now an independent criterion for WHO grade II. 組織型に関わらず,脳への浸潤がある髄膜腫はgrade II です。この分類では再発率は高いものの,患者の死亡割合と関連するものではないことに注意する必要があります。高い増殖能を有する髄膜腫は mitotic index (MIB-1で代用) によってgradingを決めます。

逆に,grade IIIの髄膜腫は肉腫と考えられ死亡割合(腫瘍死)は高いです。grade III 髄膜腫は脳への浸潤や脳血管への癒着浸潤,頭蓋骨,筋軟部組織,頭皮に深く浸潤して再燃を繰り返します。また隣接する硬膜などの原発巣近傍再燃のみならず広範に頭蓋内組織へ転移したり,肺などへの他臓器転移もあります。この病理診断を得た場合には,ガン(肉腫)であることを患者に説明して,可能であれば再手術にて根治的郭清手術を行なうことを検討しなければなりません。少なくともgrade IIとIII(退形成性髄膜腫,ラブドイド髄膜腫,乳頭状髄膜腫)の髄膜腫の組織型は記憶に留めておいた方がよいでしょう。

文献情報

髄膜腫の悪性度を客観的に決める方法

Duregon E, et al.: Better see to better agree: phosphohistone H3 increases interobserver agreement in mitotic count for meningioma grading and imposes new specific thresholds. Neuro Oncol 17: 663-963, 2015
髄膜腫の悪性度は核分裂の数 mitotic index で決められます。でもHE染色で分裂像がいくつあるかは病理医の悩みの種で数え方で大きく違いがでました。またMIB-1染色は正確には分裂像を見ているものではありません。Phosphohistone H3 (PHH3) serine-10は核分裂を数えるための特異抗体です。これを用いるとグレード1、2、3の髄膜腫が正確に分類できると期待されています。

髄膜腫の化学療法

Preusser M, Marosi C: Antiangiogenic treatment of meningiomas. Curr Treat Options Neurol 17:359, 2015
総論です。hydroxyurea, temozolomideirinotecan, interferon-alpha, mifepristone, octreotide analogues, megestrol acetate, bevacizumab, sunitinib, vatalinib, imatinib, erlotinib, gefitinibという様々な抗がん剤が試されましたが有効性は確かめられませんでした。 腫瘍血管新生を抑制する力のある抗体,bevacizumab, sunitinib, vatalinibはある程度腫瘍の増殖抑制効果があるので確かめられるべきです。ヨーロッパのEORTCでtetra-hydroisoquinoline alkaloid trabectedinが試験段階です。AKT inhibitorsも分子診断で選択された例での試験があるようです。2015年時点でまだこれを使用すれば悪性髄膜腫が治るという薬剤は知られていないようです。

sunitinib化学療法

Kaley TJ, et al.: Phase II trial of sunitinib for recurrent and progressive atypical and anaplastic meningioma. Neuro Oncol 17:116-121, 2015
放射線治療も効かなかった30人のグレード2髄膜腫と6人のグレード3髄膜腫の患者さんがスニチニブで治療されました。42日周期で一日あたり50mgを28日間連続投与する方法です。6ヶ月無増悪生存割合は42%,無増悪生存期間中央値は5.2ヶ月,全生存期間中央値は24ヶ月でした。スニチニブは,a small-molecule tyrosine kinase inhibitor that targets vascular endothelial growth factor receptor and platelet-derived growth factor receptorですから,これらの腫瘍を治す力はありません。

発生の原因は

Andersen L, et al.: Hormone replacement therapy increases the risk of cranial meningioma. Eur J Cancer 2013 Jun 2
髄膜腫は成人女性に多い腫瘍ですから,以前から女性ホルモンと髄膜腫の発生の関連が疑われてきました。デンマークで,髄膜腫になった55歳から84歳の女性に対する,発症前の女性ホルモンの投与の有無が調査されました。924人が髄膜腫を有していました。女性ホルモンの投与を受けていると,髄膜腫の発生率は1.3倍に増加していました,10年以上投与されていると1.7倍になったそうです。エストロゲンとプロゲステロンの組み合わせの投与でより多い傾向がありました。でもだからといって,全ての更年期の女性へのホルモン補充が止められるわけではありません。まあそういうことかなというくらいです。

髄膜腫の治療学は学問か

Aghi M, Barker IF: Benign adult brain tumors: an evidence-based medicine review. Prog Neurol Surg 19: 80-96, 2006
ほとんど全ての成人良性脳腫瘍の研究は,質が低くて (レベル 3 かもっと低い),推奨度としてはグレード C だそうです。Randomized clinical trials are unlikely to occurと述べています。これは2006年のたいしたことない論文ですが,そのとおりで,今後も,経験学と多少の数を集めた研究成績を読み取って指標としていくしかありません。学会でのすばらしい成績発表もよくよく考えて受け取らなければなりません。

ガンマナイフか分割照射治療か

Matellus P, et al.: Evaluation of fractionated radiotherapy and gamma knife radiosurgery in cavernous sinus meningiomas: treatment strategy. Neurosurgery 57: 873-886, 2005
フランスのマルセイユの同一施設で分割照射とガンマナイフ治療の結果が検討された報告である。初発あるいは術後残存した海綿静脈洞髄膜腫の38例を分割照射で,36例を放射線外科(ガンマナイフ)で治療した。 追跡期間は前者で89ヶ月,後者で64ヶ月であった。広範な伸展範囲を有するものあるいはSekhar分類でのgrade III and IVは分割照射の群に多く,平均腫瘍体積は分割照射群で13.5 ml,ガンマナイフ群で5.2 ml であった。actuarial progression-free suvival (PFS)は,分割照射群で94.7%,ガンマナイフ群で94.4%であった。症状の改善率はほぼ同等であり,腫瘍縮小率は分割照射群で29%に対してガンマナイフ群で53%であった。有害事象は分割照射群の方が高率となっているがこれは照射容積の違いによるものが大きい。著者らは結論として,ガンマナイフ治療はより簡便であり腫瘍縮小率も高いので優先的に検討されるべきであり,分割照射はガンマナイフ治療が適さない症例で行なうべきであるとしている。

定位分割照射治療の有効性

Milker-Zabel S, et al.: Fractionated stereotactic radiotherapy in patients with benign or atypical intracranial meningioma: long-term experience and prognostic factors. Int J Radiat Oncol Biol Phys 61: 809-816,, 2005
1985-2001年に年齢中央値55.7歳,317人の髄膜腫患者を定位分割照射で治療した。target volume中央値は33.5mlであり,total dose中央値は57.6Gy (1.8Gy/day, 5 times/week)であった。5.7年の追跡機感中央値での腫瘍局所制御割合は93.1% (295/317)であった。22人(6.9%)で腫瘍増大が生じたがgrade IIの症例に多かったいうことである。また,60ml以上の体積の髄膜腫の再燃割合は15.5%であった。 有害事象としての神経症状の悪化は8.2%にみられ,視力の低下,三叉神経障害,耳鳴などであった。

悪性髄膜腫への定位放射線治療

Mattozo CA, et al.: Stereotactic radiation treatment for recurrent nonbenign meningiomas. J Neurusurg 106: 846-854, 2007
臨床的にも病理学的にも良性とはいえない髄膜腫に対する定位放射線治療の成績です。SRS(1回照射)とSRT(分割照射)が使われました。25人の患者さんで52個の髄膜腫が治療されました。治療中に8例(32%)でさらに悪性化が生じています。治療によって3年間増悪がなかったのはグレード1で100%とグレード2の11例で83%,グレード3の1例では無効でした。SRSのほうがSRTより無増悪生存期間が長かった傾向がありました。

ハイドレア化学療法

Neuton HB: Hydroxyurea chemotherapy in the treatment of meningiomas. Neurosurg Focus 23: 2007
単なる総論なのですが,2007年の段階でハイドロキシウレア(ハイドレア)の効果を論評したものです。この論評でも悪性の髄膜腫にはハイドレアが最も期待できる化学療法剤であろうと書かれています。ということは,他には有効そうな薬剤がないともとれます。ハイドレアによる化学療法は1900年代の半ばに注目されましたが,それ以来これといった進歩はありません。中には効く例もあるかもしれないというところが,ハイドレアの悪性髄膜腫に対する効果といえましょう。多数例での証明はありません。

文献
  • Andersen L, et al.: Hormone replacement therapy increases the risk of cranial meningioma. Eur J Cancer 2013 Jun 2
  • Duregon E, et al.: Better see to better agree: phosphohistone H3 increases interobserver agreement in mitotic count for meningioma grading and imposes new specific thresholds. Neuro Oncol 17: 663-963, 2015
  • Kaley TJ, et al.: Phase II trial of sunitinib for recurrent and progressive atypical and anaplastic meningioma. Neuro Oncol 17:116-121, 2015
  • Kshettry VR, et al.: Descriptive epidemiology of World Health Organization grades II and III intracranial meningiomas in the United States. Neuro Oncol 17:1166-1173, 2015
  • Matellus P, et al.: Evaluation of fractionated radiotherapy and gamma knife radiosurgery in cavernous sinus meningiomas: treatment strategy. Neurosurgery 57: 873-886, 2005
  • Mattozo CA, et al.: Stereotactic radiation treatment for recurrent nonbenign meningiomas. J Neurusurg 106: 846-854, 2007
  • Milker-Zabel S, et al.: Fractionated stereotactic radiotherapy in patients with benign or atypical intracranial meningioma: long-term experience and prognostic factors. Int J Radiat Oncol Biol Phys 61: 809-816,, 2005
  • Preusser M, Marosi C: Antiangiogenic treatment of meningiomas. Curr Treat Options Neurol 17:359, 2015
  • Neuton HB: Hydroxyurea chemotherapy in the treatment of meningiomas. Neurosurg Focus 23: 2007
  • Perry A, et al.: Malignancy in meningiomas: a clinicopathologic study of 116 patients, with grading implications. Cancer 85: 2046-2056, 1999

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